学資保険の必要性と正しい学資保険の選び方
2023年6月15日
子供がいる方やこれから子供が生まれるという方なら、一度は学資保険の必要性について考えることがありますよね。
そもそも子供の教育資金を用意するためには、どういった方法があるでしょうか?学資保険や貯蓄、学資ローンが浮かぶかもしれません。
とは言え、どのような手段を選べばいいかは分からないものですよね。
そこで今回のコラムでは「学資保険と預貯金どちらにしよう」といった悩みを抱えている方に向けて、学資保険が必要になのはどんな人なのか、学資保険を選ぶ上でどのような点に気を付けなければならないのかについて解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
1.学資保険が必要になるのは教育にお金がかかるから
当然のことですが、子供を育てるのにはお金が必要です。食費や被服費など子供にかかる費用は様々ありますが、その中で最も大きい比率は学習にかかる費用でしょう。
以下では、幼稚園から高校までの学習費用はどれくらいかかるのか?また、大学の費用はどれくらいかかるのか?について解説していきます。
幼稚園〜高校までの学習費用
文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」によると、幼稚園〜高校までの学習総額費用は以下の表のようになっています。学習総額費用は「学習教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の総額となっています。
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表を見ると、公立に通うのか私立に通うのかによってかなりの違いが生じることが分かります。資金計画の際は、子供の希望を考慮した上でどちらに進学するかよく考えましょう。
大学の費用
日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果」では、学生一人当たりの学生生活費(学費と生活費)は平均で約181万円です。居住形態別に見ると、自宅通学の場合は約160万円、下宿やアパートなどに住む場合は約215万円となっています。
また私立大学(学部)・短期大学・私立高等専門学校の初年度納入金の平均は以下のようになっています(参照:文部科学省|私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について)。
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表の合計欄を見ると私立大学が最も高く、150万円を用意すれば概ね足りることが伺えます。学資保険の設定金額は200〜300万円にする人が多いと言われていますので、ぜひ参考にしてください。
2.教育に必要な資金をどのように確保するのか
さて、その教育資金はどのように用意するのがいいのでしょうか。ひとつは学資保険、もうひとつは貯蓄で用意する方法が考えられます。ここでは高校卒業時までに300万円を用意するパターンを考えてみます。
学資保険で確保
例えば、ある学資保険で、親が27歳、子供が3歳、受取保険金総額を300万円(18歳時受け取り開始)に設定したとした場合は以下のような受け取り方ができます。
【保険料】
月払い保険料:16,070円
【学資年金】
高校入学時:50万円
大学入学時:100万円
大学2〜4年時:50万円ずつ
高校入学時に受け取ったお金はそのまま貯金することもできますので、大学入学時に150万円を用意することが可能です。
一度学資保険に加入すれば、原則満期まで継続することになるため、貯蓄が苦手な人でも着実に教育資金を確保できます。
また、学資保険には、親が亡くなった場合は以降の保険料の払込が免除される特約が付いているのが一般的です。保険料を払わなくても保険金を受け取れるので、親に万が一のことがあっても安心できます。
貯蓄で確保
学資保険以外の方法としては貯蓄で確保する方法があります。この方法をとるメリットは、急にお金が必要になった場合にすぐに引き出せることです。
例えば、上記の例と同じ条件であれば月に17,000円貯蓄をすれば、15年間で約300万円の貯金ができます。子供が3歳の時に貯蓄をスタートすると、18歳の時に約300万円貯まりますね。
貯蓄が得意な人なら、学資保険に入らなくても貯蓄で準備できるでしょう。
学資保険は中途解約すると元本割れを起こしますが、貯蓄なら必要になった時に即座にお金を引き出せます。これが貯蓄の強みです。
3.学資保険が必要な人、不要な人、その判断基準
ここまでは子供の学習費用にどれくらいのお金が必要になるのか。その資金確保にはどのような方法があるのかについて見ていきました。続いて、学資保険に加入する必要があるのか?その判断基準について解説していきます。
学資保険が必要な人は貯金が少ない人
子供が小学校に入る時、中学校に入る時、高校に入る時、大学に入る時、必ずまとまったお金が必要になります。現在の貯蓄は少ないけれど、入学時に教育資金を確実に用意したい方は学資保険に加入したほうがいいでしょう。
毎月コツコツと保険料を払う代わりに、必要な時に必要な額を受け取れるので計画的な貯金が苦手な方にも向いています。
親が亡くなってしまっても、学資保険に加入していれば保険金を受け取ることが可能です。学資保険では「貯金」と「保障」の両方を得られます。
学資保険が必要でない人は貯金が十分にある人
学資保険は任意保険であり、あくまでも子供の教育資金を貯める手段です。単純に「子供が生まれた」「小さい子供がいる」という理由だけで学資保険に加入する必要はありません。学資保険に加入するのが常識と考えていた人は、一度考え直してみてはいかがでしょうか?
また、十分に稼いでいる人なら、貯蓄をがんばり、いざという時の保障は生命保険でカバーする方法もあります。
4.学資保険が必要な人のための正しい選び方
学資保険が必要だと分かっても、世の中にはたくさんの学資保険商品があり、どれを選べばいいか分からない方も多いことでしょう。そんな方のために、学資保険の選び方について解説していきます。
まずは目的を明確に
まずは学資保険に入る目的を明確にしましょう。目的を明確にすることは保険に入る時の基本です。学資保険の場合は基本的に「学費などの教育資金を貯める」ことが目的となりますね。その他の目的としては、貯蓄に加えて、親が亡くなった時の保障(死亡保険金)、子供が病気・ケガをした時の保障が挙げられます。
ポイントとしては「この保障は最低限ほしい」というものをはっきりさせることです。はっきりさせていないと迷いが生じる可能性があります。例えば、そこをうやむやのまま保険契約を結ぼうとしたとします。すると直前になって、死亡保険金もほしいかもしれない、子供がケガをした時の医療保障もいるかも、などと迷ってしまい、いらない保障まで付けてしまうかもしれません。
保障の最低ラインを決めておけば迷うことはありません。いる・いらないをはっきりと判別できます。
貯蓄型か保障型を選ぼう
学資保険には貯蓄型と保障型があります。貯蓄型は教育資金を貯めることを目的とした保険で、あまり多くの保障や特約は付いていないシンプルな商品です。そのため、返戻率が高いという特徴があります。
対して保障型は、死亡保障や医療保障などが付いた学資保険です。ひとつの保険で様々な保障が付いているのでお得そうに見えますが、その分保険料が高く、返戻率が低いです。
教育資金を貯めることを目的に加入するなら貯蓄型がおすすめです。
保障型は、様々な保障をひとつにまとめたい方に向いています。
払込期間と月々の保険料を決める
検討する前にあらかじめ、払込期間と保険料を決めましょう。保険料を払い込むのは中学入学または高校入学までなのか、いつまでに払い終えていたいかを考えてください。家計の状況に合わせて、無理なく継続的に支払える保険料を設定することも大切です。
払込期間は短くしたほうが返戻率が高くなり、中学・高校などお金がかかる時期には支払いを終えているので楽です。しかし、月々の保険料は上がってしまい、保険料払込免除特約を受けられる期間が短くなってしまいます。
払込期間と月々の保険料のバランスを考えた上で設定してください。
返戻率を見る
できるだけ多くの保険金を受け取りたい場合、返戻率を見て保険商品を比較しましょう。
◆返戻率とは
返戻率とは、支払い保険料の総額に対していくら保険金を受け取ることができるのかというものです。学資保険で受け取れるお金は「満期保険金」と「祝い金」の2種類です。返戻率は以下の式で表すことができます。
返戻率=(満期保険金+祝い金)÷ 払い込み保険料の総額 × 100
学資保険の貯蓄性の高さは、この返戻率を見ることで判断できます。数字が大きいほど貯蓄性があり、返戻率が100を下回れば元本割れをしていることになります。
5.学資保険を生命保険料控除として申告するのを忘れずに
実は、学資保険も生命保険料控除の対象となります。支払った保険料は税率を掛ける前の所得から差し引くことができます。教育資金の用意といった側面以外でも、賢い使い方をしていきたいですね。
生命保険料控除とは
ご存知な方も多いと思われますが、念のために解説します。生命保険料控除とは所得控除のひとつで、簡単に言うと税金が安くなる仕組みです。
払い込んだ保険料に応じて、課税対象となる所得から一定の金額が差し引かれます。そのため、所得税や住民税などの負担を和らげることができるのです。払い込み保険料と控除される金額については国税庁の公式サイトに詳しく記載されています。
申告をする手続き
申告手続きは会社員の方と自営業の方で異なります。
◆会社員の場合
その年のだいたい10月末頃に、保険会社から「生命保険料控除証明書」という書類が送られてきます。年末調整の時にこれを見ながら会社から渡された書類を記入し、一緒に提出するだけで完了です。
◆自営業者の場合
生命保険料控除証明書が送付されてくるまでは会社員と同じで、そこから先が異なります。確定申告の際に、確定申告書の所定の欄に控除金額を記載します。
うっかり忘れることのないように注意しましょう。
6.まとめ
子供のための学資保険の必要性、上手な選び方や使い方はイメージできたでしょうか。学資保険の一番のメリットは、払い込み総額よりも大きな金額を受け取れることですね。貯蓄型と保障型については、一般的には貯蓄型がおすすめです。保障型が必要だと思った人のみ加入をしたほうがいいでしょう。
選ぶ時の流れは「目的を明確にする」、それに合わせて「貯蓄型か保障型かを選択する」、「払込期間と保険料を決める」といった具合です。とても大切な「返戻率」をチェックすることをお忘れなく。一番の目的は「教育資金を貯めること」ですから、できるだけ多く貯めたいですよね。
学資保険はしっかり吟味してから加入しましょう。
※2022年11月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以