リビングニーズ特約の8つの特徴|利用するメリット・注意点まとめ
2023年5月31日
リビングニーズ特約とは、医師から余命6カ月以内の宣告を受けた際に、契約している死亡保険金の一部もしくは全部を生前に受け取れる特約です。
リビングニーズ特約であらかじめまとまったお金をもらうことで、家族や友人と最後の思い出を作ったり、費用の心配をすることなく治療に専念できたりと、メリットがあります。
この記事では、リビングニーズ特約についてご説明します。
リビングニーズ特約の特徴8つ
ここでは、それぞれの内容を詳しく見てみましょう。
特徴1:余命6カ月以内の宣告を受けた時に利用が可能
医師から余命6カ月以内の宣告を受けた際に、保険会社のカスタマーセンターなどに請求することで保険金を受け取ることができます。
特徴2:受け取り上限は3,000万円
リビングニーズ特約を利用して保険金を受け取る場合の上限額は、3,000万円です。仮に5,000万円の死亡保険に入っていたとしても、最大3,000万円までしか受け取れません。
しかし、必ず上限額まで請求しなければいけないわけではありません。
仮に死亡保障3,000万円だった場合に、リビングニーズ特約を使って1,000万円を請求し、被保険者が亡くなった際に保険金として残りの2,000万円を受け取ることも可能です。
特徴3:原則的に受取人は被保険者
リビングニーズ特約を使って保険金の請求を行う人は、原則、被保険者本人です。
被保険者と意思疎通できない、本人に余命を知らせていないなどの事情があれば、代理請求もできます。このことは後半で詳しく解説します。
特徴4:病気・ケガなどの種類に制限はない
リビングニーズ特約には、余命6カ月以内の宣告という条件がありますが、病気・ケガの種類に制限はありません。どのような病気・ケガでも請求できます。
特徴5:別途保険料はかからない
特約自体は無料で付帯できます。
特徴6:もしも余命宣告よりも長く生きても返還しなくていい
余命宣告を受けても、その期間より長生きするケースはあります。
特に、リビングニーズ特約を使って受け取った保険金で今までできなかった高度な治療を受けて、症状がよくなったなども考えられなくはないでしょう。
余命期間よりも長く生きたとしても、保険金は返還しなくてかまいません。
特徴7:使い道は自由
リビングニーズ特約で請求した保険金の使い道は自由です。
緩和ケア、やり残したことをすべてやる、家族や友人と旅行する、豪華な個室でゆっくり過ごすなど、何に使っても問題ありません。
特徴8:リビングニーズ特約で請求した保険金は非課税
リビングニーズ特約の特に大きなポイントは、受け取る保険金は非課税ということです。
つまり、いくら大きな保険金を受け取ったとしても所得税や住民税を納める必要はありません。
リビングニーズ特約のメリット・デメリット
前述の特徴を踏まえながら、どのようなメリット・デメリットがあるのかをこちらで解説していきます。
リビングニーズ特約のメリット
リビングニーズ特約には、以下のメリットがあります。
- ・生前の思い出を作れる
- ・治療に注力できる
- ・税金をおさえられる
- ・保険料は気にしなくていい
詳しい内容を見てみましょう。
メリット1:生前の思い出を作れる
死亡保険金を生前に受け取れることで、お金の心配をすることなく余命宣告を受けた方と思い出を作れます。
この保険金を使って「最後にあなたがやりたかったことをやろう」と言えるのです。
メリット2:治療に注力できる
最後まであきらめずに闘病に専念することもできます。
お金が足りないことで高度な治療を諦めてしまったり、専念したのはいいけれど金銭的に悩まされたりすることもあるはずです。
リビングニーズ特約を使って高額な保険金を受け取れば、治療に専念できるかもしれません。病室をランクの高い部屋にしたり、自宅に設備を整えて少しでも被保険者の闘病ストレスを軽減したり、という方法もあります。
メリット3:税金を抑えられる
被保険者の死後、死亡保険金が支払われた場合は課税対象になりますが、リビングニーズ特約を利用して生前に受け取った場合の保険金は非課税です。
リビングニーズ特約を活用すれば、節税ができます。
しかし、生前に保険金を受け取ったものの、使い切らずに亡くなると、そのお金は相続財産とみなされ相続税が課されるので注意してください。
このことは後程、詳しくご説明します。
メリット4:保険料は気にしなくていい
“特約”と聞くと、「別途、費用がかかるんでしょう?」と思う方も多いでしょうが、ご説明のようにリビングニーズ特約に保険料はかかりません。
リビングニーズ特約のデメリット
リビングニーズ特約には、以下のデメリットがあります。
- ・保障期間が残り1年以内の場合は使えないケースも
- ・請求額がすべて支払われるわけではない
- ・家族の生活保障がされない可能性がある
- ・その他の特約が消滅するケースがある
詳しい内容を見てみましょう。
デメリット1:保障期間が残り1年以内の場合は使えないケースもある
死亡保険の契約期間が残り1年以内だった場合、リビングニーズ特約が利用できないケースが多くなっています。
条件は各保険会社によって違いますので、保険会社に確認してみてください。
デメリット2:請求額がすべて支払われるわけではない
リビングニーズ特約で請求できる金額は3,000万円が上限であると言いましたが、請求額がすべて支払われるわけではありません。
リビングニーズ特約では、本来被保険者が亡くなった時に手にする死亡保険金を事前に請求します。そのため、6カ月分の利息や保険料が差し引かれて支払われます。
デメリット3:家族の生活保障がされない可能性がある
死亡保険は本来、残された家族の生活費のために利用するものです。リビングニーズ特約で支給された保険金をすべて被保険者が利用すると、残された家族の生活費が足りなくなる可能性もあります。
家族の経済状況を考慮して、どの程度請求するかを決めなければなりません。
デメリット4:その他の特約が消滅するケースがある
一般的に保険は主契約が消滅すれば、特約も併せて消滅します。
リビングニーズ特約を用いて、生前に死亡保険金全てを請求してしまった場合、主契約である死亡保障が消滅しますので、その他の特約も併せて消滅します。
リビングニーズ特約を付けるには?
利用できるケースは限られてくるものの、メリットが多いリビングニーズ特約。
では、どうやって加入するのでしょうか。
ほとんどの死亡保険にリビングニーズ特約は付いている
死亡保障が付いている生命保険の多くには、リビングニーズ特約が自動的に付いています。ご自身の生命保険の契約内容を見直してみると「あ、あった」という方がほとんどでしょう。
リビングニーズ特約は1990年代以降、各保険会社が付帯するようになりました。
それ以前の保険に加入している場合は、リビングニーズ特約が付いていないかもしれません。一度ご自身の契約内容を見てみましょう。
途中からの追加も可能
もし、リビングニーズ特約が付いていなかったとしても途中加入は可能です。もちろん途中加入だからと言って保険料が発生することはありません。
付けておいても損のない特約です。もしもご自身の契約にリビングニーズ特約が付いていなければ、保険会社に問い合わせましょう。
リビングニーズ特約を利用する注意点
リビングニーズ特約を利用するにあたって2つの注意点があります。
ここで、確認しておきましょう。
注意点1:受け取った保険金が残ると課税対象になる
上記でもお伝えしましたが、リビングニーズ特約を利用して生前に受け取った保険金は非課税です。一方、本人の死後、家族が死亡保険金を受け取ると課税対象になります。
「だったら、死亡保険金を全部リビングニーズ特約で受け取れば税金がかからない」と、安易に考えがちです。
しかし、リビングニーズ特約で受け取った保険金を使い切らずに本人が亡くなってしまえば、そのお金は相続財産として相続税の課税対象になります。
リビングニーズ特約で受け取る保険金の額は、被保険者が生前に使い切れる必要な額だけにしましょう。
ただ、リビングニーズ特約の利用は1度きりなので、「やっぱり足りなかったから追加で」と、追加の保険金請求はできません。
きちんと計画を立てて受け取るようにしましょう。
保険は被保険者と受取人が違えば、かかる税金が変わります。また、税金の種類によっては非課税枠もあります。
注意点2:ご本人の余命宣告を知られてしまうこともある
リビングニーズ特約の請求者は原則、被保険(死亡保障の対象者)で、受取人も被保険者です。
つまり、通常は宣告を受けた本人自らが請求します。
リビングニーズ特約を利用するということは当然自分の余命が6カ月以内だと分かってしまいます。
一方で、余命宣告を本人には伝えない方針のご家族や、本人と意思疎通できないケースもあるでしょう。
そのような場合、指定代理請求人が請求できます。誰でもなれるわけではなく、保険会社によって基準が設けられています。
代理請求を行うと保険会社も配慮し、保険金は代理請求人の名義口座に振り込まれます。
本人以外が代理で請求できるが注意は必要
極力、余命宣告を受けた本人が関与しないように請求を進められますが、絶対知られないという保証はありません。
例えば、保険金を受け取ったことによって保険料が変わったり、急に家計が潤ったりすれば、被保険者も察するかもしれません。
リビングニーズ特約を使って保険金を受け取る場合は、慎重に検討しましょう。
まとめ
いかがでしょうか。リビングニーズ特約をまとめると、余命6カ月以内の宣告を受けた場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取れる特約です。
なかなか利用するケースが少なく、そのような事態になってほしくはないですが、付帯されているともしもの時に助かります。
加入中の契約にリビングニーズ特約が付いていない場合は、一度保険会社に問い合わせてみましょう。
※2022年9月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以