5分でわかる!生命保険の仕組み・原則をわかりやすく解説

2022年2月15日

だれもが一度は耳にしたことがある生命保険、その仕組みまでを正しく理解できていますか?一般的に「保険」と聞くと生命保険をイメージするのではないでしょうか。

また、みなさんは生命保険の仕組みを他人に説明できますか?できると思っていても、いざ説明しようとするとできない方が多いのではないでしょうか。

今回は生命保険の始まりやその種類、保険料の仕組みまでを解説していきます。

生命保険の歴史と成り立ち

まずは生命保険の歴史を見ていきましょう。現行の生命保険は金融商品のような側面を持っていますが、始まりはどのようなものだったのでしょうか。

起源は中世ヨーロッパ

生命保険の始まりは中世ヨーロッパの同職者集団である「ギルド」です。ギルドは組合のような(厳密には異なりますが)イメージをするとわかりやすいでしょうか。

同じ職業の人たちがお金を少しずつ出し合い、積み立てたお金を皆のために使うという仕組みです。皆のためというのは、誰かがケガをしたり、事業を起こす際の資本金にしたり、誰かがお金を必要とした時にそのお金を使おうということです。

相互扶助の理念

生命保険の大まかな成り立ちは理解できたでしょうか。その根幹にあるのは「相互扶助」の理念です。相互扶助というのは、お互いに助け合うことですね。現行の生命保険からはイメージしにくいかもしれませんが、根幹にあるのは相互扶助の概念です。誰かが大変な時はみんなでそれを支えようといった理念のもとに、生命保険はなりたっています。

もちろん自分のために加入するのですが、それは誰かのためにもなっているのです。生命保険の仕組みとその裏にあるものが理解できたのではないでしょうか。

生命保険を大きな財布と考えるとわかりやすい

皆がお金を少しずつ出し合って積み立てた共有財産は、大きな財布のようですね。生命保険とはまさにこれのことなのです。保険契約者が支払った保険料が大きな財布の中に入っていて、万が一のことが起きた場合にはそこから必要な分だけお金を使おうということです。

「保険」と聞くと「毎月お金を支払う」とか「保険金をもらう」といったことを想像するかもしれませんが、大きな財布をイメージするとその仕組みがつかみやすくなります。生命保険は、皆で大きな財布を共有し、誰かがお金を必要とした時にその財布からお金を出そう、といった仕組みです。

生命保険と貯蓄は「いざという時に使える金額」が違う

生命保険の加入を検討している方の中には、「生命保険と貯蓄は何が違うの?」とお考えになる人もいることでしょう。

生命保険と貯蓄の何が違うのかというと「いざという時に使える金額」です。

がんと診断確定されると200万円の診断一時金が受け取れる、がん保険(掛け捨て型の商品)を例に考えてみます。
たとえば、毎月の保険料を3,000円で契約したとします。もしこの保険に加入せず貯蓄をした場合、1年後には3万6,000円、10年後には36万円が貯まることになります。

仮に、がんになったら200万円のお金が必要と考えているとすると、貯蓄で準備する場合、200万円が貯まるのは約56年後です。

しかし、がん保険に加入していれば、仮に加入の1年後にがんと診断確定された場合でも200万円のお金を受け取ることができます。

このように、保険では「いざという時に使えるお金」が異なるのです。

生命保険の4つの種類

生命保険は主に被保険者が死亡・高度障害の状態になった際に保険金が支払われるようになっています。主に次の4種類があり、それぞれ異なる仕組みになっています。

定期保険

定期保険(定期型の死亡保険)は10年ごとや20年ごとなど、定期的に更新をしていく保険です。更新期間は契約時に保険契約者が設定します。定期型は、若い時は保険料が安く、年齢を重ねるごとに保険料が高くなっていくといった特徴があります。

年齢を重ねると死亡するリスクは上がっていくため、それにしたがって保険料が上がっていく仕組みです。定期型のメリットとしては、保険の見直しがしやすいといった点が挙げられます。保険の見直しは、保障内容を変更したり、解約をしたり、他の保険に乗り換えたりすることです。流通する保険商品は日々変化していきますから、自分に合った保険が見つかった場合は乗り換えることができます。

終身保険

終身保険(終身型の死亡保険)は保険料を支払い終えると、それ以降は保障が一生涯つづきます。加入時から保険料が全く変わらないといった特徴があります。払込み満了の時期は、60・65・70歳など、いつ払い終えたいかによって選べます。中には1年分をまとめて支払う年払いや、全てを一度で払う一括払込みなどもあります。解約返戻金という「中途解約をした際に戻ってくるお金」を期待するならば、できるだけ短い期間で払い終えた方がお得になります。

契約時から保険料が変動しないため、資金計画はしやすいですが、一度契約すると見直しにくいのがデメリットです。そのため若い時は定期型に加入し、タイミングを見計らって終身型に切り替えるといった方法が合理的といえます。その場合は切り替えるタイミングが鍵となります。

また終身型のもうひとつの特徴としては、保険金が必ず受け取れることがあげられます。人はいつか必ず死亡しますから、確実に受け取りたい方は終身型に加入するといいでしょう。

養老保険

養老保険は非常に貯蓄性の高い生命保険です。ほとんど貯金をする感覚に近いかもしれません。一番の特徴は、死亡保険金の他に「生存保険金(満期保険金)」があることです。つまり、満期を迎える時まで生存していた場合は生存保険金が、保険期間中に死亡した場合は死亡保険金が受け取れるということです。こういった仕組みのものは「生死混合保険」と呼ばれます。生存保険金は、死亡保険金と同額となります。

養老保険の主な用途は老後の資金の確保です。保険料の支払い方法は一括払いや年払い、月払いなどがあります。

収入保障保険

収入保障保険は「三角の保険」と呼ばれています。定期保険・終身保険・養老保険はいわゆる「四角の保険」です。保険期間中は保険金額が一定なためにそう呼ばれています。つまり三角の保険というのは保険期間が経過するごとに保険金が減少することを指します。「保険金が減少するって損じゃないの?」と思うかもしれませんが実はそうではありません。

例えば、自分に万が一のことがあった時に、子供が成人するまでの生活費を残そうとして保険を探しているとします。そうすると、子供が成長するにしたがって必要な保険金額は少なくなりますよね(子供が19歳の時に万が一のことがあった場合は1年分だけでいい)。収入保障保険は、常に最適な保険金額が設定されるために優秀な保険であるといった意見もあります。

生命保険の契約はメインの「主契約」にオプションの「特約」を追加できる

これまで紹介したように、生命保険は定期保険、終身保険、養老保険など特徴ごとにいくつかの種類に分かれます。

契約する際には、メインとする保障を「主契約」、オプションの性質を持った「特約」という保障を組み合わせて契約できます。

特約には、

  1. 死亡保障の上乗せ
  2. 不慮の事故死や後遺障害に備えるもの
  3. 医療保障が備えられるもの
  4. 上記に当てはまらないもの

といういくつかの種類があり、実際に生命保険を契約する際は「主契約」でカバーできない保障を「特約」で上乗せして契約します。

なお、主契約のみでの契約はできますが、特約のみの契約はできません。

生命保険の保険料の仕組み

生命保険の大まかな仕組みと種類がわかったところで保険料に焦点を当てていきましょう。保険料はいったいどのようにして決められるのでしょうか。

純保険料と付加保険料

まずは保険料の成り立ちから。私たちが支払っている保険料は、実は2種類に分かれます。ひとつは保険金に充てられるための純保険料、もうひとつは保険会社が継続するための資金に充てられる付加保険料です。つまり、私たちが支払っている保険料の全てが、保険金に充てられているわけではないのです。

そのお金を(増えるように)運用して、私たちに万が一のことがあった時のためのお金を用意する仕組みになっています。ですから保険料が預金のように積み立てられているわけではないのです。ある意味、私たちは保険会社にお金を貸しているようなものです。

予定率

保険料は「予定率」という数字をもとに算出されます。予定率とは予定死亡率・予定利率・予定事業費率の3種に大別されます(参考:生命保険文化センター)。

予定死亡率

保険金の支払いに充てるのにいくらのお金が必要なのかを計算する際に使う数字です。過去の統計データから、性別・年齢別の死亡者(生存者)数を予測したものを死亡率と呼び、将来かかるであろう保険金を計算する際に用いるものを予定死亡率といいます。

予定利率

予定利率は、簡単に言うと「運用した結果、どれだけお金を増やせるか」という予想です。予定利率が高ければ高いほど保険料は安くなり、低ければ低いほど保険料は高くなります。

1980年代のバブル期では予定利率が高く、当時に契約された終身保険では「逆ざや」という現象が起きているものもあるようです。逆ざやとは、予想よりもお金が増えずに保険会社が損をしてしまうことです。

予想よりもお金が増えていなくても、被保険者には事前に計算した通りのお金を用意しなければいけませんから損をしてしまうのです。

予定事業費率

保険会社が事業活動を行うにあたってかかる費用の予測です。保険契約を結ぶ際の人件費、それを維持・管理する費用などが見込まれています。

配当金

保険商品を見て「配当あり」や「無配当」といった記載を見たことはあるでしょうか。配当とは配当金のことで、保険会社が事業活動を行った結果、思ったよりもお金が余った場合に配られます。無配当はそれがないということです。

以上をまとめると、保険料は3つの予定率をもとに計算され、純保険料と付加保険料に大別されるということですね。

解約返戻金の仕組み

上でちらっと触れた解約返戻金。中途解約をしてもお金が戻ってくるというものでしたね。ここでは解約返戻金について詳しく見ていきましょう。

解約返戻金の型

解約返戻金の型は以下の2つになります。

従来型

ごく普通に、解約返戻金がついていますよと謳われているのはこちら。返戻率という数字によって、どれくらい戻ってくるのかがわかります。例えば返戻率が80%で払込保険料総額が1,000万円であれば、中途解約をした際に800万円のお金が戻ってきます。

返戻率は保険商品ごとに異なります。解約返戻金に期待するなら契約前に必ず確認しましょう。

低解約返戻型

返戻率を従来型よりも低くし(7割程度)、同時に保険料も安くしたものです。保険期間中は解約返戻金が少なく、保険料を払い終えた時点で返戻率があがる仕組みになっています。例えば以下のようになります。

【払込満了イメージ】
保険商品:低解約返戻型の終身保険
契約内容:35歳男性 保険金額1,000万円 60歳満了

月払い保険料:23,180円
保険料払込期間:25年
払い込み総額:約700万円
満了時の解約返戻金:約773万円

上の契約では払込み満了時の解約返戻金は約773万円、払込み総額は約700万円です。解約をしなかった場合、解約返戻金は増え続けます。その後は、被保険者の死亡時は1,000万円が(死亡保険金)、解約したらその時点での返戻率で解約返戻金を受け取れます。

一見お得なように感じますが、見直しがしにくいといったデメリットもあります。「何年目までに他にいいものを見つけたら保険の見直しをする」といった目安を設けた方がいいでしょう。

貯蓄として期待できる

解約返戻金は貯蓄の代わりにもなります。つまり解約返戻金つきの保険は万が一に備えつつ貯蓄もできる保険です。解約返戻金は預貯金のように自由な引き出しができないので、使い勝手は良くないですが、強制的に貯めることができます。ただし、返戻率が高くない状態で解約しても損をするだけですので注意が必要です。

解約返戻金のある保険

解約返戻金のある保険は主に以下の3種類です。

終身保険

終身保険では解約返戻金を貯蓄として利用し、解約して得たお金を老後の資金にまわすといった方法もあります。特約の多い保険では解約返戻金が少なくなることもあるようですので、要チェックです。

養老保険

養老保険は「生死混合保険」でしたね。養老保険はとても貯蓄性の高い保険で、ある程度の期間(10年や15年など)支払い続けていればほとんどのお金が戻ってきます(ただし加入前に返戻率のチェックは忘れずに!)

学資保険

学資保険は生命保険の種類には登場しませんでしたね。養老保険と似たような保険と捉えるとわかりやすいです。子供に対して将来必要になる学習費用を補填するための保険です。学資保険は返戻率が高く、満期保険金に期待して加入する場合がほとんどでしょう。

解約返戻金のない(あっても少ない)保険

解約返戻金の少ない保険は以下の2種類です。

定期保険

定期保険は掛け捨て型の保険で、解約返戻金はほとんどありません。あったとしても少額なので、貯蓄性はほぼゼロです。保障期間の長い長期定期保険は解約返戻金がありますが、一定の年数が経過すると少なくなります。解約返戻金はあまり期待できない、と考えておきましょう。

収入保障保険

こちらも定期保険と同様、解約返戻金はついていないものがほとんどです。収入保障保険は三角の保険で必要な金額だけを得られるといった特徴があります。それを考えると「お金を積み立てる」保険ではないことがわかります。

まとめ

みなさんが気になっていた疑問は解決できたでしょうか?生命保険の始まり、保険料を決める仕組み、解約返戻金など。生命保険は実はとてもシンプルにつくられているのです。

仕組みが理解できると、見える世界が変わってきます。盛りだくさんの特約に惑わされずに、本当に必要な部分だけを選び取る目を養いましょう。

※2022年2月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以