生命保険の死亡保険金を受け取った際にかかる税金の種類と節税する方法

2023年9月5日

生命保険で死亡保険金を受け取った際には所得税、相続税、贈与税のうち、いずれかの税金が課せられますが、契約者(保険料の負担者)、被保険者、保険金の受取人を誰に設定するのかによって、課せられる税金が異なります。

表:死亡保険金の課税関係

被保険者 保険料の負担者 保険金受取人 税金の種類
所得税
相続税
贈与税

 

生命保険は税金対策としては有効な手段と言われていますが、高い節税効果を得るためには、どのように生命保険を利用すればいいのでしょうか。今回の記事では、生命保険と税金の関係性や、できるだけ保険金に課せられる税金を安く抑えるために必要なことについて紹介していきます。

生命保険の死亡保険金を受け取った際の3つの税金

死亡保険金を受け取った場合、そのお金は所得税、相続税、贈与税いずれかの対象となります。保険料の負担者、保険金受取人、被保険者が誰かによって、対象となる税が決められます(参考:死亡保険金を受け取ったとき|国税庁)。

保険料の負担者と保険金受取人が同じ場合は所得税、保険料負担者と被保険者が同じ場合は相続税、全てが異なる場合は贈与税です。

所得税

所得税が課される場合は、保険金の受け取り方によって扱い方が異なります。保険金を一括で受け取った場合は一時所得、年金形式で受け取った場合は雑所得として扱われます。一時所得の場合、課税対象となる金額は以下の計算式で割り出されます。

(保険金総額 − 払込保険料総額 − 50万円 )× 1/2

保険金の総額からすでに払った保険料の総額を差し引き、一時所得の特別控除である50万円を引いたものが「一時所得」の金額です。課税対象となるのは、その半分の金額です。

年金形式の場合は、その年に受け取った年金の総額から対応する保険料を差し引いた額が雑所得と見なされます。

一時所得や雑所得は、他の所得(給与所得)と合わせたものが所得税の課税対象となります。

相続税

相続税が課される場合には、「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠があります。法定相続人とは、民法によって決められた「死亡した人の財産を相続する権利がある人」のことです。

死亡した人の配偶者を第一に、子供、直系の尊属(父母や祖父母のこと)、兄弟姉妹の順に優先順位づけがされています。

加えて、相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除があります。

贈与税

贈与税は、以下の計算式によって求められます。

贈与税={贈与の財産価格-110万円(基礎控除額)}×贈与税率}

<贈与税率と控除額>一般贈与財産用・一般税率

基礎控除後の対象額 贈与税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

死亡保険金を受け取った時に発生するケース別の税金の種類

次に、受け取る保険金の種類によって、どんな税金が課税されていくのか確認していきましょう。

死亡保険金の場合

死亡保険金は、被保険者が死亡した際に受け取れる保険金ですが、受け取る人が誰かによって税金の種類が変わります。

被保険者 保険料の負担者 保険金受取人 税金の種類
所得税
相続税
贈与税

満期保険金の場合

生命保険の満期に受け取れる保険金も、死亡保険金同様に受取人が誰かによって税金の種類が変わってきます。

契約者 被保険者 受取人 税金の種類
所得税
贈与税

所得税が適用される契約のうち、一時払養老保険で保険期間が5年以下の契約や、保険期間が5年超でも5年以内に解約したものは源泉分離課税が適用されます。源泉徴収だけで納税できるため、申告が不要です。

個人年金保険の年金の場合

個人年金保険とは、保険料を積み立てることで将来、年金を受け取るための保険です。

被保険者が生存している場合

契約者 被保険者 年金受取人 税金の種類
夫または妻 年金に所得税
夫または妻 年金開始時点で年金の権利評価額に贈与税、2年目以降の年金に所得税

【参照】

保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金|国税庁

受け取っている期間間に被保険者が亡くなった場合

受け取っている期間間に被保険者が亡くなった場合は、年金の受け取り方法(一括受取・年金受取)によってかかる税金が異なります。

契約者 被保険者 受取人 受取方法 税金の種類
一括受取 相続税
年金受取 年金の権利評価額に相続税、2年目以降の年金に所得税(雑所得)
一括受取 受取開始時に年金の権利評価額に贈与税、未払年金に所得税(一時所得)
年金受取 受取開始時に年金の権利評価額に贈与税、2年目以降の毎年受け取る年金に所得税(雑所得)
一括受取 所得税(一時所得)
年金受取 所得税(雑所得)
一括受取 契約者が受け取る場合は所得税(一時所得)
契約者以外が受け取る場合は贈与税
年金受取 契約者が受け取る場合は所得税(一時所得)
契約者以外が受け取る場合は年金の権利評価額に贈与税、2年目以降の年金に所得税(雑所得)

医療保障に課せられる税金

生命保険に加入している方の中には、医療保障をつけている方もいるでしょう。医療保障によって支給される保険金に税金が課せられるのか気になるところです。

非課税とされる保険金は、所得税法によって決められており、病気やケガに対して支払われた給付金は非課税です。

医療保障で支給される以下の保険金には税金が課せられません。

  • ・手術給付金
  • ・通院給付金
  • ・高度障害保険金
  • ・三大疾病保険金
  • ・介護保険金
  • ・障害保険金
  • ・リビングニーズ特約の特約保険金
  • ・特定損傷給付金
  • ・がん診断給付金
  • ・先進医療給付金

また、就業不能保険の就業不能給付金も同じく非課税です。

生命保険に課せられる税金は相続税にするべき理由

生命保険の保険金に課せられる税金の中では、相続税が一番、高い節税効果を期待できます。ここでは理由をご紹介します。

控除の内容が豊富である

相続税の課税対象額から差し引かれる控除の内容が豊富です。

基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

まず、基礎控除として「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」があります。例えば法定相続人が3人の場合、3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円が課税対象額から控除されるため、相続財産の額が4,800万円以下であれば相続税が発生しません。

生命保険非課税枠:500万円×法定相続人の数

死亡保険金に相続税が課せられる場合、生命保険非課税枠が適用されます。生命保険非課税枠が適用されることで「500万円×法定相続人の数」が課税対象額から控除されます。

その他の控除

また、被相続人が生前残した借金や葬儀費用も、控除に含めることができます。さらに、配偶者は配偶者控除として1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかかりません。これらの控除は全て併用することが可能です。

税率が低い

所得税、贈与税と比べて税率が低いことも、節税効果の高い理由として挙げられます。

死亡保険金を受け取った時の税金を計算する方法

ここでは、以下の例を元に死亡保険金を相続税、所得税、贈与税で受け取った場合の税金をそれぞれ計算していきます。

  • ・死亡保険金:6,000万円
  • ・法定相続人:2人(配偶者と子)
  • ・払込保険料総額:3,000万円
  • ・所得税率:20%

相続税の計算方法

まず、相続税から見ていきましょう(死亡保険金の他に相続財産がなかったとします)。

生命保険の非課税枠:500万円 × 2人=1,000万円

課税対象額に算入する死亡保険金額:6,000万円-1,000万円=5,000万円

基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円

課税遺産総額は、5,000万円-4,200万円=800万円となります。

続いて、相続税の計算です。課税遺産総額を法定相続人で割ります。

配偶者:800万円× 1/2=400万円
子:800万円× 1/2=400万円

相続税率をそれぞれかけると、

配偶者:400万円×10%=40万円
子:400万円×10%=40万円

となり、相続税の合計は80万円です。

所得税の計算方法

保険金に課せられる所得税は、課税対象額×税率になりますが、課税対象額は、以下の計算式によって求めることができます。

(保険金額-支払った保険料-特別控除額50万円)×1/2

課税対象額は、(6,000万円-3,000万円-50万円)×1/2=1,475万円になります。この額を他の所得と合算します。

今回の事例では所得税の税率を20%とすると、保険金にかかる税金は1,475万円×20%-控除額42万7,500円=252万2,500円です。

贈与税の計算方法

続いて贈与税は、以下の計算式で求めることができます。

{保険金-110万円(基礎控除額)}×税率-(控除額)

直系尊属からの贈与でない場合、贈与税額は(6,000万円-110万円)×55%-400万円=2,839万5,000円です。

生命保険で賢く税金対策をする方法

生命保険で税金対策をする際に、知っておくべき対策方法をご紹介していきます。

契約者と被保険者を同一にする

まず、死亡保険金に課せられる税金を安くするためには、相続税が課せられるように契約をするべきです。そのため、契約者と被保険者は同じ人を設定しましょう。

保険料を一括で支払うと節税効果が高い

もし、お金に余裕があるのであれば、一時払い終身保険へ加入しましょう。一時払い終身保険とは、将来、発生する保険料を全額まとめて支払うタイプの保険です。保険料の総額に対する死亡保険金の割合が高くなることや、健康状態に不安があっても加入しやすいなどのメリットがあります。

生命保険が相続税対策として優れている理由

続いて、生命保険が相続税対策に優れている理由を紹介していきます。

納税資金を用意しやすい

相続人は、被相続人の死亡から10ヶ月以内に相続税を納めます。不動産など現金以外の財産を多く相続する方は、納付期限までに納税資金を用意しなければなりません。しかし、相続人の中には、納付期限までに納税額を用意できない方もいます。

納付期限までに納税ができない場合、別途で追徴税が課されるため、相続人は早めに納付資金を用意するべきです。死亡保険が相続対策として優れている理由の一つに、一括で現金を受け取ることができ、納税資金を準備しやすいことがあります。

通常の相続財産は、遺産分割が完了するまで財産を受け取ることができませんが、生命保険の死亡保険金であれば、書類を用意するだけで一週間程度で受け取ることが可能です。

生命保険受取人を分散させる

相続トラブルの大半は相続人が複数いる場合です。その点、死亡保険金は受取人固有の財産になるため、遺産分割協議の対象外です。つまり、特定の相続人だけに財産を残したいと場合に活用するメリットがあります。

生命保険の死亡保険金を受け取った場合の確定申告について

もし、受け取った保険金が所得税に該当する場合には、受け取った年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告書を提出しなければなりません。そして、贈与税に該当するケースでは、死亡保険金を受け取った年の翌年2月1日から3月15日までに申告をする必要があります。

また、相続税に該当する場合は、被相続人の死亡から10ヶ月以内に申告しなければならないので、死亡保険金を受け取った方は、納税期間に気をつけてください。

まとめ

生命保険は万が一の事態に備えるものですが、相続時のことも考えて検討されることをおすすめします。契約者、被保険者、保険受取人を誰にするかで該当する税金の種類が決まってしまいます。加入する前なら慎重に、加入後なら見直しを含めて、生命保険会社やファイナンシャルプランナーに相談してみてください。

※2023年1月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以