高額医療費(高額療養費)を払った時に保険協会から払戻しを受ける方法
2023年12月28日
もし高額な医療費を支払った際に一定の自己負担額を超えてしまった場合、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の払戻しができる制度があります。高額療養費制度と呼ばれるものです。
高額療養費制度の自己負担上限額は、年齢や所得に応じて計算式が定められています。
この記事では、以下の3点をご紹介していきます。
- 自己負担額の上限はいくらなのか?
- 実際にどれくらい払戻しされるのか?
- 高額療養費制度を使うにはどうすればいいか?
高額療養費制度における自己負担額の上限
高額療養費制度は、自己負担額を超えるほどの高額な医療費を支払った場合に利用できる制度です。まずは自己負担額がいくらなのかを確認していきましょう。
69歳以下の場合
69歳以下の場合は、所得に応じて5つの区分に分けられています。
適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと) 年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超252,600円+(医療費-842,000円)×1% 年収約770~約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円167,400円+(医療費-558,000円)×1% 年収約370~約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円80,100円+(医療費-267,000円)×1% ~年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下57,600円 住民税非課税者 35,400円
70歳以上の場合
70歳以上の場合は以下の区分になっています。
適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと) 外来
(個人ごと)現役並み 年収約1,160万円~
標報83万円以上/課税所得690万円以上252,600円+(医療費-842,000)×1% 年収約770万円~約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上167,400円+(医療費-558,000)×1% 年収約370万円~約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上80,100円+(医療費-267,000)×1% 一般 年収156万~約370万円
標報26万円以下
課税所得145万円未満等18,000円
〔年14万4千円〕57,600円 住民税非課税等 Ⅱ 住民税非課税世帯 8,000円 24,600円 Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)15,000円
一般と住民税非課税等の区分では、外来だけ(個人ごと)の上限額も設定されていることがポイントです。
1ヶ月の医療費が200万円だった場合の払戻し金額の例
実際に高額療養費制度を使った場合、いくらのお金が返ってくるのか計算してみましょう。
- ・年齢:34歳(69歳以下の区分)
- ・会社員で健康保険に加入
- ・区分:年収約370~約770万円(健保:標報28万~50万円)
- ・ひと月の総医療費:200万円
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% =80,100円+(200万円-267,000円)×1% =80,100+17,330=97,430円 |
つまり、200万円という高額な医療費がかかったとしても、高額療養費制度を使えば自己負担額は約10万円で済むということです。
高額療養費制度は世帯で合算できる
例えば、1世帯のうち複数人が病気やケガをして治療を受けた場合、それぞれの医療費を合わせて計算することができます。もし合算額が自己負担限度額を超えるのであれば、超えた金額が払戻されます。
おひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や、同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限ります。)の受診について、窓口でそれぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算することができます。
その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給します。
※ ただし、69歳以下の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます。
高額療養費制度を利用するには?
高額療養費制度は黙っていても利用できませんので、ご自身が加入されている公的医療保険協会に高額療養費の支給申請書を提出しましょう。
加入している保険協会によっては、申請をすすめてきたり、自動的に口座に振り込んでくれたりする場合もあります。病院の領収書の添付を求められることもあるため、保管しておいてください。
申請後は、各保険協会によって内容を審査します。レセプト確定後の審査となり、受診月から支給までは最低3ヶ月ほどかかります。
事前に高額な医療費になることが分かっていれば限度額適用認定が便利
入院や手術の予定があるなど、高額療養費制度を使うと事前に分かっている場合は「限度額適用認定証」または「限度額適用・標準負担額減額認定証」を交付してもらいましょう。この認定証を病院の窓口に提示すれば、窓口での支払いを自己上限額までに抑えることができます。
先ほどの例を使うと「97,430円」を払うだけで済みますので、高額なお金を用意しておく必要がなくなります。
まとめ
高額療養費制度は年齢や所得によって区分が設定されています。もし該当するようであれば、加入している公的医療保険協会に申請しましょう。
なお、支給期限は診療を受けた月の翌月初日から2年間です。期限が迫っている方は、早めの申請をおすすめします。
※2023年3月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以