介護保険における医療費控除を受ける為に必要な知識のまとめ

2023年7月4日

介護に必要な費用負担を減らすために介護保険制度がありますが、医療費控除の対象になるサービスがあるのはご存知でしょうか。

介護は居宅サービスや施設サービスを利用することで、様々な費用がかかります。少しでも負担を減らせるに越したことはありません。

そこで今回の記事では、介護保険サービスで医療費控除を受けるにあたり、控除の対象になる費用や、控除を受けるために必要な手続きの方法についてまとめました。

医療保険控除の対象者になるためには

まず最初に、介護保険の医療費控除の対象になる費用は、年間あたりで算出されます。その年の1月1日~12月31日までに支払いを済ませたものが対象となるため、支払いが済んでいない医療費はその年の控除対象に含められません。

また、介護保険制度下における医療費の自己負担額が10万円以上になる方が控除の対象者になります。

そして、所得200万円未満の人が医療費の控除を受けるためには、医療費の自己負担額が所得額の5%以上でなければなりません。

介護保険制度を利用できる対象者

介護保険制度を利用できるのは、要介護・要支援状態の65歳以上の方、または特定疾患によって要介護や要支援状態になった40~64歳の方です。

介護保険制度下における医療費控除の対象サービス

介護保険制度を利用することで、介護サービスの自己負担額を軽減することができます。加えて、受けたサービスの内容によっては医療費控除の対象になります。

介護サービスは施設サービスと居宅サービスの二つに分かれ、同時に医療系、福祉系の二つに分けることが可能です。

以下でどのような費用が医療費控除の対象となるのか確認していきましょう。

施設サービス

施設サービスは、老人ホームや医療施設で受けられるサービスです。医療系、福祉系があります。医療系サービスは全額控除されるのに対して、福祉系サービスは控除される額は半額だけ控除されます。

医療系

医療系サービスに関して、利用できる入居施設は、

  • ・介護老人保健施設
  • ・指定介護療養型医療施設(療養型医療床郡等)
  • ・介護医療院

に分けることができます。介護費・食費・居住費など施設費用に加えて、施設内における診療・治療が控除の対象です。

福祉系

福祉系サービスを提供している入居施設は、

  • ・指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • ・指定地域密着型介護老人福祉施設

の二つに分けることができます。介護費、食費、居住費など施設に支払った費用の1/2が控除の対象になります。

参照:「医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価|国税庁

居宅サービス

居宅サービスは、職員が自宅を訪問することで受けられるサービスです。要介護者か要支援者によって受けられるサービス内容が異なります。

医療費控除の対象になるサービス

  • ・訪問看護
  • ・介護予防訪問看護
  • ・訪問リハビリテーション
  • ・介護予防訪問リハビリテーション
  • ・居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
  • ・介護予防居宅療養管理指導
  • ・通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】
  • ・介護予防通所リハビリテーション
  • ・短期入所療養介護【ショートステイ】
  • ・介護予防短期入所療養介護
  • ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
  • ・看護・小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)

引用元:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁

併用することで対象になるサービス

以下は、上の見出しで挙げたサービスと併用する場合に医療費控除の対象になります。

  • ・訪問介護【ホームヘルプサービス】(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除きます。)
  • ・夜間対応型訪問介護
  • ・介護予防訪問介護(※平成30年3月末まで)
  • ・訪問入浴介護
  • ・介護予防訪問入浴介護
  • ・通所介護【デイサービス】
  • ・地域密着型通所介護(※平成28年4月1日から)
  • ・認知症対応型通所介護
  • ・小規模多機能型居宅介護
  • ・介護予防通所介護(※平成30年3月末まで)
  • ・介護予防認知症対応型通所介護
  • ・介護予防小規模多機能型居宅介護
  • ・短期入所生活介護【ショートステイ】
  • ・介護予防短期入所生活介護
  • ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所に限ります。)
  • ・看護・小規模多機能型居宅介護(上記①の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
  • 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)
  • 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)

引用元:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁

併用しない場合でも、介護福祉士などが行う喀痰吸引の費用(自己負担額の10%)は、控除を受けられます。

※喀痰吸引:自力で痰を排出する体力がなく吸引器を用いて吸引する行為

対象外のサービス

以下のサービスは、医療費控除の対象外です。

  • ・訪問介護(生活援助中心型)
  • ・認知症対応型共同生活介護【認知症高齢者グループホーム】
  • ・介護予防認知症対応型共同生活介護
  • ・特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】
  • ・地域密着型特定施設入居者生活介護
  • ・介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
  • ・福祉用具貸与
  • ・介護予防福祉用具貸与
  • ・看護・小規模多機能型居宅介護【旧複合型サービス】(生活援助中心型の訪問介護の部分)
  • ・地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスに限ります。)
  • ・地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスに限ります。)
  • ・地域支援事業の生活支援サービス

引用元:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁

【参照】

▶「介護保険サービスの対価に係る医療費控除の概要|国税庁

その他の対象となるもの

その他、おむつ代、被看護人の送り迎えで使用した交通費なども介護保険の医療費の控除の対象に含めることができます。

おむつ代

居在サービスで使ったおむつ代も控除対象です。ただし、医師が書いた「おむつ使用証明書」がある場合に限ります。

交通費

サービスを受けるために施設に通った際の交通費が控除対象です。居在サービスが医療費控除の対象となった場合のみで、通常必要なものに限定されています。

介護保険制度下における医療費控除を受けるために必要なこと

では、介護保険制度を利用する上で、医療費控除を受けるためにどうすればいいのか、以下で申請方法を確認していきましょう。

申請書類を集める

まず、医療費控除を受けるためには申請用の書類を集めなければなりません。

  • ・確定申告書
  • ・源泉徴収票
  • ・医療費控除の明細書(税務署で取り寄せ)
  • ・医療費の領収書
  • ・施設発行の領収書
  • ・交通費の領収書

が必要になります。おむつの証明書、介護サービスの領収書、その他証明書に関しては以下を参照してください。

【参照】

▶「おむつ使用証明書|厚生労働省

▶「居宅サービス利用料領収証|国税庁

▶「指定介護老人福祉施設利用料等領収証|国税庁

▶「在宅介護費用証明書|国税庁

確定申告

申請書類が揃えば、今度は自身の住所を管轄する税務署に申請しに行きましょう。提出期限は2月16日~3月15日(土日祝日の場合は翌月曜日)になります。

医療費控除を受ける際の注意点

では、最後に介護保険制度における医療費控除を受ける上で、注意点について解説していきます。

医療費控除の上限は200万円

医療費控除の上限額は200万円となっています。200万円までしか控除されないので注意しましょう。

当人または同一生計の親族が支払った医療費であること

自己負担した医療費が控除されるのは、当人または同一生計の親族が支払った医療費のみです。親族以外の方が、介護のための医療費を負担しても控除の対象には含まれません。

参照:「医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

まとめ

介護サービスを受ける際は色々な出費がかさむと思いますが、医療費控除を利用することで負担を軽減できます。当記事をお読みになった方の負担が少しでも軽くなれば幸いです。

また、公的介護保険だけだと不安に感じる方は、民間の介護保険も検討してみてはいかがでしょうか。

※2022年10月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以