医療保険に加入するなら知っておきたい「生命保険料控除」の知識

2023年6月15日

民間の医療保険に加入している場合、所定の手続きを行うことで所得税や住民税の節税になることがあります。

この記事ではいわゆる「生命保険料控除」の制度について、税制上のメリットを受けるために必要な手続きを解説します。

医療保険の加入は節税効果がある

民間の生命保険に加入している場合、所得税や住民税の計算において『生命保険料控除』という優遇措置を受けることができます。

所得税の計算方法をごく簡単に説明しますと、

【所得税=課税所得金額×所得税率-税額控除額】

という算式によって税額を求めます。

課税所得金額は、「所得金額-所得控除」で計算します。

所得控除とは
納税者の個人的事情を加味するために差し引かれる金額。
所得控除の種類には、医療費控除、生命保険料控除、配偶者控除、基礎控除などがあります。

【参考】
所得控除のあらまし|国税庁

税額控除とは配当控除、分配時調整外国税相当額控除、認定NPO法人等寄附金特別控除などです。

【参考】
税額控除|国税庁

所得金額から所得控除を引いた額に対して税率が適用されるので、控除額が大きければその分、税金も安くなるというわけです。

なお、節税効果を考えるうえでは住民税も考え方は同様で、節税になります。

保険料控除対象となる保険

生命保険料控除の対象となるものは、以下の3種類に区分されます。この区分は平成24年1月1日以降に契約された「新契約」が対象です。

  • ・一般生命保険料控除
  • ・介護医療保険料控除
  • ・個人年金保険料控除

平成23年12月31日以前に契約されたものは「旧契約」と呼ばれ、以下の2つに区分されます。

  • ・一般生命保険料控除
  • ・個人年金保険料控除

新契約において一般生命保険料控除に該当する保険の種類は死亡保険です(終身保険や定期保険、養老保険など)。保険期間が5年に満たない契約や団体信用生命保険などは対象外となります。

介護医療保険料控除は、介護保険や医療保険、がん保険が該当します。

個人年金保険料控除については、個人年金保険のうち所定の条件を満たしているものが対象です。

保険料控除で引かれる金額(所得税)

生命保険料控除として所得から差し引かれる金額は、保険料として支払った金額の全額ではありません。

支払った金額のうち、所定の計算式で求めた金額のみが対象です。

計算式は以下の通りです。平成24年1月1日以降に契約したものと、平成23年12月31日までに契約したものでは異なります。

●新契約(平成24年1月1日以降に契約した保険契約)の控除額

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 

40,000円以下

支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 

80,000円以下

支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

参考:No.1140 生命保険料控除 |国税庁

●旧契約(平成23年12月31日以前に契約した保険契約等)の控除額

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 

50,000円以下

支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 

100,000円以下

支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

参考:No.1140 生命保険料控除 |国税庁

新契約は40,000円が上限で、旧契約は50,000円が上限となります。

新契約の一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の合計は最大で120,000円。

旧契約は最大で100,000円です。

一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、新契約と旧契約の両方がある場合もあるでしょう。その場合は合算でき、各控除額は最高で40,000円となります。もし旧契約のみを適用させたほうが控除額が大きくなるのであれば、旧契約のみを適用させることが可能です。

保険料控除で引かれる金額(住民税)

住民税の計算において控除される金額も、ほぼ同様の計算式で求めます。

上限は所得税よりも少なく、各項目につき新契約は28,000円、旧契約は35,000円で、上限は70,000円です。

控除額の計算式は以下の通りです。

●新契約(平成24年1月1日以降に契約した保険契約等)の控除額

年間の支払保険料等 控除額
12,000円以下 支払保険料等の全額
12,000円超

32,000円以下

支払保険料等×1/2+6,000円
32,000円超

56,000円以下

支払保険料等×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円

参考:控除の種類|東京都港区公式サイト

●旧契約(平成23年12月31日以前に契約した保険契約等)の控除額

年間の支払保険料等 控除額
15,000円以下 支払保険料等の全額
15,000円超

40,000円以下

支払保険料等×1/2+7,500円
40,000円超

70,000円以下

支払保険料等×1/4+17,500円
70,000円超 一律35,000円

参考:控除の種類|東京都港区公式サイト

生命保険料控除を受けるために必要な手続き

生命保険料控除を受けるためには、所定の手続きを行うことが必要です。

会社員や公務員の場合と自営業者の場合では違いがありますので、それぞれ以下で解説します。

 会社員や公務員の場合

会社員や公務員が生命保険料控除を受けるには、勤務先で年末調整をするときに申告しましょう。

医療保険に加入していれば、毎年10月末頃に保険会社から「生命保険料控除証明書」というハガキが届くはずです。

ハガキには、その年における保険料の支払金額が、通常であれば証明日時点においての支払済み金額と、12月末まで加入した場合の支払予定額の両方が記載されているでしょう。

年末まで加入をし続ける場合は、支払予定額を利用してください。

年末が近づくと、勤務先から『給与所得者の保険料控除申告書』という書類の記載を求められます。

送られてきたハガキに書かれている金額等を参考に、必要事項を記入して提出してください。

なお、ハガキは添付することが必要です。

 自営業者の場合

自営業者の場合は確定申告が必要となります。

確定申告書「所得から差し引かれる金額」の「生命保険料控除」欄に控除額を記載します。ハガキは添付して税務署に提出しますが、e-Taxの場合は条件付きで省略できます。

なお、住民税は所得税の処理が終わると、1月1日現在における住所地の自治体に対してデータが自動的に提供されますので、特に手続きは必要ありません。

保険料を夫が負担して妻が加入している場合

妻が契約者・被保険者で、保険料は夫が負担するという形で医療保険に加入していることも珍しくありません。

この場合、保険料は夫の生命保険料控除の対象になるかという点が問題になります。

夫が保険料を支払っていることが明らかであれば、夫の生命保険料控除の対象です。

まとめ

税制上の優遇措置を受けるためには、正しく手続きを行うことが必要です。

会社員や公務員であれば、分からない点は職場の担当者に確認をして手続きをするといいでしょう。

自営業者の場合は記入を忘れると、修正申告しないかぎり優遇は受けられませんので注意してください。

※2022年10月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以