生命保険の必要保障金額の算出方法と保険料との関係性

2023年9月18日

生命保険に加入する方の多くは、自分に万が一のことがあった場合に備えて、家族に資産を残すことを目的に加入します。そのため自分が亡くなった後に、家族の生活を保障するためにどれくらいの金額が必要になるのか、気になるところです。必要な保障金額は、生命保険に加入する人の状況に寄りますが、生命保険に加入する際に現在の収支を元にシミュレーションを行ってみましょう。

今回の記事では、生命保険における必要保障額の算出方法、生命保険の保障では足りない金額を埋めるための方法、保険料の仕組みについてまとめてみました。

生命保険における必要保障金額とは?必要保障額の算出方法

生命保険では被保険者が死亡した場合に、受取人へ死亡保険金が支給されます。残された家族の生活を保障するためのお金ですが、どれくらいの金額が必要なのでしょうか。

必要保障額の相場

生活保険文化センターが令和元年度に行った調査では、生命保険の加入者が必要とする保障額の平均金額は、男性が3,108万円、女性が1,444万円、全体が2,219万円という結果になりました。それに対して、実際に加入している保険の保障金額の平均は、男性が1,866万円、女性が801万円、全体が1,261万円です。

女性と比べて家庭の収入を担う責任がある男性の必要保障金額は、高額な傾向にあると分かります。しかし、実際に加入している保険では、保障金額が足りないようです。

全体 男性 女性
必要保障額 2,219万円 3,108万円 1,444万円
加入金額 1,261万円 1,866万円 801万円

参照:「令和元年度「生活保障に関する調査|生命保険文化センター

被保険者の死亡後の収支を書き記す

上記の生命保険における必要保障額はあくまで平均であり、各世帯によって異なるので目安と捉えてください。実際の必要保障額を算出するためには、まずは被保険者が死亡した後の収支を計算することが大切です。被保険者が死亡後に発生する支出は、

  • 被保険者の生活費を差し引いた年間あたりの生活費
  • 将来的に必要な出費
  • 被保険者の葬儀費用

将来的に必要な出費としては、子供の学費などが挙げられます。また、被保険者死亡後の収入は、下記を合わせたものです。

  • ・配偶者の年収
  • ・貯金

支出に対する収入の差額分を計算することで、生命保険の必要保障金額が分かります。

被保険者が死亡した場合のシミュレーションをする

では、夫、妻(48歳)、大学入学を控えた子供(中学3年生)の3人家族の場合に、必要な生命保険の保障金額をシミュレーションしていきましょう。

総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2021年(令和3年)平均結果の概要」によると、2人以上世帯(勤労者世帯)の平均生活費は約30.9万円でした。このうち、食費は約7.8万円、交通・通信費は約5万円です。(参照:2021年「家計調査」e-Stat

また、「葬儀にかかる費用はどれくらい?|生命文化センター」によると葬儀費用の相場は、約184万円になります。そこで、以下の条件で、子供が22歳で自立することを前提に、妻が65歳になるまでの必要保障金額を計算していきましょう。

生活費(月額) 30.9万円
葬儀費用 184万円
大学資金 総額500万円
年収 600万円
450万円
150万円
貯金  1,000万円

支出の総額

夫の死後は夫の生活費がかからなくなるため、生活費に関しては(食費7.8万円+交通・通信費5万円)÷3人=約4.2万円分下がります。

つまり、子供が自立するまでの22歳-15歳=7年間は、年間あたり26.7万円×12ヶ月×7年=約2,243万円の生活費がかかるということです。

また、同様に子供が自立した後は、子供の分の生活費の約4.2万円が浮く計算になるので、65歳-48歳-7年間=10年間は、年間あたり22.5万円×12ヶ月×10年=2,700万円の生活費がかかります。

よって、生活費の総額は2,243万円+2,700万円=4,943万円です。

葬儀費用の184万円と大学資金500万円を合わせると支出の総額は5,627万円になります。

収入の総額

妻の年収は150万円であるため、65歳まで現役で働くとすると合計で150万円×(65歳-48歳)=150万円×17年間=2,550万円の収入を得ることになります。

貯金額は1,000万円なので、収入の総額は3,550万円です。

よって収支の差額分は、5,627万円-3,550万円=2,077万円になり、生命保険における必要な保障金額が分かりました。

生命保険において足りない必要保障金額を埋めるためには?

見出し「必要保障額の相場」では、生命保険の加入額平均は1,261万円とお伝えしました。

上の項目で計算した必要な保障金額との差額を計算すると、2,077万円-1,261万円=816万円足りていないことが分かります。

そこで、足りない保障金額を埋めるために必要なことをご紹介します。

母子家庭が利用できる社会保障制度

もし大黒柱である世帯主が亡くなった場合には、母子家庭が利用できる社会保障制度を有効に活用しましょう。母子家庭を対象とした社会保障制度として、以下の制度があります。

  • ・児童手当:0歳~15歳までの子供を持つ世帯を対象とした手当金
  • ・住宅手当:20歳未満の子供を育てている母子家庭を対象にした家賃補助制度(実施していない市区町村もあります)
  • ・ひとり親家庭等医療費助成制度:保護者や子どもが病院を受診した際に、自己負担分の一部を助成する制度

その他、以下の制度もあります。

  • ・遺族年金:年金受給資格のある世帯主が亡くなった場合に、家族に支給される年金
  • ・国民健康保険・国民年金保険料の免除:保険料の支払いが困難な世帯が申請によって全額、または一部免除される制度

葬儀費用の補助金制度の利用

葬儀費用を安くするための社会保障制度もあります。加入している健康保険によって名称や内容が異なります。

例えば、協会けんぽに加入している人が亡くなったときは、5万円の埋葬料が支給されます。

生命保険の保険料と保障内容の関係性

生命保険に加入するにあたり、どれくらいの金額を負担しなければならないのか気になるところです。保障内容によって保険料は異なるため、保険の種類、保障の内容と保険料の関係性について確認していきましょう。

定期型と終身型で異なる保険料

保険には一定の期間だけ保障を受けることができる定期型と、一生涯保障を受けることができる終身型に分かれます。

定期型の生命保険(定期保険)の特徴

加入期間中に被保険者が亡くなった場合に、受取人が死亡保険金を受け取ることができます。定期保険は、終身保険と比べて保険料が安いことが特徴ですが、更新する度に保険料は高くなります。

定期保険の特徴をまとめると、

  • ・加入時の保険料が安い
  • ・更新の度に保険料は高額になる
  • ・一定年齢に達すると更新できなくなる
  • ・満期保険金が支給されない
  • ・解約返戻金(解約時に返還される保険料)がもらえない保険が多い

終身型の生命保険(終身保険)の特徴

終身保険では、生涯、保障を受けることができますが、被保険者が高齢になった場合、家族の生活を保障する必要はなくなるでしょう。そのため、死亡保険金を葬祭費用にあてる方や、高齢時に解約し、解約保険金を老後の資金にあてる方が多いです。

保険料は高額ですが、定期保険と違い更新する必要がないため、加入時から保険料が上がりません。

保険料の支払い方法には、一定期間で支払いを終える有期払いと、生涯、支払い続ける終身払いがあります。終身保険の特徴をまとめると、以下の通りになります。

  • ・生涯に渡り保障を受けられる
  • ・加入時の保険料が高い
  • ・保険料が上がらない
  • ・保険の見直しがしづらい

掛け捨て型と貯蓄型の違い

保険には、積み立てた保険料が戻ってこない掛け捨て型と、解約した際に積み立てた保険料が戻ってくる貯蓄型に分けることができます。貯蓄型は、保障と貯蓄の両方の機能を兼ね備えているため、掛け捨て型と比べると保険料は高額です。掛け捨て型は解約返戻金がない、またはあっても少額なので、保険に保障機能のみを求める方に適しています。

保険料 解約返戻金
掛け捨て型 安い ×
貯蓄型 高い

保障を手厚くするほど保険料は高額になる

生命保険には、保障内容を手厚くするために色々な特約を付けることができます。

  • ・収入保障特約:被保険者が死亡または高度障害状態になった後、契約期間満了まで年金が受け取れる特約
  • ・生存給付金付定期特約:被保険者の生存に対し、定期的に給付金が支給される特約
  • ・三大疾病保障特約:三大疾患(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)を患い、所定の状態になった場合に、死亡保険金と同額の保険金を受け取る特約

死亡保障を手厚くする内容の特約がメインになりますが、特約は多くするほど保険料が高額になります。

まとめ

生命保険に加入する際には、保障金額がどれくらい必要なのかを計算しなければなりません。また、保障内容に対してどれくらいの保険料を負担できるのかも検討する必要があります。保険選びは難しいと思いますが、どの保険に加入するべきなのか迷ったら、一度FPに相談してみてはいかがでしょうか。

※2023年1月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以