保険のいらない社会へ。子供への犯罪を未然に防ぐ保険会社の新たな挑戦とは?

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GPSやIoTなどの技術を活用した子供を見守るサービスが増えています。

子供の安全確保は親にとってもっとも大事なことの1つ。少子高齢化が進む中では、社会全体で子供を守っていく取り組みが求められています。

そんな中、損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、損保ジャパン)がナビタイムジャパンと共同でビーコンを使った見守りサービスに取り組んでいます。

その内容とサービス考案の背景について、SOMPO Digital Lab齋木大介主任に話を聞きました。

見守りの仕組み

見守られる側である子供たちはビーコンと呼ばれる端末を携帯します。サイズとフォルムデザインは未定ですが、大きさの目安としてはだいたい大人の親指くらい。

子供の見守りサービス ビーコン画像
写真:「子供の見守りサービス」ビーコンサンプル(左)

ビーコンは、半径100メートルくらいの範囲で微弱な電波を発信します。この電波を拾うことにより、子供がいる場所を把握することができます。

ただし、スマートフォンの電波などと比べるとビーコンの電波が届く範囲は狭いため、位置情報を管理するサーバーまでは届かない。そこでポイントになるのが、電波を拾い、サーバーに送る役目を果たす協力者です。

協力者のスマホがビーコンの電波を拾えれば、データ通信を通じてサーバーに情報を送ることができます。その情報が保護者のスマホアプリに送られ、子供の位置情報を把握できる仕組みです。
 

子供を犯罪の被害者にしたくない

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写真:SOMPO Digital Labの齋木大介主任
 
─子供の見守りサービスはどのように生まれたのですか。
 
齋木大介主任(以下 齋木氏) 見守りサービスの構想が立ち上がったのは2017年4月です。

当社の企業活動の根底には、お客様に向けて「安心・安全・健康」を提供するというSOMPOホールディングスの経営理念があります。

その中で、子供たちを誘拐やわいせつな犯罪などから守ることが重要であると考え、子供の見守りにつながる保険やサービスの研究を行ってきました。
 

保護者の協力が必要不可欠

─すでにビーコンとアプリを使った実証実験に取り掛かっていると聞いています。どのような実験なのですか。

齋木氏 実験は、東京三鷹市の学習塾に通う親子を対象に行いました。子供にはビーコンを持ってもらい、保護者にはアプリをインストールしてもらいます。

位置情報を把握するためにはビーコンの電波を拾う協力者が不可欠です。そのためのアプリをナビタイムに提供してもらい、アプリを入れた協力者のスマホから発信される情報を集めて、見守りサービスとしての質や効果を検証します。
 

ビーコンを使うメリット

─見守りサービスの仕組みでは、携帯電話のGPS機能や、交通系ICカードなどがあります。その中でビーコンを使う仕組みにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
 
齋木氏 位置情報の正確さは携帯電話のGPSの方が優れていますが、毎日充電する必要があり、学校によっては持っていけないこともあります。ビーコンは電波を発信する際の消費電力が小さいので、充電不要で長期間利用することが可能となります。

交通系ICカードに関しては、電車で学校や塾などに通う場合に良いサービスですが、改札を通ったかどうかの情報のみです。ビーコンは、電車を使わない場所にいる時の位置情報も把握できるという点が大きな違いです。
 
─ビーコンは小さく、子供が身につけやすいのが嬉しいですね。
 
齋木氏 主な対象として考えているのは小学生です。ランドセルにぶら下げたり、ポケットに入るくらいのサイズにすれば放課後でも簡単に持ち歩けます。

学校に持参する許可を得られるかどうかにもよりますが、ただ持ちやすいだけでなく、ピンバッチなど子供が持ちたくなるような端末にしたいとも思っています。
 

子供の見守りサービス4つの機能

損保ジャパン6
 
─位置情報を把握する以外にも機能が増える可能性があると聞きました。どんな機能なのですか。
 
齋木氏 実用化に向けて検討している機能は主に4つあります。
 

1.チェックイン機能

齋木氏 塾や学童保育など行くところが決まっている場合、そこに専用の受信機を固定で置いておきます。無事に到着したときに電波を拾い、到着したという通知を保護者のスマホに送ります。
 

2.迷子防止機能

齋木氏 保護者のスマホのアプリとビーコンをリンクさせて、保護者から一定の距離以上離れた時にアラートを出します。

低学年のうちは学校外で保護者と一緒に行動することが多いものの、外出先では、目を離したすきに手元をはなれ迷子になってしまう可能性があります。

ビーコンの電波が届くのは100メートル程になりますので、離れすぎて電波が拾えなくなった時に、「子供が遠くに行っているかもしれません」というアラートを出すわけです。
 
─この2つだけでも子供の居場所がだいたい把握できますね。
 
齋木氏 そうですね。保護者側の目線で見ると、「ちゃんと塾についた」「いつもの公園で遊んでいる」といった情報によって安心感が得られるでしょうし、その安心感を少しでも高めたいというのが我々の思いです。
 

3.行動に異常が発生したらアラートが出せる

齋木氏 子供が持つビーコンが異常に早いスピードで移動しているときにアラートを出すことができます。実験では、車で公道を走るくらいのスピードであればビーコンの電波を拾えることが確認できています。

例えば、時速60キロで移動しているわかったときに、車に乗せられている可能性があると通知します。保護者が知らないところで子供が誰かの車に乗ることは少ないはずですから、この機能を使うことで誘拐リスクなどを抑えることができます。
 

4.有事の際の捜索を支援する

齋木氏 迷子や失踪によって居場所がわからなくなった時に子供がビーコンを持っていれば、アプリを持つ協力者が捜索することによって発見が容易になる可能性があります。
 
─協力者のスマホがビーコンの電波を拾うため、子供が声を出せない状態だったとしても位置情報が掴みやすくなるわけですね。
 
齋木氏 そうです。協力者が増えるほど発見できる可能性が高くなりますし、捜索にかかる時間も短縮できると思います。山の中などで捜索する場合にも使えますし、街中でも使えます。

例えば、自分の子供がいなくなって心配な時に、地区や学区のママ友ネットワークなどで協力者グループを作れば、それぞれが街中を探し回りながら、ビーコン電波を拾って位置を特定することができます。
 

保護者と協力者の反応は?

─保護者の反応はとても良いでしょうね。
 
齋木氏 かなり良いですね。複数の保護者と当社の職員などにサービスの利用意向を聞いたところ、ぜひ使いたい、すぐに使いたいという声を多く頂いています。
 
─協力者となる人たちの反応はいかがですか。
 
齋木氏 アプリは自動でビーコン電波を拾いますので、どの子供の電波を拾っているかはわかりませんし、何か特別なことをする必要もありません。

実験の前段階でのアンケートでは、約7割の人が協力すると答えてくれています。

ただ、実質的な負担としてサーバーにデータを送る通信と電池の消費があります。通信量に関しては定額プランを利用している人が多いため懸念はしていませんが、電池は減りが進みやすくなるため、これからの検討課題といえます。
 

サービス展開の今後

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─サービスはどのように提供する予定ですか?
 
齋木氏 位置情報の把握は事故の予防につながり、保険と親和性がありますので、保険とセットでの提供を検討中です。

例えば、目を離したすきに子供がいなくなり、店の商品などを壊すといった事故は損害保険の分野ですので、そういった保険商品との連動も考えられると思います。

ただ、現段階では具体的なサービスの提供方法が決まっていません。保険とセットではなく、見守りサービスとして単独で提供することも可能性としてあります。
 
─都市部は人が多く、スマホユーザーも多いのですが、人が少ない地方などのエリアで展開する上ではどのような施策を考えていますか?
 
齋木氏 地方には食材などのデリバリー事業者が多く、そういった業者との連携によって位置情報を把握することができます。一般ユーザーだけではなくBtoB連携の観点で協力者を増やしたいと思っています。
 

保険がいらないくらい安心な社会を作りたい

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─最後に、このサービスの実用化を心待ちにしている保護者の方々にメッセージをお願いします。
 
齋木氏 SOMPOホールディングスとしては、保険と同じくらい予防にも力を入れています。加入者の目線で見ても、病気をして保険金を受け取るより、病気をしない方が良いはずです。

保険がいらないくらい安心できる社会を実現していくために、保険を通じた安心を提供する一方、予防による安心も提供していきたいですね。

この取り組みも、そういう視点から生まれたものの1つです。

完成度が高いサービスを、できるだけ早く実用化できるように取り組んでいきますので、ぜひ期待してほしいと思います。

【ニュースリリース】損害保険ジャパン日本興亜株式会社「子どもの見守りサービス」に関する実証実験の実施

インタビュー・ライティング 伊達直太

雑誌、書籍の編集を経て、2001年よりフリーランスとして独立。
編集、執筆を行う。また、FP技能士として保険、証券等の広告物制作や、経営者インタビュー、社内ツールの制作を行う。

 

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