生命保険とは|仕組み・加入目的・保障内容・必要性をわかりやすく解説
2022年2月15日
生命保険に入るべきか悩んでいるものの、生命保険に入る目的や保障内容などがわからず困っている人もいるでしょう。この記事では、生命保険に加入する目的や役割、保障内容、生命保険への加入の必要性を判断する基準をお伝えします。
生命保険(せいめいほけん)とは、人が亡くなったり病気にかかったりした際の生活保障を目的とするものです。被保険者が死亡または病気になった際に保険金が支払われます。
生命保険の主な種類としては死亡保険、医療保険、がん保険、学資保険などがありますが、いずれにしてもなんらかの病気やケガに対するリスクに備えるものだとお考えいただくとよいでしょう。
「生命保険に加入したほうがいいよ!」などと知人にすすめられたり、保険会社のセールスから声をかけられたりしたことがある方もいるかもしれません。もしかしたら、親に言われるまま、知人に言われるまま、加入した方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、保障内容がよくわからない状態で保険料を払い続けるのはもったいないことです。そこで今回は『生命保険とは何か?』ということを、基本的な仕組みからその種類まで、生命保険の全体像をつかめるように解説します。
生命保険とは|加入する目的とその仕組み
生命保険に加入する目的をきちんと把握せずに契約してしまうと、万が一のときに保険金が少なすぎて役に立たなかったり、毎月の保険料を払うのが大変になったりします。そこで仕組みを併せて理解すると保険とは本来どういうものなのかがわかります。ぜひご覧ください。
生命保険に加入する目的
生命保険に入る目的は、収入の柱になっている人に万が一のことがあったときに、ご家族が安定して生活できるようにすることです。
もし、ご主人様一人の収入でご家族の生計を立てている場合、ご主人様に万が一のことがあったら大変です。収入が0になってしまい、ご家族が路頭に迷うことになるからです。
生命保険に加入しておくことで、万が一働けなくなったとしてもお金が入るので、ご家族が生活していけるようになります。『万が一のときにでも生活していけること』これが生命保険に加入する目的です。
ただし、万が一のときの保険金の額を増やすために、月々の保険料を増やしすぎてしまうことには注意してください。日々の生活が圧迫されてしまいますし、最悪の場合、お金が足りず解約せざるを得ないケースが発生するからです。
生命保険の仕組みとは
生命保険は、お互いに助け合うという意味の相互扶助(そうごふじょ)の精神が基礎として成り立っています。
大きな財布の中に皆でお金を入れていき、いざというときにはそこからお金を出します。皆で大きな財布を共有しているイメージをするとわかりやすいでしょう。つまり、自分の支払う保険料は、自分のためでもあり、誰かのためのお金でもあります。
ちなみに、生命保険の仕組みを最初につくったのは、『ギルド』という、中世ヨーロッパ時代に存在した集団だと言われています。
この集団は同じ職業の人たちの集まりで、皆で少しずつお金を出し合い共有資産とし、誰かが起業したいときの資本金、病気になったときの治療費などはこの共有資産の中から支払っていました。これが生命保険の始まりです。
生命保険の6つの種類と主な特徴
ここまでは生命保険の目的と仕組みに触れましたが、続いては生命保険の払込期間や保障期間における種類について見ていきましょう。生命保険は一般的に
- がん保険
- 学資保険
- 個人年金保険
- 定期保険・終身保険
- 養老保険
- 収入保障保険
上記の6種に大別されます。
種類1:がん保険
がん保険はがんに特化した保険であり、がん診断給付金やがん入院給付金、がん手術給付金などがんになったときにかかるあらゆる出費に対応していることが特徴です。
種類2:学資保険
学資保険とは、子供の養育・教育費の補助を目的とした保険です。あらかじめ設定した満期時には満期金、入学時には入学祝金などが受け取れ、子供の医療保障や親が亡くなった場合の保障も追加できます。
種類3:個人年金保険
個人年金保険とは、保険料を積み立て、60歳や65歳などあらかじめ設定した年齢になると、年金形式または一括で年金を受け取れる保険のことです。老後の備えとして近年注目が高まってきています。
種類4:定期保険・終身保険
定期保険
定期保険は10年ごとや20年ごとなど、定期的に更新(または乗り換え・解約)をする生命保険です。定期保険の特徴は、若い時期には保険料が安く、年齢を重ねるごとに高くなっていくことです。
保険料は死亡する確率に基づいて決められます。その確率は年齢が上がるにしたがって上がりますから、年を取るごとに保険料は高くなります。
もう1つの特徴は、見直しがしやすいことです。見直しとは、ライフスタイルの変化に合わせて保険の内容を変更することです。ライフスタイルは変わらなくとも、より条件のいい保険商品を見つけたときに乗り換えやすいといったメリットもあります。
終身保険
終身保険は、保障が一生涯つづく生命保険です。60歳まで、65歳まで、または一生涯など保険料の払込期間は自分で選択できます。払込期間というのは、保険料を払う期間のことで、保険期間とは異なるので注意が必要です。
支払う期間が短ければ月々の負担は重くなります。しかし、終身保険の場合は早めに払い終えることで、一生涯の保障を早い段階で得ることも可能です。
終身保険の特徴として、契約時から保険料が一切上がらないことが挙げられます。これは資金計画がしやすくなるのがメリットですが、見直しがしにくいといったデメリットもあります。また定期保険よりも保険料が割高なので(特に若いとき)、加入するタイミングが肝心です。
養老保険
養老保険は、生存保険と死亡保険が混ざった生死混合保険という種類の保険です。貯蓄性が非常に高いのが特徴で、保険期間中に死亡した場合は死亡保険金が、満期(契約時に決めます)まで生存していた場合は満期保険金が支払われます。満期保険金の金額は死亡保険金と同額です。
利用方法は主に、老後の資金の確保です。万が一のときには死亡保険金を受け取れるため、死亡保障を用意しながら老後のための貯蓄ができます。貯蓄をするのが苦手な人に向いています。
収入保障保険
収入保障保険は通称『三角の保険』といわれています。今まで紹介した保険は保険金が契約時から終了まで一定でしたが、収入保障保険は、保険期間が経過するごとに保険金額が減少していきます。
収入保障保険は、死亡・高度障害状態になったら、保険金を毎月または毎年受け取る保険です(一括受け取りも可能です)。
年間あたりの受け取り保険金額は決まっており、被保険者に万が一のことがあったら、残りの保険期間×年間あたりの受け取り保険金額が支払い総額となります。ここで注意したいのが、満期日に近づくにつれて受け取り年数が減っていくために、保険金額も減るという点です。
一見、損をするように感じるかもしれませんが、そうではありません。例えば、子供が成人を迎えるまでに親に万が一のことがあった場合、親として子供の養育費を残しておきたいと考えますよね。必要なお金を計算しようとすると『子供が成人するまであと何年か』によって計算結果が変わります。
成人まであと8年であれば8年分の養育費が、10年であれば10年分の養育費が必要です。収入保障保険はそれに対応するように受け取れる保険金総額が変わるため、ムダのない保険であるといわれています。
就業不能保険
就業不能保険とは、保険加入者が病気やケガをしてしまい長期にわたり働くことができない場合に、治療費や生活費のサポートをしてくれる保険のことです。個人事業を営む方には特に重宝する保険ですが、精神疾患には対応していません。
生命保険の2つの保障内容
生命保険と聞いたときに浮かぶイメージはおそらく、『被保険者が死亡したら遺族にお金が支払われる』といったものでしょう。半分正解です。これは生命保険の中では『死亡保険』と呼ばれます。
一方で、医療保険やがん保険など、病気やケガに備える保険もあります。病気やケガで入院、手術、通院をしたときや、がんと診断されたときに給付金を受け取れる保険です。家族のためには医療保険、自分のためには医療保険を検討しましょう。
保障内容1:死亡保障(死亡保険)
死亡保険とは、万が一、被保険者が亡くなった場合に、家族の今後の生活費や子供の学費などを保障してくれるものです。高度障害状態になったときにも保険金を受け取れます。
保障内容2:医療保障(医療保険)
医療保険とは、被保険者が病気やケガをしたときにかかる治療費の負担軽減のために作られた保険です。通院時、入院時、手術時など、保険金が受けとれるタイミングは希望に応じて設定できます。
生命保険の保険金と保険期間・保険料について
生命保険の保険金と保険料とは
生命保険を理解するのに欠かせないのは『保険金』と『保険料』です。字面はとても似ていますが意味合いは全然違います。保険金は、保険会社が私たちに支払うお金です。保険料は、私たちが保険会社に支払うお金です。
この違いはしっかりと覚えておきましょう。保険金はもらうもの、保険料は払うもの、です。大きな財布の例えでいえば、財布から出すお金が保険金で、財布に入れるお金が保険料です。実質的には同じお金ですが、役割が違うのです。
生命保険料はどのようにして決まるのか?
つづいては保険料の仕組みを見ていきましょう。私たちの支払う保険料は、『予定率』という数字を使って計算されます。予定率は、『予定死亡率』『予定利率』『予定事業費率』の3種類の確率の総称です。それぞれの詳細を以下で見ていきましょう。(参考:生命保険文化センター)
決定要因1:予定死亡率
保険金を滞りなく支払うために、どれくらいのお金が必要かを計算するときに使います。性別・年齢別の死亡者(生存者)数の過去の統計データから予測します。
決定要因2:予定利率
予定利率はざっくりいうと『今後、運用してどれだけお金を増やそうか』という予想です。予定利率が高ければ保険料は安くなり、低ければ反対に保険料は高くなります。運用して増やすことができるならば、集めるお金も少なくてよいのです。
バブル期(1980年代)のように予定利率が高かった時代に契約された終身保険では『逆ざや』のものもあるようです。逆ざやとは、予定利率よりもお金が増えなかったため、保険会社が損をしてしまう現象です。
予定よりも多く増えれば、運用益は保険会社のものになりますが、反対であれば、保険料だけでは足りない分を保険会社が負担しなければなりません。
決定要因3:予定事業費率
予定事業費率とは、保険会社が事業活動をするために、いくらくらいの費用がかかるのか、といった予測です。保険契約を結ぶ際の人件費、それを維持・管理する費用などが見込まれています。
生命保険の保険期間
次におさえたいのは生命保険の保険期間です。保険期間とは、保険会社と契約を結んでから契約が終了するまでの期間のことです。期間は10年や20年、または一生涯など、保険の種類によって異なります。
生命保険に加入する場合はどれくらいの期間、保障が継続して欲しいのかを考えましょう。例えば貯金ができるまでなのか、一生涯なのか、人それぞれですが自分の目的に合うように設定することが大切です。
純保険料|付加保険料
私たちの支払う保険料は『純保険料』と『付加保険料』の2種類に分かれます。純保険料は、将来支払う保険金にあてるためのお金で、付加保険料は保険会社が存続するための費用にあてるお金です。
純保険料だけでは保険会社の従業員や諸々の諸費用をまかなうことはできませんから、付加保険料が必要になります。
配当金
配当金は簡単にいうと、保険会社が予想よりもお金が増えた場合に加入者に配られるお金です。生命保険の商品を探していると、『配当あり』や『無配当』といった記載を見かけますが、これは保険会社の余剰金(加入者から預かった保険料から保険金と事業経費などを差し引いてあまったお金)が、自分の手元に配られるか配られないかの違いです。
解約返戻金
解約返戻金は、保険を途中で解約した場合に戻ってくるお金のことです。定期保険や収入保障保険は解約返戻金のないものがほとんどですが、終身保険や学資保険、養老保険など、貯蓄性の高い保険においては解約返戻金があります。
いくら戻るのかを示す数値を『返戻率』と呼び、70%や80%など、パーセンテージで表します。実際いくら戻ってくるかは加入している保険の種類、保障内容によって変わります。貯蓄性のある保険に加入する際は必ず確認しましょう。
生命保険には『見直し』がある
『生命保険は基本的に見直すもの』、これは必ず覚えておきましょう。生命保険は一度加入したら放っておいてもOK!ではありません。保険金や保険料、保険期間の見直しが必要です。なぜならライフスタイルが変わらないことはあり得ないからです。
例えば学校を卒業して社会人になり、パートナーと出会い、結婚、子供ができて、やがては退職をします。それぞれのライフスタイルで、常に同じ内容の保険に入っていては意味がありません。とくに子供がいる場合は養育費がかかりますから、放置していて、いざというときに保険金が足りなかった!ということにもなりかねません。
また反対に、必要以上に保険金額を高くしていた場合、ムダに高い保険料を納めることにもつながります。そういった事態を避けるためにもライフスタイルに合わせて『生命保険は基本的に見直すもの』ということを覚えておきましょう。
生命保険の必要性を判断するポイント
次に、生命保険は本当に必要なのかどうかを考えてみましょう。
ポイント1:生命保険への加入率
下図は『平成以降の生命保険加入率の推移』です。調査対象が2名以上の世帯のため、独身の方を含めるともう少し加入率は下がると考えられますが、およそ8割~9割の方が生命保険に加入しています。
参考:生命保険文化センター
年代別の生命保険加入率
参考:生命保険文化センター
これは令和3年度の生命保険加入率ですが、年代別で見てみると、30~34歳、40歳~69歳までの年代で90%以上の加入率です。おもな理由として考えられるのは、子供が産まれて定年退職をするまでの間は、生命保険の必要性があるためです。
ポイント2:生命保険の必要性の高さ
生命保険の必要性が高いケース
お金を残したい相手がいる | 死亡保険の保険金が支払われるのは、被保険者が死亡したときや高度障害状態になったときです。お金を残したい人がいるかどうかが、まずは大きな判断ポイントになるでしょう。 |
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貯金が苦手 | 預貯金はいつでもお金を引き出せるために、自由度が高く、使ってしまいがちです。その点、保険であれば簡単に引き出すことはできないので強制的に貯蓄ができます。 |
一時的に保障が欲しい | 「一時的に保障が欲しい」といった場合にも生命保険は活用できます。保険の種類の中では定期保険が向いています。終身保険は、契約以降は保険料が変動しないため、資金計画がしやすいというメリットがあります。 |
今後の生活がとにかく不安 | 保険は万が一に備えるためのものです。仕事上危険な現場が多い、今後どのような病気にかかるかわからないという不安が大きい方は保険への加入がおすすめです。 |
生命保険の必要性が低いケース
お金を残す人がいない | 扶養している家族がいないなど、お金を残す人がいない場合は死亡保険に加入する必要はありません。ただし、医療保険は必要に応じて加入を検討してください。 |
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貯蓄が充分にある | 貯蓄が充分にある方は、わざわざ生命保険に加入する必要はないでしょう。 |
まだ若く独身である | 例えば、20代で独身の世帯であれば生命保険に加入する必要はないでしょう。結婚や出産など、ライフスタイルが変わったときに検討してください。 |
必要性を感じない | これは当たり前かもしれませんが、必要性を感じていない場合にはわざわざ加入することはありません。 |
生命保険の選び方で参考になるポイント
定期保険を選ぶとよい人 | 見直しをしながら保険を活用したい方、これから貯金をするつもりの方、まだ保険に加入するかどうか迷っている方 |
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終身保険を選ぶとよい人 | 長期的な資金計画を立てたい方、万が一に備えつつ貯蓄もちゃんとしたい方 |
養老保険・個人年金保険を選ぶとよい人 | 確実に貯蓄をしたい方、老後のためにお金を用意しておきたい方 |
収入保障保険を選ぶとよい人 | 長期的に保険金を受け取りたい方、遺族を支えるためのお金を残したい方 |
まとめ
いかがでしたか?
生命保険の歴史から考えると、『万が一に備える』といった目的が第一で、金融商品のような使い方はその応用といえます。これから加入する方も、なんとなく加入している方も、自分にとって、生命保険がどのような役割を果たすのかイメージを固めていきましょう。
生命保険を考えている人は本記事に書かれていることに加えて細かいことまで把握しておくと、契約時に有利に保障内容を決められ、後々に損することが減るでしょう。必要な特約だけをつけて保険料を節約したり、積み立て型の保険を利用してうまく老後の貯金ができたりするからです。
細かいことに関して、以下の記事にて記載しておりますので、ぜひご覧ください。
※2022年2月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以