保険会社が倒産したらどうなる?|倒産後の救済措置と保険契約内容
2023年4月3日
保険会社が倒産しても、今まで積み立ててきた保険がなくなることはないので安心してください。
生命保険契約者保護機構の援助によって倒産した保険会社から保険契約を継続して引き受ける仕組みがあるのです。
ただし、保険金や解約返戻金は下がるケースがあります。
保険会社は倒産しないイメージが強いと思いますが、保険会社も一企業なので絶対に倒産しないということはありません。
この記事では、契約中の保険会社が倒産した場合の救済措置と、引き継ぎ後の保険契約の変更、保険会社の経営状態を把握する方法などについて紹介します。
保険会社が倒産した場合の契約者保護の仕組み
冒頭でも説明した通り、保険会社が倒産しても『生命保険契約者保護機構』により、保険契約が解除されることはありません。
生命保険契約者保護機構は、資金援助等により、倒産した生命保険会社と契約している人を保護するための組織です。
なお、日本で事業を行うすべての生命保険会社は、生命保険契約者保護機構に加入しています。
生命保険契約者保護機構の救済の方法は主に以下の3種類に分かれます。
- ①救済保険会社への資金援助
- ②生命保険契約者保護機構が設立する子会社が保険契約を引き継ぐ
- ③生命保険契約者保護機構が保険契約を引き継ぐ
以下で救済方法を補足的に説明します。
救済措置①:救済保険会社への資金援助
救済保険会社とは、倒産した生命保険会社の保険契約を引き継ぐ民間の保険会社のことです。
救済保険会社は、保険契約の移転や倒産会社の株式取得・合併などにより、保険契約を引き継ぎます。
救済保険会社が現れた場合、生命保険契約者保護機構は救済保険会社に対して資金援助を行い、責任準備金(※)の90%を補償します。
なお、過去の日本の生命保険会社が倒産した例は8件ありますが、すべての場合で救済保険会社が現れています。
(※)責任準備金とは |
満期金、保険金、給付金など支払いのために、保険料や運用利益などを保険会社が積み立てているお金のこと |
救済措置②:生命保険契約者保護機構が設立する子会社が保険契約を引き継ぐ
もし救済保険会社が現れなかった場合、生命保険契約者保護機構が子会社を設立します。これを承継保険会社と呼びます。
倒産後は、承継保険会社が保険契約を引き継ぎ、保険契約が継続するのです。
なお、この時も生命保険契約者保護機構は責任準備金の90%を承継保険会社に対して資金援助します。
救済措置③:生命保険契約者保護機構が保険契約を引き継ぐ
救済保険会社が現れなかった場合、生命保険契約者保護機構自体が保険契約を引き継ぐケースもあります。
保険引き継ぎ後の保険契約の変更
救済保険会社や生命保険契約者保護機構により引き継がれた保険の契約は、保障内容が全く変わらないケースもありますが、以下のように変更される場合もあります。
- ①給付金・保険金・満期金が減額される
- ②早期解約した場合の解約返戻金が減額される
以下で詳しく見てみましょう。
契約の変更①:保険金・給付金・満期金が減額される
責任準備金(保険金支払いのためのお金)が原則90%しか補償されないことや、予定利率(※)が引き下げられることにより、保険金や給付金、満期金が減額されることがあります。
減額することで、救済保険会社の保険運営を健全なものにしようという狙いがあります。
なお、終身保険、養老保険、個人年金保険などの貯蓄性の高い保険や、予定利率が高い保険、満期までの期間が長い保険は、減額が大きくなります。
(※)予定利率とは |
運用利回りの予想のこと。予定利率が高ければ保険料が安く、予定利率が低ければ保険料は高くなる。 |
契約の変更②:早期解約した場合の解約返戻金が減額される
契約が引き継がれた後、解約希望者が殺到し保険運営が回らなくなることを防ぐために、契約引き継ぎ後一定期間内に解約した場合、解約返戻金が減額されることがあります。
これを『早期解約控除』と呼びます。
なお、通常は倒産後、保険契約が引き継がれるまでは解約できません。
保険会社が倒産に至る原因
保険会社の倒産する主な原因としては、ハイリターン保険の売りすぎ、景気状況の悪化が一般的です。
ここでは、それぞれの原因について簡単に確認してみましょう。
原因①:ハイリターン保険の売りすぎ
過去には、安い保険料で多くのリターン(解約返戻金や給付金)を受け取れる保険商品が多くありました。
消費者からしてみれば、お得な保険でぜひとも契約したい保険です。
保険会社もお客様を獲得するために、様々なお得な保険を販売していましたが、それを売りすぎたゆえに、会社の経営が悪化して倒産に至った保険会社がいくつかあります。
原因②:景気状況の悪化
景気は常に変化するので、良い時もあれば、悪い時もあります。
どんな会社でも景気の影響を受けますが、保険会社も例外ではありません。
保険会社は集めた保険料を元に、運用してお金を増やしています。その際、国債で運用することが多いです。
しかしバブル崩壊後に国債の利率が大幅に下がったため、それ以前に販売していた高配当な保険の保険金などを支払うだけの利益が出なくなりました。
景気が悪くなり国債の利率が下がったことで、保険会社が倒産することもあるのです。
保険会社が倒産した実例
今までに倒産した保険会社は
- 日産生命(1997年)
- 東邦生命(1999年)
- 第百生命(2000年)
- 大正生命(2000年)
- 千代田生命(2000年)
- 協栄生命(2000年)
- 東京生命(2001年)
- 大和生命(2008年)
の8社です。
この中から最初に倒産した日産生命と最後に倒産した大和生命の事例について紹介したいと思います。
日産生命
日産生命が破綻した理由として一番の原因となったのは、業界初の歯科医療保険と、高い予定利率の個人年金の販売にあります。
歯科医療保険は当時一時的にはかなり注目されましたが、この保険は保険請求額がかなり高額で、結果的に日産生命の経営状態を苦しませ、経営悪化に結びつけました。
また、個人年金の販売は、地方銀行などと提携して融資と合わせた個人年金プランを販売し、資産を急激に増加させることに成功しました。
しかし、低金利時代の到来によって、高予定利率のこの保険が会社の経営を悪化させました。
倒産後は、保険契約などはあおば生命(現在のプルデンシャル生命)が引き継ぎをしました。
倒産後の保険契約の変更については、この当時は保険会社の倒産が想定されておらず、保険業法に基づいて対応がなされました。
倒産となった要因をなくすために、予定利率を2.75%に引き下げ、7年以内の解約には解約返戻金を最大で15%削減することが決定されました。
大和生命
大和生命が破綻した理由としては、ハイリスク・ハイリターンの資産運用が原因とされています。
大和生命は有価証券の中でも安全性が高いものにはあまり積極的に投資せず、不動産投資信託や外国株式などリスクの高いものにかなりの金額を投資していました。
このような行き過ぎた運営によって、資金面で苦しみ、2008年の世界的な経済危機に耐えられず、経営の悪化に陥りました。倒産後は、米国のジブラルタ生命に完全子会社化されました。
現在の名称はプルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命になっています。
これから保険加入を考えている方に
これから保険加入を考えている方は、加入する保険会社が倒産するような事態だけは避けたいはずです。
自分の将来に関係してくる保険は慎重に選び、自分に合ったものに加入することが重要になってきます。
そのためにも加入する保険会社の経営状況を詳しく知る必要があります。
ここでは、倒産しそうな保険会社の見極めるための方法について紹介します。
方法1:決算情報を見る
保険会社が公式サイトで公表している決算情報をチェックし、基礎利益に着目しましょう。
基礎利益は保険収益から諸経費を引いた利益です。基礎利益が多いほど、健全な会社だと言えます。
決算情報には、契約件数や加入者数、格付けなどの情報も載っているので、合わせて確認すると安心です。
方法2:ソルベンシー・マージン比率を確認する
ソルベンシー・マージン比率とはその企業の支払い余力を確認する際に活用される比率です。
予想を超えた事態に陥った際にどれほどの力を見せられるか、余力があるかということを判断します。
この数値が高ければ高いほど、余力があり、予想外な出来事にも対応できるとされています。
数値が200%以上で安全な保険会社であるという基準があります。
まとめ
保険会社の倒産は多くの人に多大な影響を与え、歴史に残る一大事です。
自分の将来の資金のために保険会社を信じてお金を預けるからには、契約満了までは加入した保険会社には残っていてほしいと思います。
しかし、倒産したとしても、契約内容が補償されることは私たちの安心につながるのではないでしょうか。
保険会社を選ぶ際には今まで紹介した点を踏まえて、慎重に選んでください。
※2022年9月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以