医療保険の支払限度日数|60日が目安である根拠と知っておくべき注意点

2023年6月1日

医療保険の支払限度日数とは、1度の入院で入院給付金が支払われる限度日数のことです

入院限度日数と呼ぶこともあります。

医療保険に加入していて、病気やケガなどにより入院した場合、契約時に決められた入院給付金が支払われます。

入院給付金の実際の支払は「入院給付金日額×入院日数」です。

仮に入院給付金日額5,000円の医療保険に加入しており、40日入院したら5,000円×40日=200,000円受け取れます。

しかし、1入院の支払限度日数が30日の保険に加入していたら、30日分しかもらえないため5,000円×30日=150,000円しか受け取れません。

医療保険に加入する際は、1入院の支払限度日数を必ず確認してください。

では、支払限度日数は何日にすればいいのでしょうか。

結論としては、60日を目安に選ぶべきです

この記事では60日を目安にするべき根拠と、支払限度日数の注意点について紹介します。

医療保険の支払限度日数は60日が目安である理由

前述の通り、医療保険の支払限度日数は60日を目安にすべきです。

ここでは、その理由について解説します。

入院日数の平均

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、退院患者の平均在院日数は「総数」が32.3日、「病院」が33.3 日、「一般診療所」が19.0 日でした。

支払限度日数を30日にするとギリギリ足りないかもしれません。

しかし、医療保険の支払限度日数を60日にすれば十分であることが分かります。

病気別の平均入院日数

今度は病気別の平均入院日数を見てましょう。

病気の種類 全体 0歳~14歳 15歳~34歳 35歳~64歳 65歳以上
感染症など 23.7 5.0 7.8 18.7 32.7
がん 18.2 14.0 10.6 13.3 20.6
骨折 38.5 5.5 10.6 21.3 46.2
糖尿病 30.6 16.7 11.5 15.6 40.7
心疾患 24.6 23.8 17.1 12.6 27.6
高血圧性疾患 47.6 6.3 25.2 10.7 53.4
脳血管疾患 77.4 31.3 61.7 51.8 83.6
肺炎 38.0 7.0 15.5 21.9 41.0
アルツハイマー 273.0 159.7 190.1 274.6

単位:日

参照元:厚生労働省|令和2年(2020)患者調査の概況

アルツハイマーや脳血管疾患は長期の入院となっていますが、その他の病気に関しては60日以内に退院していることが分かります

なお、年齢が高まるにつれて平均入院日数は長くなります。

医療保険見直しの際は、自身の年齢を加味しながら支払限度日数を決めるといいかもしれません。

知っておくべき支払限度日数の注意点

医療保険の支払限度日数を考慮する際、パンフレットなどには『1入院あたり90日』と書かれてあるでしょう。

その言葉通りに「1回入院したら90日間は入院給付金がもらえるのか」と理解していると、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。

注意しておかないと、入院したにもかかわらず入院給付金が支払われないという事態にもなりかねないのです。

ここでは、知っておくべき医療保険の支払限度日数の基礎知識を紹介します。

注意点1:1入院とは?

前述の通り、保険のパンフレットなどには、支払限度日数について「1入院あたり90日」などと記載されています。

では、1入院とはいったい何なのでしょうか。

1入院とは、『入院してから退院するまでの期間』を表します。

ただし、180日以内に同じ病気、もしくは関連性のある病気で再度入院した場合、同一の入院として1入院にカウントします。

例えば、肺がんで30日間入院し、退院50日後に胃がんで30日間入院し、関連性があると認められたとしましょう。この場合は肺がんと胃がんの入院を合計して1入院とします。

では、肺がんで30日間入院し、退院後50日後に骨折で30日間入院した場合はどうでしょうか。

疾病とケガに関連性がない場合は、別々に1入院としてカウントします。

注意点2:入院日数の数え方

入院日数は、入院した日を1日目と数え、退院した日を最終日として数えます

例えば、5月3日に入院し、5月19日に退院した場合の入院日数は17日です。

一方、日帰り入院は支払対象になる契約とそうでない契約があります。

加入する保険が日帰り入院まで保障するかどうかよく確かめてください。

注意点3:免責期間が設定されている医療保険もある

入院給付金の免責期間とは、その期間以内の入院に関しては入院給付金を支払わないとしている期間です。

仮に免責期間5日だとすると、5日以内の入院日数分に関しては、入院給付金が支払われません。

また、7日入院したとしても、免責期間を除いた2日間しか支払われないのです。

保険によっては、『5日以上の入院について1日目から給付する』と規定しているものもあります。

この場合、4日間入院した場合は入院給付金は支払われませんが、5日入院した場合は5日間分入院給付金が支払われます。

注意点4:通算支払限度日数も存在する

医療保険には、1入院あたりの支払限度日数の他に、通算支払限度日数も設定されています。

通算支払限度日数とは、保険期間中に入院給付金を受け取れる上限日数です。

保険期間中に何度も入院を繰り返すと、人によっては通算で何百日も入院するかもしれません。

しかし、入院給付金は無限に受け取れるわけではなく、通算支払限度日数というトータルの上限が設定されています。

上限に達してしまった場合、その契約は終了となります。

なお、現在販売されている医療保険は通算支払限度日数を1,000日程度としている商品が多いです。

入院給付金額の目安

医療保険を契約する際は、支払限度日数だけではなく、1日あたりの入院給付金額も重要です。

当然、入院給付金日額を高く設定すれば保険料も高くなりますので、適切な価格を把握する必要があります。

では、入院給付金日額はどれくらいが目安なのでしょうか。

公益財団法人生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」によると、入院した際の1日あたりの自己負担額は、平均で23,300円でした。

金額別に見ると、割合は以下の通りです。

1日あたりの自己負担額 割合
5,000円未満 10.6
5,000~7,000円未満 7.6
7,000~10,000円未満 11.1
10,000~15,000円未満 24.2
15,000~20,000円未満 9.0
20,000~30,000円未満 12.8
30,000~40,000円未満 8.7
40,000円以上 16.0

単位:%

参照元:公益財団法人 生命保険文化センター|令和元年度「生活保障に関する調査」

自己負担の内容としては以下のものが挙げられます。

  • ・治療費
  • ・食事代
  • ・差額ベッド代
  • ・交通費
  • ・日用品

上の表を見ると、多くの人は自己負担額「10,000~15,000円未満」となっています。

入院時は豪華な個室に入ると、その分費用がかかります。

40,000円以上かかっている人もいるため、平均が高くなっていますが、おおよそ「10,000~15,000円未満」になると考えればいいでしょう。

この費用をすべて医療保険でまかなってもかまいませんが、入院給付金日額を高くすると保険料がかかるので、半分は貯蓄でまかないます。

入院給付金日額は5,000円~10,000円を目安に契約してください

年齢により支払限度日数は見直しを

若い時は健康な人が多く、病気で繰り返し入院するケースは少ないでしょう。

しかし、高齢になるにつれ病気をする可能性が高まり、長期入院が必要となるケースもあるかもしれません。

その場合、1入院の支払限度日数が60日では足りない恐れがあります。

年齢ごと、特に高齢になるにつれて支払限度日数は見直したほうがいいでしょう。

まとめ

病気になり、入院すれば何もかもが不安になってしまいます。しかし、自分に適した医療保険に加入していれば、それだけで安心できます。

病気になった際には経済的・精神的負担を軽くすることが一番大切です。安心して治療を受けるためにも医療保険の支払限度日数について真剣に考えましょう。

商品によって保険期間や保障内容、保険料が違うので、何が自分に必要かを家族と話し合い、無駄のない医療保険に加入してください。

※2022年9月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以