「生命保険に入らない」から考える保険との正しい付き合い方

2022年5月17日

あなたが生命保険に入ることを考えるタイミングはいつですか?新社会人になった時でしょうか?結婚を考えた時でしょうか?子供が生まれた時でしょうか?入院や老後が心配になってきた時でしょうか?

生命保険を考えるタイミングは人それぞれですが、誰もが生命保険のCMや保険営業マンの話、友人・家族の加入の話などを聞くと「自分もそろそろ」と、考えるかと思います。

世界的に見ても日本は生命保険大国と言われており、国民の8割ほどが生命保険に入っています。そこで今回は、少し見方を変えて「生命保険に入らないこと」を前提とした保険との付き合い方を少し考えてみましょう。

「生命保険に入らない」ことを前提に考えてみる

まず、冒頭でもお伝えしましたが、日本での生命保険の加入率は8割ほどです。これから保険の加入を考えている若い方にとっては、驚きの数字ではないでしょうか。

それほど当たり前になっている生命保険の加入ですが「入らないとどうなるのか?」が今回のテーマです。「ある程度したら生命保険に入ることが当たり前だ」と、思い込んでいませんか?「生命保険に入らない」ことを前提に生命保険について考えてみましょう。

生命保険に入るかどうかは個人の自由

様々な商品が販売され、ライフステージによってもかなりの選択肢がある生命保険。結論から言いますと、生命保険に入る義務はありません。一方で、自賠責保険など加入義務が生じる保険もあります。

本来、生命保険に入る義務はないのに、それでも「保険には入っておかないとな~」と漠然と考えている方は、各保険会社の戦略に乗せられているのではないかとも言えます。本当に必要かどうかを見極めたうえで、加入を検討しましょう。

生命保険の加入について考えるタイミング

人生の節目節目では、生命保険の加入を考えるタイミングが出てきます。この記事を読んでいるということは、あなたも以下のいずれかのタイミングで生命保険の加入を考えたのではないでしょうか。

就職のタイミング

学校を卒業し、社会人としてお給料をもらうことになったタイミングで生命保険を考える方は多いです。「生命保険加入は社会人なら当たり前」という認識を持っている人も少なくありません。

結婚のタイミング

結婚をして配偶者ができるタイミングで生命保険の加入を考える人も多いようです。とくに相手が専業主婦(主夫)になる場合は、自分に万が一のことがあると心配ですよね。

出産のタイミング

子供が生まれるタイミングで保険の加入や追加を考える人は多いです。やはり、子供ができると将来の教育費を準備したいと考えます。万が一のことがあり、子供にしっかりとした教育を受けさせることができない、という事態を考えると保険で備えておきたいですよね。

マイホーム購入のタイミング

マイホームを購入する時は、住宅ローンを組む方が大半です。ローンを組む際は、通常、団体信用生命保険に加入することになります。住宅ローンに保険を付けられるため、任意で入っている保険については、保障額を減らすなど見直しをする方が多いです。

子供の独立のタイミング

子供が大きくなり独立をすると、子供のための生活費や教育費は不要になります。そのため「もう生命保険に入らなくてもいいのでは?」と考える人が多いです。

定年退職のタイミング

定年退職の時期を迎えると、高額な死亡保障などは必要ないと考える人も多いです。

生命保険に入らないことで考えられるデメリット

それでは、なぜ多くの人は生命保険に入るのでしょうか?ここでは、生命保険に加入しないデメリットをお伝えしていきます。

万が一の時に遺族が金銭面で困る

生命保険のそもそもの役割は、死亡時の保障です。一家の大黒柱が生命保険に入っていないまま亡くなってしまうと、遺族は経済的に困窮してしまうかもしれません。残された配偶者が稼ぐと言っても、大きな負担をかけてしまいます。

病気やケガの治療費で家計が圧迫される

病気やケガに備える保険に加入していないと、入院、手術、通院をしたときに出費がかさんでしまいます。貯蓄でカバーできればいいのですが、心配な方は保険で備えておかないと苦労するかもしれません。

また、会社員は働けない期間があっても傷病手当金を受給できますが、自営業者は傷病手当金がないため、入院期間中は収入がなくなります。

不安に悩まされる

生命保険に入っていないと、身近な方が病気になったり、ニュースで芸能人が亡くなったりしたのを見て不安になってしまう方もいるでしょう。

生命保険は言い換えると、安心をお金で買うようなものです。生命保険に入らないという選択は、今後身の回りで悪いこと(病気・ケガ・事故など)が起きても、揺るがない精神力か十分なを持っている必要があります。

生命保険に入らなくてもいい理由

上記のように、生命保険に入らないデメリットを見ていくと、保険の必要性を感じてしまいます。しかし、生命保険に入らなくてもいい理由は存在します。

ここでは少し視点を変えて、保険の種類ごとに生命保険に入らなくてもいい理由をまとめてみました。言い換えると、その生命保険のデメリットです。保険のことを調べてみると、どうしても保険のいい所ばかりが強調されますが、そうではないということを念頭に考えてみましょう。

生命保険(終身保険)

終身タイプの生命保険はその保障が一生涯続きます。ほとんどが死亡保障になっており、一定期間保険料を払い終えると、死亡時の保険金はそれまで払い込んだ保険料を上回ります。人は誰しも死亡してしまうので、必要性を感じる方も多いでしょう。

しかし、よくよく考えてみると老齢期に高額な保険金を配偶者に残しても、必要性があまりないと考えられます。

お子様に保険金を残そうとしても70代や80代で死亡したとすれば、お子様ももちろん成人していて、経済的に自立をしているでしょう。大きな保険金が入ってくればありがたいのですが、絶対的に必要なお金ではありませんよね。

医療保険

病気やケガで入院・手術をした際に保障される医療保険。加入していると安心ですが、そもそも日本には高額療養費制度があります。高額療養費制度とは、その月の1日から末日までの間に支払った医療費が自己負担上限額を超えていると、申請することで払いすぎたお金が戻ってくる制度です。

この制度により、1ヶ月の医療費が数十万、数百万円になる恐れはありません。

ある程度の貯蓄のある方なら、貯蓄と高額療養費制度だけでカバーできる可能性があります。

個人年金保険

公的な年金とは別に年金を受け取るため、個人で加入する個人年金保険は、公的年金制度に不安が見られる現在において非常に頼もしい存在です。しかし、一方で入らなくていい理由もあります。

個人年金保険には「長期の積み立てが必要」「早く亡くなると損をする場合がある」「インフレに弱い」などデメリットがあります。それだったら、自分で貯金していたほうがいいと考える人も多いのです。

入らないほうがいい生命保険の種類

上記の内容をまとめると、生命保険に入ったほうがいい理由と入らなくてもいい理由が均衡しています。つまり、生命保険に入るかどうかはあなた次第とも言えます。しかし、以下でご紹介する保険の種類はおすすめできない生命保険です。

パッケージ商品

保険のパッケージ商品とは、様々な特約がセットで付いた保険商品です。どのような状態になっても保障される可能性がありますので、とても頼もしい保険に感じるかもしれません。

しかし、冷静になってみると不要な特約が多いのです。携帯電話の料金をイメージすると分かりやすいのですが、何の役に立つのか分からないサポート機能などで月々数百円多く払っている状態と言えます。

不要な特約が付いた保険は、ただ単に多く保険料を払っているだけです。何の保障が付いているのかよく分からない商品には気を付けましょう。

複雑な内容の保険

保険商品は利用者のニーズに応えたり、オリジナル性を出したりするために、様々な形で販売されています。そのどれにも言えることが、複雑すぎてぱっと見ただけでは仕組みを理解できない商品がよくあります。仕組みを十分理解できない状態での加入は、契約者が損をしてしまうことが往々にしてあるため、納得していないのであればその保険には入らないようにしましょう。

生命保険に入る・入らないの判断基準

それでは、生命保険に入るか入らないかの判断基準をこちらでまとめてみます。

「なんとなく入る」は危険

「生命保険になんとなく入る」という行為は非常に危ないのでやめてください。大抵の方が、途中で保険を見直してしまうか、解約してしまうか、保険料を払っただけになって損をすることが多いです。

あなた自身で生命保険の必要性を見い出せていないのであれば、そもそも生命保険には入らなくてもかまいません。

ご自身の貯金額

生命保険に入る理由がしっかりしている方でも、これからお伝えする内容を元に生命保険に入るか入らないかを決めてください。

まず、一番分かりやすい判断項目として、「ご自身の貯蓄額」です。保険はそもそも万一の時の金銭的な保障をする商品です。もしもの事態になっても、手元にある貯金で乗り切れるのであれば、わざわざ生命保険に入らなくてもかまいません。

具体的な金額は一概に言えませんが、おおよそ150万円以上の貯金がある方は、仮に明日入院したとしても医療費などは何とかできるでしょう。

扶養家族の有無

上記で、結婚や出産などのタイミングで保険を考える方も多いとお伝えしましたが、配偶者や子供がいる方は、何かしらの形で保険を考えてみてもいいと思います。

「結婚するなら保険くらい入っておかなくては」という先入観はなくすべきですが、結婚・出産により、自分にもしもの時が訪れたことを想定して、保障が必要であれば保険の加入を考えてみましょう

職業

一般的に会社員としてお勤めの方は、万が一ケガや病気で働くことができなくなっても、一定期間であれば傷病手当金でカバーできます。会社によっては、福利厚生もあるかもしれません。まずは、そちらの保障を確認してみて、十分であればわざわざ生命保険には入らなくてもいいでしょう

一方、自営業の方は会社員に比べるともしもの時の保障が少ないですし、ご自身が働けなくなってしまうと、収入もぱたりと止まってしまいます。そのような心配がある方は、何かしらの生命保険に加入しておくと安心です。

まとめ

いかがでしょうか。ある程度の年齢になれば、保険に入ることが当たり前のようになっていますが、当たり前だからと言って、考えなしに保険に入ってしまうことは危険です。保険の必要性が見い出せないのであれば、生命保険に入らないという選択もあります。

とは言っても、生命保険に入るべきかお悩み中の方は多いでしょう。「保険の営業マンに相談しても保険を売られそうだし・・」と警戒している方もいるかもしれません。そこで、生命保険に入るか入らないかはFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみることをおすすめします。

FPとは、生命保険をはじめとした資産運用のアドバイスをくれる専門家です。資産運用は生命保険が全てではありません。生命保険に入らなくても資産運用できる方法がありますので、一度FPに相談してみてはいかがでしょうか。

※2022年5月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以