予定利率(よていりりつ)とは|生命保険料に影響する仕組みを徹底解説
2022年7月23日
予定利率は生命保険の保険料増減に影響する要素とされており、予定利率が高いと保険料はそれだけ安くなります。この記事では、主な仕組みとお得な生命保険を選ぶ際に役立つ知識、「予定利率」と「標準利率」の違いについても紹介していきます。
予定利率(よていりりつ)とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りを指します。保険会社は集めた保険料を貯めるだけではなく、運用をして保険金など将来支払うお金を準備しているのです。
この運用利回りを元に保険料を決めるため、一般的に予定利率が高いと保険料は低くなります。契約後、予定利率は基本的に変更されるものではなく、満期まで契約時の利率で運用されます。
そこでこの記事では、生命保険を選ぶ際、特に昔の保険の見直しをする際に、ぜひとも注目してほしい予定利率に関して解説していきます。
予定利率とは保険料を決める一つの要因
冒頭でもお伝えしたように、予定利率とは生命保険において契約者に約束する運用利回りのことです。これだけではどういうことかイメージがつかないでしょうから、少し詳しくご説明しましょう。
保険会社はそれぞれの保険料を決めるとき、「基礎率」に基づいて算出します。この基礎率は、今回の「予定利率」、そして「予定死亡率」、「予定事業費率」の3つから成り立っています。
予定利率
予定利率とはご説明の通り、運用利回りのことです。保険会社は、契約者から支払われる保険料を一か所に集めて万が一の際にそこから保険金を支払います。
契約者から集めた保険料はそのままにせず、投資などの運用で増やしていきます。
つまり予定利率が高ければ、運用での利益が見込めるため、保険料が安くなるなど契約者にとってのメリットが大きくなります。ただ、お伝えの通り予定利率はあくまでも基礎率の要素の一つです。他の要因も少し見てみましょう。
予定死亡率
予定死亡率とは、将来の保険金などの支払いをする際に必要金額を算出するための数字です。これは、過去の統計から、年齢・性別での死亡者数を予想して算出します。簡単に言うと、契約期間中に死亡する確率のことで、年齢が上がるほど予定死亡率も上がっていきます。
予定事業費率
予定事業費率とは、保険会社が保険業を運営していくために必要となる経費の割合で、広告費・人件費・管理保全の費用・賃料などの事業費を予想したものを言います。予定事業費率が上がれば上がるほど保険料等で補てんしなければならなくなるので、予定事業費率が低いと保険料も安くなります。
予定利率の仕組み
いかがでしょうか。予定利率についてなんとなくイメージできたでしょうか。それでは、予定利率の詳しい仕組みと、予定利率が変動することによって契約者にとってどのような影響があるかをご説明していきます。
予定利率と金利
まず一点気をつけてほしいことが、予定利率は金利と全くの別物だということです。実際に例を挙げてご説明をしてみましょう。
例えば、保険料100万円の一時払いの終身保険が、予定利率1%で10年後に解約したら105万円になるとします。10年で5万円増えているので、金利で見ると年利0.5%となります。
つまり、「予定利率=金利」ではないのです。
予定利率1%とは、積み立てたお金が毎年1%増えるわけではなく、保険会社が必要経費や万が一の時に支払う金額を除いたお金を毎年1%で運用するという意味です。
銀行の定期預金の金利と単純に比較できるものではないので注意してください。
予定利率と標準利率
予定利率という言葉を聞いたことがある方は「標準利率」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。予定利率と標準利率の違いについても簡単に解説します。
予定利率とは、ご説明した通り、保険会社が生命保険の契約者に対して約束する運用利回りのことですね。一方、標準利率とは、金融庁が各保険会社に向けて設定している予定利率の目安となる数値です。
つまり、この標準利率が時代によって変動すると、それに応じて各保険会社の予定利率にも大きな影響を与えます。標準利率は、年々下がる傾向にあります。
標準利率の移り変わり
契約年月日 | 標準利率 |
1996年4月2日~1999年4月1日 | 2.75 |
1999年4月2日~2001年4月1日 | 2.00 |
2001年4月2日~2013年4月1日 | 1.50 |
2013年4月2日~2017年4月1日 | 1.00 |
2017年4月2日~ | 0.25 |
予定利率で生命保険を見分けるポイント
いかがでしょうか。ここまで読んでいただけたのであれば、ある程度予定利率のことも理解してもらえたかと思います。予定利率を見ることが賢く保険を選ぶヒントにもなりますので、押さえておくべきポイントをご説明します。
予定利率が高いと保険料が下がる
予定利率とは、運用利回りのことだとは度々ご説明しています。結論から言いますと、この予定利率が高くなると、契約者が支払う保険料が安くなる傾向にあります。では、なぜ保険料が安くなるかというと、予定利率が高くなると、それだけ運用で利益を発生させられる見込みが立ちます。その結果、保険料が割り引かれるのです。
保険料の設定には他の要因もあるため一概には言えませんが、予定利率が高いと保険料が安いということは覚えておきましょう。
予定利率が高いと返戻率も上がる
予定利率が高いと返戻率も上がります。理由はいたってシンプルで、予定利率は運用利回りのことなので、運用利回りが高くなれば高なるほど、解約返戻金は増えていきます。また、上記のように保険料も安くなるので、返戻率が上がります。
予定利率で保険を選ぶ時代ではない
一時払い終身保険の標準利率は2020年1月から0%に下げられ、保険会社も運用が難しくなっています。保険商品の販売停止や予定利率の引き下げが続いているのが現状です。
そのため、保険選びの際はあくまで参考程度にし、保険の本質である保障内容やご自身の希望を優先させたほうがいいでしょう。
昔の保険はお得なものも多い
標準利率は年々下がっていますが、昔の保険には予定利率が5%前後と高いものが多く、上記のように保険料・返戻率にも好影響を及ぼしていました。
保険の営業マンによっては、自身の契約数を伸ばすために、昔の生命保険の切り替えを提案してくるケースも考えられます。昔の保険の見直しを考えている方は、予定利率を下げてまでも、最新の保険に切り替える必要があるのかをきちんと考えてみましょう。
確かに、最新の特約などには魅力的なものが多いかもしれません。しかし、保険のベースともなる保険料や返戻率を見落とさないようにしたいですね。
まとめ
予定利率についてお分かりいただけたでしょうか。予定利率を理解していると、生命保険を選ぶ時の参考になります。
しかし、生命保険選びは、予定利率だけでは決められませんし、「昔の保険を新しいものに見直したい」と考えていてもかなりお得な生命保険に加入しているかもしれません。生命保険選びに関してご不明点がありましたらFPに相談してみましょう。
※2022年7月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以