民間医療保険と公的医療保険の違い|医療保険加入のポイント

2023年3月21日

民間医療保険(みんかんいりょうほけん)とは、その名の通り、民間の保険会社が販売している医療保険のことです。なぜ、わざわざ“民間”と付けられるのかと言うと、公的な医療保険が存在していて、それと区別するためです。

そうです。誰もが手にしたことはあるでしょう「健康保険証」による国民健康保険などです。そこで今回は民間医療保険と公的医療保険の違いや、そもそも公的医療保険があるのに民間医療保険に加入する必要性があるのかを詳しく記載していきます。

民間医療保険の加入を考えている方は一度目を通していただき、参考にしてもらえればと思います。

民間医療保険とは?

冒頭でもご説明したように民間医療保険(みんかんいりょうほけん)とは、民間の保険会社が販売する医療保険です。民間医療保険は各保険会社の“商品”なので、加入は任意です。

これに対して、国の“制度”として加入が義務付けられているものが、公的医療保険です。公的医療保険も民間医療保険も保険料は支払うことになりますが、それぞれにどのような違いがあるのか、どのような役割があるのかをもう少し細かく説明していきます。

民間医療保険と公的医療保険の違い

それでは、民間医療保険と公的医療保険の違いをご説明します。その前に民間医療保険と公的医療保険のそれぞれの特徴と役割を理解しましょう。

民間医療保険の特徴

民間医療保険の特徴は以下のようになっています。

加入は任意

何度かお伝えしていますが、民間医療保険は民間保険会社が販売する商品の一つです。商品を買うか買わないかは消費者次第ですので、民間医療保険の加入は任意です。

一方で、保険会社にも加入者を選ぶ権利があります。これはどういうことかと言うと、加入の条件が設けられているということです。例えば、「がんと診断されたからがん保険に加入したいです。」と言われて、全部OKにしていると保険の公平性が保てません。

がんと診断された人は、健康な人より保険金を受け取る可能性が高いので、同じ条件で加入できると健康な人が不公平に感じてしまいますよね。そこで、民間医療保険の加入には一定の加入条件があるのです。

保険料は加入者の年齢や保障内容で変動

民間医療保険の保険料は保険会社や商品によって様々です。ただ、おおよその保険料を決める要因としては、年齢と保障内容があります。年齢が上がるほど医療保険の必要性が高まるので、それに比例して保険料も上がります。また、保険商品の種類、つまり保障を手厚くすればするほど保険料が上がります。

申請によって保険金給付

民間医療保険は、例え病院に行ったからと言っても「はい。○○社の保険に入っていますね~。では、今回の医療費は免除されます。」と、言うことにはなりません。保険金給付の対象かを確認して、保険会社に申請することで後から保険金という形でお金を受け取ります。

民間医療保険の役割

このように任意加入となっている民間医療保険ですが、なぜ民間医療保険に加入するかを端的に言うと、安心を買うためです。後述しますが、公的医療保険は加入が義務になっており、それなりの保障はしてくれます。

しかし、その保障だけでは不安な場合に民間医療保険に加入するのです。民間医療保険は入院・通院・手術、さらには病気などによりその後仕事に支障が出るような場合に保障されます。全てが保障されるわけではありませんが、不安な部分を民間医療保険でカバーすることで、もしもそのような事態になった時も金銭面で困らないように加入するのです。

例えば、がんが心配な方の「がん保険」。入院した際の費用が心配な場合の「入院保険」。それぞれに特化した保険があります。ご説明の通り、民間医療保険は任意加入の“商品”なので、自分がほしい保障を付けて安心を手に入れます。

公的医療保険の特徴

一方で公的医療保険の特徴は以下のようになります。

加入は義務

日本では誰しもが医療保険に加入する義務があります。これを公的医療保険と言い、「健康保険」とも言われています。サラリーマンであれば、組合などの健康保険。公務員は共済組合の健康保険。自営業者は国民健康保険に加入します。健康保険に加入することで保険証が発行されます。

保険料は収入で変動

これら公的医療保険の保険料はどのように決まっているかと言うと、加入者の収入によって決まります。住民税や所得税などの税金と似たような感覚で、収入が上がれば支払う保険料も上がってきます。

そして、上記で加入が義務だとお伝えしたように「税金を納めたくない」からと言って、税金未納が許されないように、「公的医療保険料を払いたくない」からと言って、解約をすることはできません。

窓口で自己負担の軽減

健康保険の7割負担は、どこかで聞いたこともあるでしょう。公的医療保険は、上記のように発行された保険証を医療機関に提示することで、医療費の7割を健康保険組合に負担してもらえます。一部、公的医療保険対象外の先進医療や美容整形関係の医療などもあります。

公的医療保険の役割

このように加入が義務になっている公的医療保険ですが、なぜ加入が義務になっているかと言うと、国民が最低限の医療保障を受けられるようにするためです。

もし、この公的医療保険の加入が任意で7割負担がなかったとすると、例えば少し体の調子が悪くても「医療費が高いから我慢しよう」ということになり、結果的に病気の発見が遅れて、最悪死亡してしまうこともないとは言えません。国民の平均寿命が下がってしまうことが考えられます。

また、加入するかどうかを選択できるようになったら、病弱な人だけ加入する、病気になった時だけ加入することができ、健康保険制度が成り立たなくなってしまう恐れがあるためです。

民間医療保険と公的医療保険の違い

このように、民間医療保険と公的医療保険には違いがあります。簡単にまとめてみると以下のようになります。

民間医療保険 公的医療保険
加入の条件 加入は任意。条件あり 全国民に加入の義務
保険料 年齢・保障内容等で変動 収入で変動
給付方法 保険会社に申請して給付 医療機関で自己負担軽減
保険の役割 各個人(世帯)の保障の強化 全国民に最低限の医療保障

民間医療保険に加入するメリットデメリット

いかがでしょうか。民間医療保険と公的医療保険にはこのような違いがあります。ご説明のように民間医療保険の加入は任意です。「公的医療保険に加入しているならわざわざ加入する必要ないじゃないか?」と思う方もいるでしょう。

その通りです。民間医療保険に加入したくなければ加入しなければ良いだけです。ただ、民間医療保険には公的医療保険にはないメリットがありますし、それに反してデメリットもあります。それらを認識したうえで加入するか否かを決めましょう。

民間医療保険に加入するメリット

民間医療保険に加入するメリットは以下のようになっています。

ピンポイントで保障を手厚くできる

民間医療保険の種類は様々です。お伝えしているように、あなたの不安を解消するために保障を手厚くすることができます。ここで言うピンポイントとは、病気の種類と期間です。

例えば、「身近でがんの話を聞くからがん保険に入っておきたい」や「子供が成人するまでの20年間はもしもに備えて保障を厚くしておきたい」などがあります。加入者の要望に応じて保障を手厚くできる点はメリットです。

一生涯保障されるものもある

それでも病気やケガに対する不安は一生涯続くものです。そのような場合は保障が一生涯続く終身医療保険がおすすめです。保険料を長期間(主に60~65歳まで)払い込むと、その後も一生涯医療保障が付くので安心です。

さらには、それまで支払った保険料が満期保険金や返戻金として返ってくる保険もあるので、それまでの保険料を貯蓄するという性質もあります。

貯蓄性があるものもある

上記で、終身医療保険には貯蓄性があるものもあるとお伝えしましたが、保険の種類は大きく分けて「掛け捨て型」と「積み立て型」があります。この積み立て型保険には貯蓄の性能もあります。

ご説明のように、それまで支払った保険料が満期保険金や祝い金などとして戻ってくるのです。戻ってくる額が保険料支払総額を上回るには数十年の長期間を要しますが、この性質を利用して貯蓄をすることも可能です。

民間医療保険に加入するデメリット

民間医療保険に加入することで発生するデメリットは以下のようなものがあります。

保険料が発生する

当たり前のことなのですが、民間医療保険に加入すればそれに応じた保険料が生じます。いくら病気やケガに対する不安が大きくても、保険会社の商品が魅力的でも、医療保険に加入しすぎてしまうと月々の生活を圧迫しかねません。

民間医療保険に加入する際は、どのような保障が必要なのか?保険料はきちんと払い続けられるのか?をきちんと考えたうえで加入する必要があります。

保険金の支払条件の条件が厳しいことも

例えば「がん保険に加入したから、もうがんになっても大丈夫だ!」と、思うかもしれません。しかし、保険商品によっては保険金の支給条件が細かく決められているのです。がん保険では上皮内がんは、対象外となっている商品もあります。

また、一般的ながん保険には「契約後90日間は保険金の支払対象にならない」とった免責期間が設けられています。加入時にそれらの条件をきちんと確認していないと、いざ給付を受けようと思っても肩透かしを食らうかもしれません。

必要ないケースもある

民間医療保険は、不安を解消するために加入するとお伝えしました。ここで言う不安とは「病気にならないから問題ない!」という、根拠のないことではなくて、「仮に病気で入院したとしても今ある貯金で医療費や生活費は何とかできる」という、金銭的・現実的なことです。

ですので、そもそも貯蓄がそれなりにあって、金銭的不安が少ないのであれば、わざわざ民間医療保険に加入せずに、公的医療保険だけで十分かもしれません。

民間医療保険は必要なのか?|必要性を見極めるポイント

ここまで読んでいただいて「結局、民間の医療保険って必要なの?」と、思っている方は多いでしょう。率直に申し上げると、民間医療保険の必要性はあなたの状況によっては、「いる」とも「いらない」とも言えるため、一概にコレとは言いきれないのです。

しかし、民間医療保険の必要性を見分けるポイントはある程度あります。

貯蓄の有無

上記でもお伝えしていましたが、もしもあなたが明日病気やケガで入院したとしても、一ヶ月以上の医療費・生活費などが賄えるのであれば、医療保険の必要性は低いと言えます。

一方で、「万が一明日ケガしてしまって高額な医療費を請求されたら困る!」という方は、毎月の出費を少し見直して、数千円の安い掛け捨て型医療保険でも加入してみるといいかもしれません。

社会保障の充実度

病気やケガなどで入院することにより問題となることは、医療費だけではなく、その後一定期間仕事ができなくなり収入がストップしてしまうことです。会社員であれば傷病手当金を受給できるので、最長1年半は給与の3分の2相当のお金を受給できます。

しかし、自営業など国民健康保険に加入している方は傷病手当金の制度がありません。病気・ケガで入院したら、その日から収入が途絶えてしまう可能性があります。そうなった時の生活費を補填するためにも、民間医療保険の加入を検討してみましょう。

扶養家族の有無

あなたが一家の主で稼ぎ頭であれば、入院などで働けなくなってしまうと、子供の学費・生活費・家のローンなど様々な出費が重くのしかかってくることが予想されます。扶養家族のいる方は、家族の生活費をどうするか考えてみましょう。

病気の心配

病気に対する心配は人それぞれだとは思いますが、例えば昔から病気がちだったり、不摂生な生活をしていて、いつ病気になるか分からないような方は、医療保険に加入することで幾分か不安が解消されるかもしれません。

民間医療保険の種類

最後に、民間医療保険の種類をお伝えします。民間の医療保険とは言っても様々な種類があります。どのような保険があって、どのような場合に活躍するのかをきちんと把握しておきましょう。

終身医療保険

終身医療保険とは、一生涯にわたって保障される医療保険です。病気・ケガの心配は一生涯続きますので、加入しておくともしもの時に安心です。また、上記で少し触れました貯蓄機能があるものも多いです。

定期医療保険

保障が一定期間のみの医療保険です。終身型より保険料が安く、子供が小さい時だけ、貯金ができるまでなど、一定期間保障がほしい人に向いています。加入年齢が上がるほど保険料が高くなる、という特徴があります。

がん保険

日本人がかかりやすい「がん」に特化した医療保険です。がん保険も細かく言うと、様々な種類があります。

三大疾病保険

上記のがん以外にも日本人の死因で多い、急性心筋梗塞と脳卒中まで保障してくれる医療保険です。ただ、それぞれの保険金支給条件が厳しいという特徴があります。加入の前にはきちんと給付条件を確認してください。

女性向け医療保険

女性特有の乳がんや子宮内膜症などを手厚く保障してくれる医療保険です。また、妊娠・出産時の医療費を一部保障してくれるものもあります。加入は女性しかできません。

引受基準緩和型医療保険

最初のほうに、保険会社も加入者を選ぶ権利があるとお伝えしました。つまり、過去に病気にかかっているような方は、新規での加入をお断りされてしまうケースがあります。そのような場合、加入の条件のハードルが低い引受基準緩和型保険を検討しましょう。

まとめ

日本人なら誰しも義務で医療保険に入っています。それが公的医療保険(健康保険)です。

しかし、公的医療保険だけでは不十分・心配な方も多いでしょうから、民間が医療保険を販売しています。ただ、医療保険の必要性や適した種類はその人それぞれです。医療保険でお悩みでしたら、一度保険に詳しいFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみることをおすすめします。

無料で相談ができますし、近所のカフェなどで直接会って相談を受けてくれます。決して保険の押し売りはしませんので、一度医療保険の相談をしてみましょう。ついでに他の保険とかけ合わせて、自分に適したものがあるかどうかも聞いてみても良いでしょう。

※2022年8月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以