先進医療特約とは|保険と先進医療の関係性や必要性を徹底解説

2023年11月30日

先進医療特約とは、先進医療と言われる最先端の医療技術を受けた際に発生する高額な医療費を負担してくれる特約を指します。先進医療を受ける方はごく少数と言われており、本当に必要なのか詳しく解説していきます。

保険に加入する際には先進医療特約を付けられます。もしかしたらあなたも「先進医療を利用した際には300万円の自己負担がかかる」と聞いたことがあるかもしれません。しかし、高額な先進医療を利用している人はわずかなので、必要性があるのかないのか判断に困るところではあります。

そもそも先進医療とは、最新の医療技術のうち保険の適用を検討されている段階のものを言います。令和5年2月1日時点で86種類の技術が先進医療として認められていますが、その全てが高額なわけではありません。

今回は、厚生労働省などのデータを参考に、実際はどのぐらいの人が先進医療を利用しているのかをご紹介し、特約を付けるかどうやって判断したらいいのかについて解説していきます。

先進医療と先進医療特約の概要

こちらではまず、先進医療と先進医療特約の概要について述べます。

先進医療とは

安全性は高いがまだ健康保険の適用対象になっていない最新鋭の医療技術を「先進医療」と言い、特定の大学病院などで研究・開発され、実施されている医療技術のうち、医療行為自体は厚生労働省からも承認されたものを指します。(参考:「厚生労働省|先進医療の概要について」)

先進医療の費用は全額自己負担

先進医療を受けた時の費用は、患者が全額自己負担することになります。先進医療でかかる費用は、医療の種類や病院によって異なり、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。

例えば、総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用が20万円だった場合、先進医療でかかる費用20万円は、全額患者が負担することになります。

先進医療はどれくらい費用がかかるのか

先進医療のうち、特に有名なのががん治療で用いられる技術です。

長寿化した現在、日本人の2人に1人は一生のうちにがんになると言われており、がん治療に関して新しい治療技術が開発されています。今回は、がん治療に使われる陽子線治療(※1)と重粒子線治療(※2)について見ていきます。

(※1)陽子線治療
陽子は水素という最も軽い元素の原子核で、それを加速したものが陽子線です。陽子線は重粒子線(正確には炭素イオン線)と同様に、元素の原子核を加速したもので、放射線の一種です。
(引用元:国立がん研究センター東病院

(※2)重粒子線治療
炭素イオンを、加速器で光速の約70%まで加速し、がん病巣に狙いを絞って照射する放射線治療法です。
(引用元:九州国際重粒子がん治療センター

陽子線治療と重粒子治療にかかる治療費

両治療には1件あたりいくらかかるのかを見ていきましょう。

先進医療 1件あたりの費用(円) 平均入院期間(日) 年間実施件数
陽子線治療 2,649,978 15.7 1,285
重粒子線治療 3,186,609 5.2 683

参照:厚生労働省|令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用

陽子線治療は約265万円、重粒子線治療は約319万円の費用が発生し、その全てが自己負担です。

実際に陽子線治療と重粒子治療を受けている人は少ない

陽子線治療、重粒子線治療が高額であることはお伝えしたとおりですが、正直に申し上げますとこの治療を受けている人はごく一部に過ぎません。

国立がん研究センターの『最新がん統計』によると、2019年にがんと診断されたのは999,075例です。これに対し、陽子線治療と重粒子線治療の年間実施件数は両方合わせても2,000件程度しかありません。

よって、陽子線治療もしくは重粒子線治療を受けた人は全体の0.2%(500人に1人)しかいないことが分かります。

ただし、もしその500人に1人になった時に先進医療特約を付けていなければ、約300万円の自己負担を課せられることになります。

診察料・入院料・投薬料などは健康保険が適用される

先進医療を受ける場合は保険適用外ですが、診察や検査、投薬、入院に関しては適用範囲内となります。

そのため、こうした費用は通常のように全額ではなく3割負担となります。こちらは多くの方が誤解しやすいポイントです。

先進医療特約とは

お伝えした先進医療を受けた際に、保険会社から給付金を受け取れるのが先進医療特約です。医療保険やがん保険に付帯できます。

ほとんどの先進医療特約は先進医療技術費用と同額の保障をしてくれるため、この特約を付けていれば金銭面を負担に感じることなく安心して治療できるということですね。

保障の上限額は、1,000万円や2,000万円など高額に設定されている契約が多いです。

保険会社によって先進医療特約の保障内容は異なるので、いくつか比較をしながら自分に合ったものを探しましょう。

先進医療特約が必要な理由と不要な理由

先進医療特約に関しては必要という意見と不要という意見がありますから、ここで一度整理しておきましょう。

必要な理由

月々60~100円程度で安心を買えるから

先進医療を利用して保険金を受け取る可能性が少ない分、月額保険料はかなり安くなっています。

仮に特約部分の月額保険料が100円で30歳から80歳まで加入したとしても、トータルで6万円しかかかりません。

先進医療の費用は自己負担だから

公的医療保険には高額療養費制度があって、月の医療費負担が一定額を超える分を国に保障してもらえますが、先進医療費に対しては適用されません。そのため、貯金か先進医療特約でまかなうしかありません。

参考:「高額療養費制度を利用される皆さまへ

不要な理由

利用する可能性が低いから

何度か触れたように、がんの治療に使われる高額な先進医療である陽子線治療と重粒子線治療を利用する人は、がん患者数全体の0.2%です。

500人いたら1人しか利用しないものに保険料をかける必要はないと考える人がいるのも不思議ではありません。確率で考えるのであれば、特約を付けないのもアリでしょう。

先進医療特約を付けるべきか迷った際に考えること

結局のところ、先進医療特約を付けるかどうかは各々の価値観で決めるべきではありますが、それで解決すればわざわざ検索して調べませんよね。

そこで、最後に先進医療特約を付けるか否かの判断基準をいくつかお伝えします。

先進医療で高額の自己負担が発生する可能性があるかどうか

「500人に1しか高額な先進医療を使っていない」と考えるか「500人に1人も先進医療を使っている」と考えるかの違いが大きいです。

0.2%という数字を可能性があると捉えている人は加入すればいいですし、自分は大丈夫だろうと思っている人は加入しなくていいでしょう。

安心を得たいかどうか

がんになって先進医療を受けているところを想像してみてください。300万円の医療費請求をされる可能性を考えて、不安に思う人は特約を付ければ安心を買ったと言えます。

がん家系かどうか

先進医療のうち高額なものはがんの治療に使われるものですから、がんになりやすいと思われる人は特約を付けることをおすすめします。

しかし、がんに対しての心配があるのなら、まずはがん保険から検討をしましょう。がん保険はがんに特化した保険で、がんになった場合に手厚い保障を受けられます。

50代に近づいているか

確率で考えれば、がんの罹患リスクが高まるのは50代以降です。

それより年齢を重ねれば重ねるほどリスクが上がり、陽子線治療や重粒子線治療を利用する可能性も高まります。若い年代に比べ50代前後の人やそれ以降の人ほど、先進医療特約の利用可能性も高くなると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。先進医療特約は利用する可能性が低いですが、その代わり毎月の保険料は60~100円程度に収まっています。

FPや保険代理店などに保険の相談をする際は、実際に先進医療特約を利用して保険金を受け取った人はどのぐらいいるのか、特約を付けている人(付けていない人)はなぜそうしているのかなどを確認しておくとより納得の行く決断ができるでしょう。

※2023年4月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以