女性向けの医療保険|通常の医療保険との違いと年代別選び方
2023年6月15日
『女性向け医療保険』と聞いただけでは、「通常の医療保険と何が違うの?」、「女性ならみんな、この保険に入っておけばいいの?」と疑問がわくばかりで、どんなところが「女性向け」なのか、本当に女性にとって必要な保険なのか分かりづらいですね。
本コラムでは、『女性向け医療保険』とはどんな保険なのか、どのような疾病にどのような保障が付くのか、数ある女性向け医療保険を選ぶうえで、どのような判断基準をもとに選択すればいいのか、などを解説していきます。
1. 女性向け医療保険とは
まず通常の医療保険との違いは何なのでしょう?大きな違いは2つです。
女性しか加入できない
⇒通常の医療保険は男性でも女性でも加入できます。
女性特有の疾病に対して、その他の疾病よりも手厚い保障が受けられる
⇒女性向け医療保に加入していないと、女性特有の疾病での入院や手術に対して保障されないということではありません。通常の医療保険でも女性特有の疾病に対して保障を受けられます。女性向け医療保険は、各社の保険商品によって保障内容が違いますが、様々な疾病やケガによる入院・手術に対する保障をベースに、女性特有の疾病に対してさらに手厚い保障を上乗せしたものです。
*注意)女性向け医療保険でしか保障されない疾病も一部あります。
では次に、女性向け医療保険のメリットは何なのでしょう?ほとんどの女性向け医療保険で見られるメリットは2つです。
女性特有の疾病での入院や手術に対して、通常の医療保険よりも手厚い保障が受けられる
⇒詳しくは「4.女性特有の疾病の場合、通常よりも多くお金が支給される」を参照。
妊娠、出産に伴う入院や手術も手厚い保障を受けられるので安心
⇒詳しくは「3.の(1)妊娠」を参照。
その他、次のようなメリットを含んだ女性向け医療保険もあります。
・定期的にお金を受け取れる積立ボーナスや、一定期間健康で保険を使わなかった場合に受け取れる健康ボーナスなどがある。
・三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)で所定の状態になった場合、以降の保険料が免除される。
女性なら誰もが直面する可能性のあるいざという時のために、安心な保障を得られるのが「女性向け医療保険」なのです。
2. 女性向け医療保険と女性疾病特約の違い
女性特有の疾病に対して保障する保険は、女性向け医療保険と言われるものの他に、「女性疾病特約」があります。2つの違いを簡単にまとめると次の表のようになります。
女性向け医療保険 | 女性疾病特約 | |
契約形態 | 主契約 | オプション |
女性特有の疾病に対する保障 | ○ | ○ |
その他の疾病やケガに対する保障 | ○ | ×(主契約で保障される場合が多い) |
備考 | 主契約が消滅した場合、女性疾病特約も消滅してしまう。 |
女性向け医療保険は、それが単独の保険商品として売り出されているのに対し、主たる保険契約(主契約)にオプションで女性特有の疾病による入院や手術に対する保障を手厚くした特約が女性疾病特約です。
この場合の主契約は主に医療保険です。女性特有の疾病に対しての保障が上乗せされるという点では、女性向け医療保険も女性疾病特約も違いはありません。
ただし、特約はあくまでも主契約ありきですので、主契約がなくなれば特約も消滅してしまいます。
女性疾病特約を検討する場合には、主契約の契約内容や契約期間などをしっかりと理解し、どの主契約のオプションとしてそれを付けるのかを判断する必要があります。
3. 女性向け医療保険で手厚く保障される疾病とは
女性向け医療保険は、その保険で保障される全ての疾病に対して、通常の医療保険に比べて手厚い保障が受けられるというものではありません。
あくまでも、手厚く保障されるのは「女性特有の疾病」にかかった場合に限ります。では、女性向け医療保険で手厚く保障される女性特有の疾病にはどのようなものがあるのでしょうか。もちろん、各社の保険商品によっても異なりますが、次のようなものが挙げられます。
(1) 妊娠
正常分娩の場合には保障の対象外となることがほとんどですが、妊娠、出産においても保障の対象となる場合があります。例えば、以下のような場合には保障対象となります。
・重度のつわりや切迫流産、切迫早産により入院した場合
・流産や早産で入院・手術をした場合
・帝王切開で出産した場合
・吸引分娩で出産した場合
・産褥感染症により入院した場合 など
この他にも、妊娠・出産において、健康保険が適用されるような入院・手術があった場合には、保障の対象となることがあります。
ただし、ここで注意しておきたいのは、医療保険に加入するタイミングです。妊娠が分かってから医療保険に入ろうと思っても、妊娠週数や妊娠の状況などによっては医療保険に加入できない場合や、加入できたとしても条件付きの保障になることがあります。また、不妊治療中も加入できない場合や、条件付きの保障となるケースがあります。したがって、妊娠・出産を見据えて医療保険に加入しようと考える場合には、妊娠を希望した時点で加入するのがベストと言えます。
(2) 乳房
女性のがんの罹患者数第一位は乳がんです。(2019年データ/独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がんサービスより)20代でも発症は認められていて、30歳を過ぎるとその数は急増し、45~49歳、70~74歳がピークです(がん種別統計情報 乳房/独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がんサービス)。
つまり、乳がんは年齢にかかわらず、リスクを知っておくべき病気なのです。乳がんは必ずしも乳房を全摘出しなければいけないというわけではありません。病状によって、部分的な切除で済む場合もあります。
ただ、全摘出となった場合には、乳房再建を考える人もいるでしょう。2013年7月から、乳がん全摘出手術後の乳房再建に使用する人工乳房には健康保険が適用されるようになりました。これにより、患者負担が大幅に軽減されました。
しかしながら、乳がん治療に加えて乳房再建の費用までとなると、患者の負担は少なくありません。女性向け医療保険では、乳がんで乳房を全摘出し、乳房再建を行った場合、乳房再建の費用まで保障される場合があります。もし、医療保険によって乳がんの治療から乳房再建の費用まで保障されるのであれば、患者の金銭的負担はかなり軽減されるでしょう。
乳がんの他には、乳腺症や乳腺線維腺腫なども若いうちに発症する可能性のある女性特有の病気で、女性向け医療保険で保障される場合があります。
(3) 子宮
子宮筋腫や子宮内膜症は、子宮頸がんや子宮体がんのように命にかかわる病気というイメージはないものの、女性向け医療保険で保障され得る、女性特有の病気です。
しかし、子宮筋腫や子宮内膜症の治療中であったり、既往歴があると、女性向け医療保険に加入できない場合があります。子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍ですが、それを切除しても再発の可能性があります。
また、悪性の腫瘍であることも稀にあります。子宮内膜症も治療をしても再発の可能性がある病気です。
医療保険は、主に入院や手術をした場合にその費用を保障する保険で、持病や既往歴のない健康な人を対象としています。なぜなら、将来的に入院や手術となるリスクが高い人と健康な人とでは、保険を使う可能性が異なります。同じ保険料で契約を引き受けてしまうと不公平になってしまうからです。
ただし、子宮筋腫や子宮内膜症の治療をしている、または既往歴があるからと言って、どの女性向け医療保険にも入れないわけではありません。 特定部位不担保(※1)の条件付きで加入できるものもあります。
※1 「特定部位不担保」とは、その保険で定められた特定の部位に生じた疾病やその治療を目的とする入院や手術に対して保障しないという、保険加入の条件のことを言います。
(4) 卵巣・卵管
卵巣嚢腫、卵巣がん、卵管炎、卵管がんなど、卵巣・卵管の病気も様々です。卵巣嚢腫や卵管炎などは、比較的若い年代でも発症する病気ですし、卵管がんは閉経後の世代に多い病気で、卵巣・卵管も年齢に関わらず、病気になるリスクがあります。
いずれも女性向け医療保険で手厚く保障される病気ですが、子宮と同様に、既往歴がある、または治療中などの場合には加入を断られる場合が多いです。
例えば、卵巣嚢腫の場合、腫瘍(良性腫瘍)が大きくなると緊急手術が必要になったり、腫瘍の中には悪性の卵巣がんが含まれていたりする場合もあります。
健康な人と同じ条件で引き受けてしまうと保険の公平性がなくなってしまうため、治療中であれば、完治後でないと加入できなかったり(保険会社によっては完治の何年後という場合もあります)、加入できたとしても特定部位不担保の条件が付いたりする場合がほとんどです。
乳房や子宮の病気にも言えることですが、年代を問わず、誰でも病気を発症する可能性があり、一度発症してしまうと医療保険に加入しづらくなります。したがって、病気のリスクを理解し、女性向け医療保険への加入を検討するのであれば、早い方がいいと言えるでしょう。
(5) その他
その他、女性特有ではないものの、女性に多い疾病として、次のようなものも入院や手術に対して、手厚く保障される場合があります。
・バセドウ病
・鉄欠乏性貧血などの貧血
・下肢の静脈瘤
・胆石症
・胆のう炎
・腎結石
・尿管結石 など
4. 女性特有の疾病の場合、通常よりも多くお金が支給される
女性向け医療保険は女性特有の疾病に対しての保障が手厚い医療保険です。
保障が手厚いと言うのは、給付金額の高さです。例えば、女性特有の疾病の治療のために入院した場合、通常の医療保険では入院1日につき5,000円が支給されるところを、女性向け医療保険に加入している際には、入院1日につき、さらに5,000円が加算されて支給されるというように、通常の医療保険よりも多くのお金を受け取れるのです。
入院費用に対しての保障が手厚い保険が多いですが、中には手術費用に対しても、女性特有の疾病の場合には給付金が上乗せされるものもあります。
5. 年代別、女性向け医療保険の選び方
女性向け医療保険と一括りに言っても、年齢を重ねればライフスタイルや病気のリスクも変化するでしょう。それぞれの年代でどのように女性向け医療保険を選べばいいのでしょうか。
20代
まだまだ若いから、医療保険なんて入らなくて大丈夫と思う人は多いはず。
しかし、前述の通り、女性特有の疾病は若い世代でもかかるリスクがあります。
病気にかかってからでは保険に加入しにくくなったり、条件が付いてしまったりすることがあります。また、将来子供がほしいと考えるのであれば、妊娠前に加入しておくのがベストです。20代はまだまだ貯蓄が少ない世代。だからこそ、いざという時のために備えておきましょう。
とりあえず、格安の定期医療保険(※2)に加入するのもおすすめですし、終身医療保険(※2) に加入して、一生涯の保障を得るのもいいかもしれません。いずれも20代であれば比較的安い保険料で済みます。
※2 定期医療保険と終身医療保険
医療保険には大きく分けて定期医療保険と終身医療保険の2種類があります。10年間や20年間など、一定期間の保障されるのが定期医療保険、一生涯を通じて保障されるのが終身医療保険です。定期医療保険は、若いうちは保険料が安いですが、年齢とともに保険料がアップしていきます。保険加入時の保険料をなるべく抑えたい場合や、保険の見直しをこまめに行いたい場合にはこの保険がおすすめです。
一方、終身医療保険は保険料が上がることはないですが、保障が一生涯続く分、支払いも一生涯続きます。ただし、短期払いの終身医療保険もあります。短期払いというのは、保障は一生涯続くけれど、決められた年数や年齢までに一生涯分の保険料を支払いきるというものです。この場合、月々の保険料は高くなりますが、定年後の保険料負担を回避できるというメリットがあります。一定の金額で一生涯の保障がほしいという場合には、終身医療保険がいいでしょう。
30代
まだ、それほど健康面への不安も大きくない世代でしょう。しかし、乳がんなどは30代から罹患率が上がり、女性特有の疾病を患う可能性は十分にある年代です。20代で加入していなかった人は基本的には20代と同じような考え方をベースに、保険料の安い女性向け医療保険でもいいので、積極的に加入を検討したほうがいいでしょう。すでに加入している場合には、保障金額をアップさせたり、保障内容を見直したりするのがおすすめです。また、20代で定期医療保険に加入していた場合には、終身医療保険に乗り換えるという選択肢もあります。
40代
年齢を重ねれば、健康への不安も増します。40代になってくると、すでに女性向け医療保険に加入している人も多いでしょう。
また、出産・子育てを終えていたり、仕事の仕方や収入、ライフスタイルも変化しているかもしれません。時が経ち、昔加入した女性向け医療保険よりもっといい商品が販売されている可能性もあります。
したがって、すでに女性向け医療保険に加入しているからよしというわけではなく、保険の種類そのものや、保障内容について、再検討してみるのがいいでしょう。女性特有の疾病はもちろん、その他の疾病に対する不安も出てきたのであれば、女性特有の疾病に対する保障以外の部分もきちんと見直してください。
それまで定期医療保険に加入していた場合には、30代と同様に、終身医療保険への乗り換えも選択肢の一つです。
50代~
50代以降は健康への不安は増し、すでに様々な病気の既往歴もあるかもしれません。この年齢でまだ女性向け医療保険に加入していない場合、年齢や既往歴によって加入をあきらめている人もいるでしょう。
しかし、50代以降であっても加入できる女性向け医療保険はありますし、既往歴があっても、条件付きとなることが多々ありますが、加入できる保険もあります。すでに加入している場合には、40代と同様に保険の見直しを検討をするのもいいでしょう。
まとめ
まだ若いし、今は元気だし、健康には気を使っているし、医療保険なんて要らないわと思っていても、病気はいつ襲ってくるか分かりません。
しかも、女性特有の疾病は年齢を問わずかかる可能性のあるものが多いです。妊娠や出産に至っては、若いからとか、健康だからとかは関係なく、どんな状況になるか誰にも分からないものです。
でも、女性の不安に寄り添い、手厚い保障でいざという時に安心をくれるのが「女性向け医療保険」です。
「女性向け医療保険」で女性だからこその安心を得てみませんか?
※2022年11月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以