美術品に保険をかけられるって本当?もしもの時に備えるプロの査定保険【アイ・アート・アセット株式会社】

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美術品は資産であり、見る人、愛でる人の心を豊かにするものでもあります。
ただ、保有者には常に「盗まれたらどうしよう」「傷ついたらどうしよう」などの不安が付きまといます。

高価なもの、大切なものであるほど、そういった不安は大きくなってしまいます。

そこで重要になるのが美術品を対象とする損害保険です。今回は、美術品の保険を専門的に扱うアイ・アート・アセット株式会社にインタビュー。

査定や保険料算出の仕組みや、美術品の保険を扱うようになった背景について話を伺いました。

アイ・アート・アセット株式会社の事業内容

アイ・アート・アセット株式会社の事業は大きく3つに分けられます。
 

1.美術品を担保とする融資事業

「美術品は資産である」という基本的な考え方に基づき、美術品の査定評価を行い、所有者である法人や個人に担保価値に基づく融資を行います。
 

2.美術品の買取と委託販売事業

主に売却を考えている保有者を対象とするサービスで、作品の買取のほか、オークションへの出品代行等の販売委託を行っています。また、金融機関と提携した美術品に関するコンサルタント業務も行います。
 

3.美術品の保険代理店事業

今回のテーマになります。

どんな時に保険をかけるのかというと、例えば、法人や個人が持つ美術品は展覧会などに貸し出されることがあります。当然、展示中は美術館やギャラリーがセキュリティを担いますが、傷がついたり紛失する可能性はゼロではありません。

展示場所への移動中に傷がつくこともありますし、その結果として修復費用が発生したり、損傷によって美術品の価値が下がることも考えられます。

そういったリスクの対策となるのが美術品の損害保険です。適正な査定に基づく保険をかけることが、借り手と貸し手の両方が安心して美術品を貸し借りできるようになるわけです。
 

思い入れのある美術品を安心して保有できる

貸し出さずに自宅などで保管する場合も、火災、盗難のリスクがありますし、家族などが不注意で傷つけてしまうこともあります。そのようなリスク対策とも保険は重要で、価値ある作品や思い入れのある美術品を安心して保有することにつながります。

一般的に、美術品取引関連の事業はデパート・美術商・オークションなど売買の支援などが多いのですが、アイ・アート・アセット株式会社は、売却して現金化するだけでなく、売らずに資金調達したり、安心して貸し出し・保有するといった選択肢をワンストップで提供している点が特徴。

このような独自のサービスが生まれた背景について、担当責任者の鶯出克弘氏に話を聞きました。

より多くの人に美術品に触れてもらいたい

アイアートアセット1
アイ・アート・アセット株式会社 鶯出 克弘氏

—— アイ・アート・アセット株式会社は、鶏卵の「森のたまご」などで知られるイセ食品グループの関連企業なのですね。美術分野の事業を手掛けるようになった経緯を教えてください。

鶯出氏 当社の社長でもあるイセ食品グループの伊勢会長は美術品のコレクターとして世界でも著名でもあるのですが、日本における美術品の取引価格の不透明性や美術品を資産として評価し活用するということがまだまだ不十分であると考えました。

そこで今から約10年前に美術品の取引価格の公開性のあるオークションを手掛けるアイアートオークションを設立し、その5年後にアイ・アート・アセット株式会社を設立することとなったのです。

—— 社名にアセット(=資産)とつく通り、美術品の資産としての価値を踏まえた上で融資や保険といったサービスを提供するわけですね。

鶯出氏 はい。欧米と比べると、日本における美術品は一部の富裕層が趣味で集めるものというイメージが一般的でした。また、美術品の流通においてもデパートや画廊での販売が中心で、美術品流通の価格は不透明なものでありました。

しかしながら、近年国内オークション会社の台頭、ネットオークションの普及などで美術品の取引価格が明らかになりつつあり、美術ディーラーだけでなく一般個人コレクターも美術品を資産として考え売買するようになってきました。

それをさらにどう広めていくか考えたときに、売買だけでなく、美術品の融資や保険サービスを提供することも美術品の価値を明らかにする手段となります。

美術品価格の適正化をはかる

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—— 保有者である企業や個人も実際の価値を知らないことがあるかもしれませんね。

鶯出氏 あります。例えば法人の場合、先代の社長が美術品を集めてきた一方、二代目や三代目が美術品に全く興味を持っていないことがあります。興味がないので価値を調べないことが多いですし、美術品は明確な価格を調べるのは難しい。

そのため、先代からの相続時に買値がそのまま簿価になり、その価格に応じて税金がかかっているケースも多いのです。実際、今もバブル期に買った高い簿価で計算している法人がいくつもあるのだろうと思います。そのような状況を踏まえ、美術品の価格の適正化をはかることも我々の目的の1つです。

—— 美術品の価格は大きく動くものなのですか。

鶯出氏 経済状況の影響が大きいですね。値動きそのものは株ほどではないにしても、不況になれば下がりますし、好景気の時は上がります。また、生活様式の変化にも影響があります。

例えば最近の家やマンションには床の間が少なくなったため、掛軸を掛ける場所がなくなります。そうなるとおのずと掛軸の需要は減少し、価格も低くなっていきます。

美術品は、価値があっても必ず売れるかどうかわからないという難しさがあります。そのため、担保融資や保険の査定では、作品を買った時の値段ではなく、市場の流通価格で評価を行います。

過去のデータとプロの目で精度の高い査定を

—— 鑑定や査定はどのように行っているのですか

鶯出氏 鑑定は行っておりません。鑑定と査定の違いは、鑑定は作品の真贋を判定することです。著名な作家には、それぞれに鑑定機関や所定鑑定人が存在しています。

一方査定とは、現在の市場価値を踏まえた上での評価金額を算定することとなります。融資と買取は、その真贋を踏まえた上で、査定を行います。

一方、保険は、基本的には査定は行わず、対象となる美術品が本物であるという前提で、市場価値を踏まえた金額での保険金額設定をします。というのは、美術品の輸送や展覧会で保険をかける場合、短期間で保険引き受けを判断しなければならず、スピーディに対応する必要があるからです。

—— どのような方法で査定するのですか

鶯出氏 参考にするのが、過去の取引データです。特に蓄積された国内外のオークションデータで、いつ、どこでどの作家が、いくらでといった落札結果の情報が査定算出の根拠となります。

ただし、同じ作家の作品でも、油彩と水彩でも価値は異なりますし、さらにシミ・割れ・修復の有無によっても評価が変わります。版画作品でも摺った時代・摺状態・枚数によっても価格差がでます。

美術品は一点もので、同じものがありませんので、データを参考に、実際目で見て確認することが必要となります。そういった点を含めグループ会社であるアイアートオークションのスタッフがプロの目で査定します。

その他、当社の社長である伊勢会長が立ち上げた社団法人日本アート評価保存協会という組織もあります。こちらは評価委員に美術館の館長や大学の教授など学識者で構成され、さらに専門性の高い査定も必要に応じて連携して行っております。

美術品1つ1つに対して個別に保険料を算出する

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—— 美術品の保険で難しいのはどんな点ですか?

鶯出氏 生命保険などは人の寿命や死因などを分析して死亡率を計算し、それをもとにして保険料を算出します。その根底には「大数の法則」があり、データが多いほど計算の確度も高くなります。損害保険の自動車保険や火災保険も同様です。

ところが、生命保険・自動車保険・火災保険などに比べ美術品の保険は流通量や取扱例が非常に少ないため「大数の法則」が使いづらい。1つ1つの美術品に対して保険料を算出しなければならないため、その手間と時間がかかってしまうのです。

—— 美術品専門の保険は少ないため、保険を引き受ける保険会社とのやり取りも難しそうですね。

鶯出氏 保険会社としては、まず「大数の法則」が使いづらいため、リスクの大きさを把握しづらいという点が難しいと思います。また、美術品の査定は専門知識が必要で、保険会社はその分野の知識などを蓄積していないケースがほとんどです。

価値が把握しづらいものを引き受けるということそのものがリスクですから、引き受けづらいだろうと思います。自動車や火災の事故比べ、美術品が損傷などの保険事故は少ないのですが、事故が起きたときの保障が大きくなります。

そのため、この事業を始めた当初は美術品の価格の根拠を提出したり、展覧会に出す場合などは、展示場所や保管場所の設計図やセキュリティーシステムの状況なども細かくこちらで調べて提出する必要がありました。

引受件数が増えてきたのは、保険会社との信頼関係が築けたから

—— 事故リスクを測るための情報を細かく提示していたわけですね。

鶯出氏 そうです。細かく精査した上でないと保障できませんので、事業開始から1、2年は引受が少なかったですし、我々としても情報の収集と整理に大きな手間がかかっておりました。

当然、現在もその情報収集は続けておりますが、最近は保険会社と我々との間に信頼ができ、最低限の情報提供での引き受けが増えています。

美術品専門で代理店業務をしていること、グループ会社を含め査定のプロを擁していること、我々が引き受けをお願いした案件で保険事故が少ないことなどを評価してもらっているのだと思います。

—— 個人の所有者などからの問い合わせも多いのですか?

鶯出氏 増えました。特に広告など出していませんが、1日に数件はウェブサイトを見た人からの問合せがあります。保険に対する意識は人それぞれですが、それだけ潜在的なニーズはあるように思いますし、美術品の貸し出しや移動させる際は特に保険加入をしたほうが良いと私は思います。

特に陶磁器類は絵画と比べ、壊れやすく破損したときに価値が下がる格落損害の可能性が高くなりますので、大事な財産を万が一の損害に備えるという事は検討する必要はあると思います。

美術品を通じて心が豊かになる社会の実現へ

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—— 最後に今後の取り組みについて教えてください

鶯出氏 欧米と比べると、日本では美術品に保険をかけるという意識がまだまだ低く、個人の場合は保険をかけられることを知らない人も多かったといえます。しかし、最近は作品を貸し出す際などに保険加入を条件とするケースが増えました。

我々としては、人と人、会社と会社のつながりを通じて、保険会社との連携を強化し、美術品に保険をかけるのが当たりまえの世の中にしていきたいと思っております。

さらに、美術品の保険事業だけではなく、融資、売買、コンサルタント等それぞれの事業が相関した、独自性の高い取り組みを行ってまいります。

 

インタビュー・ライティング 伊達直太

雑誌、書籍の編集を経て、2001年よりフリーランスとして独立。
編集、執筆を行う。また、FP技能士として保険、証券等の広告物制作や、経営者インタビュー、社内ツールの制作を行う。

 

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