医療保険は不要?不要な理由と医療保険の必要性が低い人
2023年7月18日
医療保険がおすすめと言われても「いらないのでは?」と考えている方はいるかもしれません。実際のところはどうでしょうか。今回は、医療保険が不要な理由と不要だと考えられる人の特徴をご説明します。
このコラムをご覧いただいてもなお、医療保険は必要だとお考えでしたら、医療保険加入の決め手にしていただければと思います。また、医療保険以外にも保障が充実している生命保険は多々ありますので、他の保険を検討してみてもいいでしょう。
医療保険が不要だと考えられる理由
それでは、なぜ医療保険は不要だと様々なところで見聞きするのでしょうか。医療保険が不要だと言われている背景には以下の理由があるからです。
入院期間の短縮
近年の高齢化による病室のベッド不足と、医療技術の発展により、1回あたりの入院期間が短縮されるようになりました。厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、平均入院期間は32.3日です。
医療保険は疾病の診断を受けて保険金が給付されるものもありますが、入院期間に応じて保険金が給付されるタイプが一般的です。つまり、長く入院してこそ医療保険は必要性が高いと言えるのです。
医療保険の構造上の問題
医療保険そのものの構造が現在のニーズとマッチしていないことも考えられます。大きく分けると以下の3つです。
●1入院の定義
まず医療保険には、1入院で支払われる日数の上限が決められています。例えば、「1入院で50日間保障」などです。しかし、この1入院の定義とは1回の入院ではなく、「一定期間内に同じ病気でした入院」とされています。
一定期間とは「180日間」としている医療保険が多いです。
つまり、何かの疾病で1度入退院をし、180日以内に同じ疾病で入院した場合、再発後の入院も1入院とカウントされてしまいます。上の「50日間保障」と上限が決められているものだと、最初の入院と再発後の入院を合計して50日間を超えてしまうと、その後は保険金が支払われないのです。
また、お伝えのように、高齢化によるベッド不足のため、病気の再発の疑いがある状態でも症状が安定していれば一旦退院となるケースも増えてきました。結果的に再発してしまい、再入院が長引くと医療保険が途中で受けられなくなる恐れがあります。
●支払条件が厳しすぎる
医療保険の約款をよく見てみると、保険金の給付条件が厳しすぎることもネックです。特に、三大疾病保険は支払要件が厳しいことでも有名で、給付対象となる脳卒中や急性心筋梗塞では、入院などで労働できない期間が60日以上となる場合でないと保険金が給付されない約款になっていることが多くあります。
いざという時に役に立たない保険であれば不要だと、医療保険に加入しない人が増えてきています。
●加入したい人ほど加入できない
医療保険の加入を考える人の中には、元々体の弱い方や一度病気にかかったことのある方も多いと思います。しかし、そのような方こそ加入条件が厳しく、加入を断られるケースがあるのです。
そのような方にも加入できる、引受基準緩和型や無選択型の医療保険もありますが、保険料が高くなります。そこまでの保険料を支払ってまで医療保険に加入しようと思う人は少ないようです。
公的医療保険制度の充実
医療保険が不要だと考えられる理由として、日本の公的医療保険制度が非常に充実していることも理由として挙げられます。国民には公的医療保険の加入が義務付けられていますが、非常に頼もしいがゆえにに民間医療保険は不要だと考えられているのです。
まず、現役世代なら、公的医療保険によって医療費は3割負担で済みます。そして、以下のような制度もあります。
●非常に頼もしい高額療養費制度
「高額療養費制度」は、1ヶ月(その月の1日から末日まで)にかかった医療費が自己負担額の上限を超えると、申請することによって超えた分の医療費を返還してくれる制度です。上限額は年齢や所得によります。
詳しくは厚生労働省の「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」を参考にしてください。高額療養費制度により、月の医療費が膨れ上がることなく、安心して医療を受けられるのです。
●会社員は傷病手当金で収入減も保障されている
もう一点、病気やケガで働けなくなった時に心配なのが、その期間の収入がなくなってしまうことです。雇用されている会社員に限られますが、こちらも公的制度を利用することでカバーできます。それが「傷病手当金」です。
病気やケガで就業が難しくなり、会社から給与を得られなくなった場合は、最大1年6ヶ月間、手取り額の約7割を請求できます。このような公的制度の充実により、民間医療保険の不要論が多く出ています。
医療保険が不要な人の特徴
いかがでしょうか。このようなことから、医療保険は不要だと考えている方は多いです。しかし、これは一般論であって、本当に不要かどうかは、その人の状況によります。
以下では、どのような人が不要なのかをさらに細かく解説します。
貯蓄が多い方
ご説明したように日本は公的制度が充実しているため、少ない負担で十分な医療を受けることが可能です。病気にかかった際は、当然経済的負担は出てきますが、ある程度の貯蓄がある方は貯蓄で医療費を賄えるでしょう。
今後支払われるか分からない(病気などで入院しないかもしれない)医療保険に毎月保険料を支払うよりも、自分で貯蓄をしていったほうが効率もいいと考えられます。
では、必要な貯蓄額はいくらかと言うと、一概には言えませんが、最低でも100万円ほどあれば1度の入院に耐えられるのではないでしょうか。
保険に貯蓄性を求めている方
保険に対して貯蓄性を少しでも求めている方にとっては、医療保険は不要だと言えます。理由としては、医療保険は貯蓄性にあまり優れていないからです。
まず、医療保険は今後必ず保険金給付の対象になってくるとは言えません。
入院することがなければ、保険金を受け取る機会がなく、支払った保険料の元が取れないのです。中には解約返戻金のある医療保険もありますが、死亡保障が主な終身保険に比べると、返戻率がよくありません。
また、最近は掛け捨て型の医療保険や、解約返戻金のない終身医療保険が主流となっており、医療保険に貯蓄性を求めるのは現実的ではないと言えます。
少しでも「保険で貯蓄もしていこう」とお考えの方は、他に貯蓄性に優れた保険が多くありますので、そちらの保険を比較・検討してみてください。
公的制度だけでカバーできる方
上記の貯蓄がある方と似た内容ではありますが、公的制度だけでもしもの事態に対応できるようであれば、民間医療保険は不要だと考えられます。
特に、会社員は傷病手当金を利用できますので、万が一病気やケガで一時的に収入がストップしたとしても保障されます。ゆえに、医療保険は不要だと考えられるでしょう。
医療保険の必要性があると思われる人
一方で、医療保険が必要だと考えられる方はどのような方でしょうか。
貯蓄が少ない方、苦手な方
上記でお伝えした内容の逆の人になりますが、現在貯蓄が少ない方や苦手な方は、いざ入院してしまうと医療費が支払えなくなる恐れがあります。
医療保険は月々数千円の保険料で、いざという時しっかりした保障を得られます。貯蓄ができるまでの間加入しておく、という入り方でもいいでしょう。
一定期間の保障を手厚くしておきたい方
掛け捨て型の医療保険なら、保障がほしい期間だけ加入することもできます。
例えば、「子供が成人するまでの間」「住宅ローンを完済するまでの間」など、限られた期間だけ加入するのです。
「子供が成人するまでの間」「住宅ローンを完済するまでの間」はどちらも一定の支出があるので、病気やケガで医療費までかさむと家計を圧迫します。しかし、医療保険に加入しているなら、医療費の負担を軽減できるのでおすすめです。
自営業の方
傷病手当金は、会社員の方しか受けることができません。それゆえ、実際に自分が働けなくなると収入がストップしてしまう自営業の方は、医療保険の必要性が高いと考えられます。
必要な保障額は家族構成や月々の支出額、貯蓄によって変わりますが、安い医療保険でも加入しておくといざという時心強いです。
まとめ
状況にもよりますが、医療保険は不要に思う場合もあれば、必要に思う場合もあります。「医療保険が不要な人の特徴」「医療保険の必要性があると思われる人」の見出しでご紹介した内容を踏まえて考えてみてください。
なお、今回お伝えした内容は一般論ですので、それでも医療保険が必要なのか不要なのか分からない方は、一度個別にファイナンシャルプランナーに相談してみることをおすすめします。
※2022年11月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以