ソルベンシー・マージン比率とは|保険会社の支払余力・格付けの全知識

2023年5月12日

ソルベンシー・マージン比率(そるべんしー・まーじんひりつ)とは、「支払い余力」とも言われ、保険会社に様々な予期せぬリスクが訪れた際に、その保険会社が保険金などを払っていける余力を示した数値です。今回は、保険選びに重要なソルベンシー・マージン比率の仕組みや比率の見方などを解説していきます。

ソルベンシー・マージン比率(そるべんしー・まーじんひりつ Solvency Margin Ratio)とは、「支払い余力」とも言われ、保険会社の健全性を示した数値です。予期せぬリスクが訪れた際に、その保険会社が保険金などを払っていける余力を示しています。この比率が高ければ高いほど、支払い余力があることになります。

ソルベンシー・マージン比率は保険選びの判断基準としても使えますので、本記事で理解していただけると、今後の保険選びに役立ちます。

ソルベンシー・マージン比率の仕組みと保険会社を選ぶ上での指標

では、ソルベンシー・マージン比率の仕組みとはどういったものなのでしょうか。

ソルベンシー(Solvency):財務健全性。負債などに対する支払い能力、債務超過にならない状態という意味。

保険に加入している方にとって恐ろしいことの一つは、加入先の保険会社の経営が悪化することです。保険は、長い期間を見据えた上で加入するのが一般的です。しかし、災害や株の大暴落などは予期できません。

ソルベンシー・マージン比率は、災害や株の大暴落など、万が一のことが訪れた時にも保険会社が支払いに対応できるかどうかを判断する上で有効な指標です。

ソルベンシー・マージン比率の計算方法

では、ソルベンシー・マージン比率はどのように計算すればいいのでしょうか。ソルベンシー・マージン比率は「保険業法第130条」で定められており、金融庁のホームページに具体的な計算式が掲載されています。

{ソルベンシー・マージン総額/(リスクに対応する額×0.5)}×100

参考:金融庁|ソルベンシー・マージン比率の概要について

ソルベンシー・マージン総額

主に保険会社の資本金ですが、それに加え、価格変動準備金・一般貸倒引当金・危険準備金などが含まれます。

リスクに対応する額

様々な予想を超えるリスクの合計値です。一般的に保険会社が抱えるリスクは以下の通りです。

  • 保険リスク:保険事故の発生率が通常の予測を超えるリスク
  • 資産運用リスク:株価の暴落や為替相場の急変などで資産価値が下落するリスク
  • 経営管理リスク:保険会社の経営に関するリスク
  • 予定利率リスク:運用環境が悪化することで、資産運用における利回りが予定利率を下回るリスク
  • 最低保証リスク:特別勘定資産の予想外の価格変動によって発生するリスク

リスクに対応する額にはさらに詳細な計算式がありますが、一般の方がそこまで気にする内容ではありません。より詳しいことについては「ソルベンシー・マージン比率の概要について-金融庁」をご覧ください。

ソルベンシー・マージン比率のボーダーライン

では、万が一の事態に対応できる保険会社は、ソルベンシー・マージン比率の数値がどれくらいなのでしょうか。まず、前提として200%を下回る保険会社は、財務状況がよくないと判断され、金融庁によって是正措置が行われます。

また、かつてソルベンシー・マージン比率が400%だったにも関わらず経営破綻した会社があるので、最近は600%以上が安心と言われています。

ソルベンシー・マージン比率は公開されている

ソルベンシー・マージン比率は、各保険会社のホームページで誰でも観覧できるようになっています。例えば、インターネットで「○○(保険会社名) ソルベンシー・マージン比率」で検索すれば、各保険会社の公開ページが出てきます。

ソルベンシー・マージン比率と責任準備金の違い

ソルベンシー・マージン比率に付随して「責任準備金」という言葉もよく目にするかと思います。この2つは、保険会社の積立金として同じような意味合いで使われますが別ものです。

ソルベンシー・マージン比率は、想定外のリスクに対しての「支払い余力」ですが、責任準備金は想定内の支払いに対する「支払い能力(積立金)」です。

ソルベンシー・マージン比率を指標にする上での注意点

では、最後にソルベンシー・マージン比率を保険会社選びの指標にする上での注意点について紹介していきます。

保険選びの基準はソルベンシー・マージン比率がすべてではない

ソルベンシー・マージン比率は、保険会社の健全性を示す指標ですが、保険選びの参考にしようとしている方に一点注意していただきたいことがあります。それは、ソルベンシー・マージン比率だけが保険選びの判断基準ではないという点です。

商品の種類はたくさんありますし、保険に加入する理由も人それぞれでしょう。ソルベンシー・マージン比率は会社の健全性を示す数値ですが、保険選びではあくまでも参考程度にしてください。保険を選ぶ基準については以下をご覧ください。

予想外の事態が起きると各保険会社のソルベンシー・マージン比率も下がる傾向にある

ソルベンシー・マージン比率は予想外のリスクに対しての支払い余力だとお伝えしていますが、実際に予想外の事態が起きた時に各社のソルベンシー・マージン比率は下がる傾向にあります。

例えば、2008年はリーマンショックによる世界金融危機が起きた年なので、各保険会社のソルベンシー・マージン比率も下がりました。

また、2011年はソルベンシー規制の改定によって各社のソルベンシー・マージン比率が大幅に下がった年です。東日本大震災が起き、そのことも影響していると考えられます。

参考:日本の生命保険業界の現状③

まとめ

ソルベンシー・マージン比率が高ければ安心ですが、比率だけを見て選んでしまうと自分に合っていなかったということもあり得ます。ソルベンシー・マージン比率の高さだけではなく、企業規模や保険会社の格付け、保険内容、掛け金などをよく見て総合的な判断をする必要があるのです。

保険選びに迷った際は、FPに相談してみるのも1つの方法です。FPならソルベンシー・マージン比率のこともよく知っていますので、聞いてみるといいかもしれません。

※2022年9月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以