生命保険の契約者貸付制度の概要とメリット・注意点まとめ
2022年5月21日
生命保険の契約者貸付制度とは、加入している生命保険に加入したまま保険会社からお金を借りられる制度のことです。急にお金が必要になり、生命保険を解約しようか迷っていた人も、この制度を使えば保険の解約なしにお金を用意できます。
金利はさほど高くはありませんが、いくつか注意点があります。今回は、契約者貸付制度の概要、メリットと注意点、貸付を受ける方法と返済の仕方についてご説明します。
生命保険の契約者貸付制度とは
契約者貸付制度とは、加入している生命保険の解約返戻金を担保にして、保険会社からお金を借りられる仕組みのことです。解約返戻金の7割から9割までの金額を借りられます。消費者金融で借りるよりも金利は低いですが、返済できなかった際のデメリットが大きいので要注意です。
貸付利率はどのぐらいか
保険会社や加入時期などによって変動しますが、大手保険会社数社の貸付利率を確認したところ、2.00%~6.00%が多くなっていました。消費者金融(年利15%程度)よりも金利が低いです。ただ、複利で計算されるため、返済期間が長引くほど負担が増えていく点には注意しましょう。
ただし、銀行から借りられるのであれば、銀行から借りるのがベストです。『日本銀行金融機構局|貸出約定平均金利の推移(2022年2月分)』によると、平均金利は0.3%~1.8%程度です。まずは銀行で借りることを検討し、難しい場合は契約者貸付を検討しましょう。
詳しくは『契約者貸付制度を利用する際の注意点』でご説明します。
契約者貸付制度を利用しお金を借りるメリット
ここでは、契約者貸付制度を使いお金を借りるメリットをご紹介します。
保険を解約せずにお金を準備できる
保険を契約すると、一定額の保険料を長期間支払い続けることになります。急な出費がかさみ、お金を工面するために生命保険の解約を検討することがあるかもしれません。しかし、契約者貸付制度を使えば、生命保険を解約しなくてもお金を用意できます。
消費者金融で借りるよりも金利が低い
先程も軽く触れたように、消費者金融から借金をすると金利が15%程度発生するのに対し、契約者貸付制度を利用した場合は高くても年利6%程度ですから、負担は少なくなります。保険契約によっては年利6%より低い金利で借りられる場合もあるので、詳しくは加入している保険会社にお問い合せください。
銀行から借りるのがベスト
銀行の平均金利は0.3%~1.8%です。フリーローンなど金利が高めに設定された商品もありますが、やはり低金利なのは銀行です。借金をする際は銀行⇒契約者貸付制度⇒消費者金融の順番で検討するといいでしょう。
審査不要
解約返戻金を担保にお金を借りる仕組みなので、消費者金融と違って借入時の審査はありません。急にお金が必要になった時に助かります。
返済期限がない
契約者貸付で借りたお金は、返済期限がありません。お金が準備できれば、いつでも返済可能です。ただし、借りる期間が長引けば利息が増えてしまう点には注意してください。
契約者貸付制度を利用する際の注意点
比較的低金利で返済期限もない契約者貸付制度ですが、いいことばかりではありません。借りる前には必ず以下の注意点を押さえておきましょう。
複利で計算される
複利という言葉を聞いたことはあるでしょうか?金利の計算方法には単利と複利の2種類があります。単利とは元本のみに利息がかかる計算方法ですが、複利は元本+これまでの利息を足した金額に利息がかかる計算方法です。
100万円を年利6%で借りたと仮定して具体的な違いを見ていきましょう。例えば、単利でこの条件だと1年目の返済額は106万円、2年目の返済額は112万円です。
複利の場合、1年目の返済額は106万円、2年目の返済額は112万3,600円で、単利よりも3,600円高くなります。たった3,600円と思うかもしれませんが、複利は年数を重ねるほど、加速度的に金額を増やしていきます。
単利で10年間100万円を借りた場合の返済額は160万円ですが、複利の場合は179万円と、19万円もの差が開きます。
同じ条件で消費者金融から年利15%で借りた場合と比べると、保険会社から借りたほうがマシですが、返済期間が長引くほど負担が重くなるという点だけは覚えておきましょう。
未返済分は保険金から差し引かれて支給される
お金を借りて返さないまま保険金を受け取る事態になると、未返済の金額が差し引かれた額を受け取ることになります。
返済できない場合保険が失効することも
借りっぱなしのお金の金額が解約返戻金の金額を上回ると保険が失効し、保障を受けられなくなります。いざという時に困るので、借りたらできるだけ早めに返しましょう。
契約者貸付制度の申込手順
保険会社に申請をしてから、1週間以内に振り込まれることが多いようです。具体的な申込手順は次の通りです。
- 保険会社に連絡
- 書類の発送
- 書類の記入
- 貸付金振込
まずは保険会社に連絡しましょう。保険証券を手元に用意しておくとスムーズに話が進みます。会社から書類が送られてきたら必要事項を記入し、書類を返送しましょう。後は待っていれば1週間程度で指定の口座に貸付金が振り込まれるはずです。なお、最近はインターネットから申込できる会社もあります。
契約者貸付制度の返済方法
すでに触れたように、契約者貸付に返済期限はありませんが、複利のため返済が遅れれば遅れるほど負担が重くなります。できるだけ早めに返すのがおすすめです。返済方法は次の2種類です。
一部返済
借りた額のうち、一部を返済します。好きなタイミングでできますが、返済金額の最低ラインが決まっている場合が多いです。
全額返済
元本と利息を一括返済する方法です。
まとめ
いかがでしたか?
生命保険の契約者貸付制度とは、解約返戻金を担保に、解約返戻金の70~90%程度の金額を保険会社から借り入れる制度です。複利計算されるといったリスクはあるものの、金利は消費者金融より高くありません。
保障を継続させながらお金を借りられるので、出費がかさんで保険を解約するかどうか迷っている方にも最適です。加入している保険会社に詳細を問い合わせた上で借りるかどうか判断するといいでしょう。
※2022年5月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以