20代の生命保険|保険の基本と加入する必要性の判断基準を解説
2022年3月12日
20代の方が生命保険に加入する必要はあるのでしょうか。多くの場合保険に入る必要性は無いと言われていますが、保険に加入すること自体は悪いことではありません。そこで今回は、生命保険に加入する必要性と判断基準を解説します。
保険選びに困っている方は多いのではないでしょうか。現在では生命保険会社だけをピックアップしても約40社もありますし、各保険会社が用意する保険は当然ひとつだけではありませんから、膨大な数から選ぶことになりますね。
各保険会社が2つずつ用意していた場合でも80種類、3つの場合は120種類ものなかから選ぶことになります。厳密に言うともう少し絞られてくるとは思いますが、こんなにたくさん選択肢があったら、どれが良いのか決められないですよね。保険を選ぶためには保険の基礎知識や選び方の判断基準を知っておく必要があります。そこで今回は、あなたにとってベストな保険を選ぶための知識をお伝えします。
保険の基本
保険と一口にいっても、生命保険をはじめ医療保険、自動車保険、バイク保険、火災保険や地震保険などさまざまなものがありますね。詳細を見ていくと、それぞれ選び方のポイントは異なります。保険そのものの仕組みが異なりますから、保険の選び方は一言では語れません。
そこで、まずは保険の基本を押さえましょう。基本を押さえることで、保険選びの際に納得のいく選択ができます。ここでは生命保険や医療保険などの、「人に対する保険」について見ていきます。
保険の仕組み
保険は、契約者から集めたお金をみんなの共有財産として使う仕組みになっています。みんなで、大きな財布ひとつを共有するイメージをすると分かりやすいでしょう。被保険者にケガや病気などの問題が生じた場合に、大きな財布からお金を出して助けようという考え方です。
13世紀〜15世紀あたり(中世ヨーロッパ時代)にあった、「ギルド」という組合のような組織がはじまりと言われています。ギルドでは、同じ職業の人同士でお金を積み立てて、働けなくなった時の資金源にしていたそうです。
保険には歴史があり「相互扶助」の考えが根本にあることが理解いただけたでしょうか。繰り返しますが、「大きな財布をみんなで共有する」イメージですね。
保険は万が一の事態に備えるもの
保険は「万が一」の事態に備えるものです。事故や病気などで急にたくさんのお金が必要になってしまった時や、収入が途絶えてしまうような事態に備えておくのが保険の基本です。「ほとんど起こらないけど、もし起きてしまったら困るもの」のためにお金を積み立てていく感覚ですね。
自分が備えたい(備えるべき)ものは何なのかを見極めて、必要最小限のお金を積み立てておく方が望ましく、備える必要のない事態にお金を積み立てるのはムダです。保険会社が余計な特約などをすすめてきた場合は疑った方が無難です。
高さと幅
これは主に生命保険に言われますが、保険選びの基本には「高さ」と「幅」といった概念があります。高さは保障してほしい金額を指し、幅は保障が続く期間を指します。つまりどれくらいの保障(金額)が、どれくらいの期間、継続してほしいかを考えることが保険選びのポイントです。
高さと幅は、収入や支出の状況、家庭状況によって異なります。例えば、独身であれば自分の葬儀費用だけ準備すれば十分と言えるでしょう。しかし結婚をして子供がいる世帯で、あなたが一家の大黒柱であればそうはいきません。妻の生活費や子供の養育費など、さまざまなお金を用意しなければいけませんね。
このように、自分の状況によって適切な高さと幅を考えることが保険選びの基本となります。
保険は定期的に見直すもの
保険は加入したら放っておいて良いものではありません。なぜなら身の回りの環境は、時間とともに変化していくからです。現在は独身でも、いずれは結婚し、子供を授かるかもしれません。また会社員生活を終え、引退したあとでは生活がガラッと変わりますよね。
ライフスタイルによって必要な保障は変わりますから、その都度、保障内容が適切かどうかを見直す必要があります。例えば子供が社会人になった時は、子供の養育費を考慮した保険は必要なくなります。人生においての節目はたいてい、保険の見直し時期でもあります。
保険に入る必要性を考えてみる
保険の基本を押さえたところで、保険に入る必要性を検討してみましょう。「保険は必要ない」といった態度から入った方が、保険を批判的に見ることができます。ここでは加入する前提を捨てて、「本当に必要か?」といった態度で保険を見てみましょう。
保険が必要な人
以下に、保険が必要な人の特徴を3つ挙げます。
保険に入る何かしらの目的がある
保険に入る目的がはっきりしているならば、保険に加入しても問題ないでしょう。保険はあくまでも、何かしらの目的を達成する手段です。保険に入ることそれ自体が目的ではなく、別に目的がある人は保険が必要な人と言えます。
例えば自動車保険を例にあげると「免許を取りたての子供が事故を起こしても家計に響かないように」といった考えは、しっかりとした目的ですね。
収入はそこそこあるが貯蓄がない(これから貯蓄する)
貯蓄のある方はわざわざ保険に入らずとも、保険で賄いたい部分を貯蓄で賄える可能性があります。しかし、これから貯蓄をするという方は、貯まるまでの間に万が一のことがあると困ります。したがって「お金が貯まるまでの間の事態に備えたい」といった目的で保険が必要になる場合が考えられます。
このようなケースを「高さと幅」に当てはめると、必要最低限の保障を短期間だけ加入するといった保障が妥当と言えますね。このように目的がはっきりすると、保障内容がおのずとイメージできるようになります。
保険に入っていないと落ち着かない
これはちょっと特殊な例ですが、保険に入っていないと漠然とした不安にかられてしまう方は少なからずいると思います。原因は保険の基本が理解できていないことと、不安の正体が分からないことが考えられます。
しかし、月に1,000円〜2,000円程度の安い保険に入って落ち着くのであれば、とりあえずそちらで不安を和らげてから基本を学んだり検討をしたりする方法もあります。
保険が不要な人
以下に、保険が不要な人の特徴を3つ挙げました。
貯蓄が十分にある
貯蓄が十分にある人は保険に加入する必要はありません。保険の基本は「大きな財布をみんなで共有する」イメージでしたね。貯金が十分にある状態は、大きな財布を一人で所有しているということです。
貯金だけで不測の事態に対応できるのであれば、保険に加入する意味はありません。
なんとなく入ろうとしている
これは新社会人によくあるケースでしょう。親や先輩社員、上司にすすめられたからといった理由でよく知らずになんとなく加入しているパターンです。こういった場合、保険は不要です。不要というよりも、一度目的を確認するべきですね。
保険になんとなく入るのはきわめて危険です。毎月、知らず知らずのうちによく分からないお金が減っていくことになります。しかも保険期間によっては長期で減っていくのですから、なんとなくの加入は絶対にやめましょう。
まだ若く、独身である
20〜30代とまだ若く、独身である人には生命保険(死亡保険)は不要と言って良いでしょう。子供がいるのであれば、生命保険や学資保険などを検討する必要性もありますが、そうでない場合は貯金をした方が良いです。
ただし、病気やケガをしたときに医療費が払えるか心配、という方は医療保険の検討が必要です。収支のバランスを考慮して検討してください。
保険に加入する目的と、目的別保険の選び方
保険に加入する目的を明確にしましょう。全体を通して判断基準になるのは、主に次の3点です。
- ・保険金をいくらにするのか
- ・保障の幅(金額)をどうするのか
- ・貯蓄性と保障のどちらを優先するのか
不安をカバーできる保険金額を設定しましょう。また、積み立て型の保険は文字通り保障を受けながらお金を貯められますが、毎月の保険料が高くなります。
一方、掛け捨て型の保険は毎月の保険料が安く保障を得られるものの、積み立てができません。ただし、いつ解約しても損をしにくいため、ライフステージに合わせて見直しできます。
上記を踏まえ、目的ごとにどうやって保険を選べば良いのか確認していきましょう。
子供の学費を貯めたい
保険で子供の学費を積み立てるのであれば、学資保険に加入するのが良いでしょう。学資保険で注目すべきポイントは、次の3点です。
- ・祝い金や満期保険金の金額
- ・返戻率
- ・保障内容
まず、お子さんの学費のうち、いくらを保険で積み立てるのかを決めしましょう。
次に返戻率の高い保険を選びましょう。返戻率とは、払込保険料に対して戻ってくる祝い金や満期保険金額の割合のことです。例えば返戻率が110%で払込保険料が300万円だった場合、330万円の保険金を受け取れます。
また、学資保険の場合も要らない保障はつけるべきではありません。不要な保障をつけると返戻率が下がり、本来の目的であった積み立てがしにくくなるためです。
病気・ケガに備えたい
病気やケガに備えるのであれば、医療保険に加入することになります。医療保険に加入すると、入院や手術、通院をした際の費用を賄えます。入院や手術をすると、高額な費用がかかる上に収入が途絶えるので、貯金や保険で備えましょう。
医療保険を選ぶ際に特に注意するべきなのは次の点です。
- ・入院給付金日額をいくらにするのか
- ・特約をどの程度充実させるのか
がんに備えたい
がんは日本人であれば誰でも患う可能性のある病気です。医療保険でがん特約をつけることもできますが、がん専用であるがん保険に加入する選択肢もあります。
加入する際は
- ・上皮内新生物の取扱い
- ・通院保障の手厚さ
- ・あなたががんになる可能性
を考慮しましょう。
がんは悪性新生物と上皮内新生物の2種類がありますが、上皮内新生物の場合は給付金をもらえなかったり、減額されたりする保険もあります。
また、がんの発症率は50代を過ぎてから一気に伸びるため、若い内から必ず必要とは限りません。ただ、がんになってからでは加入できないので、健康なうちに加入する必要があります。
老後資金を貯めたい
老後資金を保険で積み立てる場合、次のような選択肢があります。
- ・養老保険|満期を迎えると、死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れる
- ・低解約返戻金型終身保険|保険料払込終了まで返戻率が低い代わりに保険料が割安
- ・個人年金保険|保険金を年金として受け取れる
老後資金を必ず保険で積み立てる必要はありません。ただ、保障がついてくるため、いざという時の出費を抑えながら貯蓄できるメリットがあります。
死亡に備えたい
死亡保険に加入すると、あなたが亡くなった後も大切な人の生活を経済的に支えられます。死亡保険に加入する際は、次の点に注目しましょう。
- ・死亡保険金の金額
- ・受取人を誰にするのか
死亡保険金は残された遺族が生活していくためのものなので、十分な額を受け取れるよう設定しなければなりません。ただし、多すぎると毎月の保険料が高額になるため、要注意です。
また、受取人を誰にするのかは特に大切です。死亡保険金を受け取る人が誰なのかによってかかる税金の額がかなり異なってきます。
火災に備えたい
家を購入した人であれば、購入した流れで火災保険に加入するかと思います。ただ、おすすめされるがままに火災保険に加入してしまうと、不要な保障がつき保険料が高くなってしまうので気をつけましょう。火災保険を選ぶ際に検討すべきポイントは次の通りです。
- ・保障範囲(火災、落雷、地震、水漏れ、盗難、爆発等)をどこまでにするのか
- ・保険金額をいくらにするのか
まとめ
いかがでしたか?保険の基本は理解できたでしょうか。まずは「保険は要らない」という態度で保険選びに臨むことが大切と言えます。保険が必要だと感じた場合は、目的や保障内容を明らかにして、どんな保険に加入すれば不安をカバーできるか考えてみてください。
保険選びのコツは、実は自分自身をよく理解することだったのです。膨大な選択肢に翻弄されずに、自分に合った保険を見つけましょう!
※2022年3月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以