資産形成するなら新NISAと保険どっちがいい?

2023年11月14日

2024年から制度が恒久化され、非課税投資枠が拡大される新NISA。資産形成にぴったりですが、老後の資産を貯める方法なら保険もあります。新NISAと保険、どちらがいいのでしょうか。

この記事では新NISAの特徴を解説した後、変額保険、個人年金保険と比較検証していきます。ぜひ選択の際に役立てていただければ幸いです。

新NISAとは

まずは新NISAの概要を理解しましょう。現行NISAとの違いもご説明します。

新NISAの概要

新NISAとは現行NISAを抜本的に拡充・恒久化させた新しいNISA制度で、2024年1月1日からスタートします。

NISA(少額投資非課税制度)は、個人が少額から資産運用することを支援する税制優遇制度です。通常、株式や投資信託で利益を得ると約20 %の税金がかかりますが、NISA口座で運用すると税金がかかりません。確定申告をする必要もなく、初心者も参入しやすいです。

現行NISAとの違い

新NISAと現行NISの主な違いは、以下の5つです。

  • ・つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能
  • ・非課税保有期間は無期限
  • ・年間投資枠のアップ(つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、合計で年間360万円)
  • ・非課税保有限度額は最大1,800万円(成長投資枠は1,200万円で、売却後は枠を再利用できる)
  • ・制度実施期間の恒久化

現行NISAはつみたてNISAと一般NISAの2種類があり、どちらか一方を選ばなくてはいけませんでした。しかし、新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができます。

つみたて投資枠で投資できるのは、長期・積立・分散投資に適した投資信託です。対して、成長投資枠は上場株式やETF、投資信託など幅広い商品に投資できます。

保有期間が無期限になり、投資枠が上がったことで、より本格的かつ長期間の資産運用が可能です。

新NISAと変額保険はどっちがいい?

資産形成に使える保険として知られている変額保険。新NISAと変額保険はどちらがいいのでしょうか。比較検討してみます。

変額保険とは、保険料を株式や債券、投資信託などで運用し、運用の結果によって保険金や解約返戻金が変動する商品です。うまく運用できれば受け取る額が上がりますが、下がるときもあります。ただし、死亡・高度障害保険金は基本金額が設定されており、この額から下がることはありません。

5年や10年など保険期間が決まっている有期型と、一生涯保障が続く終身型の2種類があります。有期型は養老保険で、満期になると満期保険金が支払われるのが特徴です。終身型は、将来解約することで解約返戻金を受け取れます。満期保険金や解約返戻金は、運用成果によって払込保険料総額を下回る場合があり、注意が必要です。

また、年金形式で保険金を受け取れる変額個人年金保険もあります。

新NISAと変額保険の比較

新NISAも株式や投資信託に投資しており、投資実績によってお金が増えたり減ったりします。そのため、新NISAも変額保険も景気がいいときは得をし、悪いときは損をすることになるでしょう。ここでは、両者の違いをもう少し詳しく解説します。

変額保険で資産形成するメリット・デメリット

変額保険で資産形成をした場合、新NISAと比べて以下のメリット・デメリットがあります。

【メリット】

  • ・死亡・高度障害状態時に保険金を受け取れる
  • ・運用をプロに任せられる
  • ・生命保険料控除を活用できる

死亡・高度障害保険金には最低保証があり、万が一のときに安心です。また、運用はプロが行うため、新NISAと違ってどの銘柄に投資するか考える必要はありません。

変額保険は生命保険料控除の対象で、契約期間中は年末調整や確定申告時に申し出ることで所得税や住民税の負担を軽減できます。

保障を得ながら資産形成できるのが、変額保険の強みです。

【デメリット】

  • ・運用コストが高い
  • ・健康状態によっては加入できないことがある
  • ・年齢が上がると投資に回せる保険料が少なくなる

変額保険は死亡保障の機能が付いているため、単純に投資信託を購入するより運用コストがかかります。

また、保険は健康状態によって加入を断られるケースがあります。持病のある方はどうしても入りにくいです。

さらに、年齢が上がるごとに死亡リスクが上がり、投資に回せる保険料が少なくなるのもデメリットです。結果として満足な投資結果にならない可能性もあるので覚えておきましょう。

新NISAで資産形成するメリット・デメリット

一方、新NISAは変額保険と比べて以下のメリット・デメリットがあります。

【メリット】

  • ・自分の投資スタイルに合わせて積極的に投資できる
  • ・年末調整や確定申告は不要

変額保険は自分で投資先を決める必要がないのがメリットでしたが、積極的に投資したい方は自分で銘柄を決めたいですよね。新NISAはコツコツ積立投資をすることも、好きなタイミングで個別株を購入することもできます。そのため、自分の投資スタイルに合わせて運用できるのがメリットです。

年末調整や確定申告は不要で、面倒な手続きをしなくていいところも便利ですね。

【デメリット】

  • ・自分で投資対象を選ばなければならない
  • ・非課税投資枠に上限がある

投資に興味があっても、投資先を自分で決めるのが苦手な方もいるでしょう。元本保証がなく、運用は自己責任なので難しく感じるかもしれません。また、現行NISAより非課税投資枠は上がりますが、上限があります。

新NISA・変額保険が向いている人とは

新NISAも変額保険も元本割れリスクがあり、運用益が非課税です。どちらが自分に合っているか悩みますよね。

変額保険は死亡保障と資産運用がセットになっているため、保障を得ながら資産形成したい方に向いています。自分の老後資金だけではなく、遺族の生活も心配している方に適しているでしょう。

一方、保障はあまり必要なく、積極的に資産運用したい方は新NISAがおすすめです。

新NISAで投資をしたいけど、遺族のための保障も少しほしいという方は、定期保険や終身保険と併用するのがいいかもしれません。割安な保険料で高額な死亡保障を付けたい方は定期保険、一生涯の保障を重視する方は終身保険がぴったりです。

十分な資金があり多少のリスクが取れる方は、新NISAと変額保険を併用してもいいでしょう。

新NISAと個人年金保険はどっちがいい?

老後資金を準備するなら、個人年金保険もおすすめです。新NISAとどちらがいいか比較してみます。

個人年金保険とは

個人年金保険は、公的年金とは別に自分で将来のために年金を用意するための商品です。60歳や65歳までは保険料を支払い、年金受給開始になったら年金形式(一括も可能)で保険金を受け取ります。

投資信託などで運用する「変動個人年金保険」と、契約時の予定利率で運用する「定額個人年金保険」があります。変動個人年金保険は運用成果で受け取る額が変わるので、インフレに強いです。

定額個人年金保険は利率が低いときに契約すると不利ですが、将来受け取れる金額が確定しており、安心できます。

新NISAと個人年金保険の比較

ここからは新NISAと個人年金保険を比べてみましょう。

個人年金保険で資産形成するメリット・デメリット

個人年金保険で資産形成する場合、メリット・デメリットは以下の通りです。

【メリット】

  • ・定額個人年金保険は年金額が確定している
  • ・変動個人年金保険は投資に詳しくなくても資産運用できる
  • ・生命保険料控除を活用できる

定額個人年金保険は契約時に年金額を確定できるので、投資実績によって増えたり減ったりすることはありません。受け取れる額が事前に分かっているのは大きな強みです。変動個人年金保険は、運用をプロが行うため、投資に詳しくなくても保険で資産運用できます。

また、条件を満たすことで生命保険料控除(個人年金保険料控除)の対象になります。

【デメリット】

  • ・途中で解約すると元本割れとなる
  • ・あまり大きく増えない

個人年金保険は、保険料払込期間中に解約すると解約返戻金を受け取れますが、基本的に元本割れします。

定額個人年金保険、変動個人年金保険ともに投資と比べるとあまり大きくお金は増えません。さらに定額個人年金保険はインフレに弱いというデメリットもあります。

新NISAで資産形成するメリット・デメリット

次に、個人年金保険と比較した場合の新NISAのメリット・デメリットをご紹介します。

【メリット】

  • ・投資によって大きくお金が増える可能性がある
  • ・途中で現金化しやすい

新NISAは投資のための制度なので、ある程度のリスクがある代わりに大きくお金を増やせる場合があります。うまくいけば、個人年金保険に加入するより十分な老後資産を築けるかもしれません。

また、個人年金保険は途中解約しにくいですが、新NISAは好きなタイミングで現金化できます。定年退職を迎える前に現金が必要になった場合に助かります。

【デメリット】

  • ・自分の運用次第で将来受け取る額が決まる
  • ・元本割れリスクがある

投資成績によってどのくらいお金が増えるか決まるので、運用次第で明暗が分かれます。元本割れリスクがあるため、投資の勉強をしてから始めたほうがいいでしょう。

新NISA・個人年金保険が向いている人とは

老後資金を貯めたいけど、できるだけリスクを取りたくない方は個人年金保険、多少のリスクが取れる人は新NISAが最適です。

個人年金保険は投資ほど大きく増えませんが、定額個人年金保険なら年金額が確定しています。変動個人年金保険は、運用次第では元本割れすることがありますが運用はプロに任せられます。新NISAより商品の選択肢が少ないため、制度や商品内容に詳しくなくても始めやすいです。

一方、多少リスクはあってもお金を大きく増やしたい方や、自分で運用したい方は新NISAがおすすめです。

もちろん個人年金保険と新NISAの両方を使うのもいいでしょう。個人年金保険で必要最低限の年金を確保し、余剰資金を使って新NISAで投資をするとうまく老後資金を形成できるかもしれません。

まとめ

今回は新NISAと資産形成に使える保険として変額保険、個人年金保険と比較してみました。新NISAは積極的に投資をして資産を増やしたい方に向いています。リスクを抑えて死亡保障を得ながら資産形成するなら変額保険、老後の資産を着実に準備したい方は個人年金保険がおすすめです。

どれが向いているかは人によって違うので、ぜひメリットとデメリットを比べてみてください。金銭的にゆとりのある方は併用するのもいいでしょう。

※2023年10月現在の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以