積立保険と掛け捨て型保険を徹底比較|貯蓄性・返戻率で見た選び方

2022年2月28日

生命保険には「積み立て型」と「掛け捨て型」があり、どちらのタイプに加入するかは悩みどころですが、保険で資産運用や貯蓄をするのであれば積立保険の方がおすすめです。しかし、積立保険に加入すると見直しが少々難しくなりますので、これから生命保険に加入する際の選び方について解説していきます。

生命保険は大きく分けて「積み立て型」と「掛け捨て型」とがあります。保障内容や保険料は様々ですから、自分や家族の万が一に備えたい場合や、老後に備えたい場合、生命保険に入ることを考え始める時に、どの保険に入れば良いのか悩むことも多いでしょう。

生命保険の「掛け捨て型」と「積み立て型」という2つのタイプが、それぞれどういう保険なのかはこれから見ていきます。まず、この2つのうちのどちらのタイプを選ぶかを決めれば、山のようにある生命保険商品も、選択肢を絞りやすくなります。

「捨て」なんて言葉が入っているので、「掛け捨て型」の方が「積み立て型」に比べて損なイメージを持つ場合もあるかと思います。しかし、言葉だけで損か得かを判断してはいけません。

それぞれがどういう保険なのかを知れば、どちらを選べば良いのか、きっと見えてくるはずです。

積立保険と掛け捨て型保険の比較

生命保険を選ぶポイントを押さえた上で、「掛け捨て型」と「積み立て型」どちらのタイプを選べば良いのか考えるために、それぞれの特徴を比較してみましょう。

積立保険とは何か?

積立保険とは、支払った保険料が解約返戻金や満期時の保険金として積み立てられるものの、保険料が「掛け捨て型」に比べて高めの保険です。

保険料が高めなのは、「積み立て型」が文字通り貯蓄重視の保険で、保険料に貯蓄分(解約返戻金や満期返戻金)が含まれているためです。保険料はずっと変わらず一定です。

掛け捨て型保険とは何か?

掛け捨て型保険とは、支払った保険料が解約返戻金や満期返戻金として戻ってこない(戻ってきたとしても非常に少ない)代わりに保険料が安いタイプの保険です。保険料が安いのは保障重視で、貯蓄にあたる部分(解約返戻金や満期返戻金)が保険料に含まれないためです。

ただし、更新ごとに保険料が上がるので、その点は要注意です。以下にそれぞれの特徴を表にまとめて比較してみましょう。

積み立て型と掛け捨て型生命保険の主な違い

掛け捨て型と積み立て型の主な違いは以下のようなものがあります。

掛け捨て型 積み立て型
保険のタイプ 保障型 貯蓄型
中途解約時の返戻金 ×
★あったとしても非常に少ない

★支払った保険料の総額を下回る可能性あり
満期保険金 × 終身保険 ×
養老保険
保険料 安い
★更新ごとに高くなる
高い
★一定で変わらない
保障期間 一定期間 終身保険 一生涯
養老保険 一定期間
代表的な保険の種類 定期保険 終身保険
養老保険
  • ・掛け捨て(定期)型は保険の更新ごとに保険料が上がる
  • ・掛け捨て(定期)型は保険の見直しがしやすい
  • ・終身保険の保障は一生涯続く
  • ・保険料の払い込み期間は自由に決められる
  • ・保険金を必ず受け取れる

など、基本的には上記のような違いがあります。

積立保険のメリットとデメリット

次に、「積み立て型」のメリットとデメリットを見ていきましょう。

積み立てタイプのメリット

解約時に返戻金が戻ってくる

保障分に加えて、積み立て分も保険料として支払っているので、解約した際には、その積み立て分が戻ってくることになります。しかし、保障分は戻ってこないため、中途解約の場合にはそれまでの保険料の支払い総額を返戻金が下回ることが多いです。

支払った保険料の総額よりも多くの保険金が戻ってくる場合がある

貯蓄重視タイプの保険は、契約内容によっては満期時(もしくは中途解約の場合であっても)に、利率分が上乗せされて戻ってくる場合があります。

毎月の積み立てができる

支払う保険料には保障分に加え、積み立て分が含まれていますので、保険料を支払うことによって、同時に積み立て貯蓄をしていることになります。

積み立てタイプのデメリット

保険料が高い

保障分に加えて貯蓄分の積み立て分が含まれており、掛け捨て型に比べて割高です。

支払った保険料の総額よりも、受け取る保険金の額が下回ることがある

特約などを付けて保障を手厚くすれば、保険料のうちの保障分の割合が多くなり、積み立て分として受け取る保険金の額が支払った保険料の総額を下回ることがあります。

掛け捨てタイプのメリットとデメリット

それぞれの特徴を知った上で、次にメリットとデメリットを整理してみましょう。まずは「掛け捨て型」のメリットとデメリットです。

掛け捨てタイプのメリット

保険料が安い

保障分だけを保険料として支払うので、費用を抑えられます。

保険料を抑えた上で、万が一に備えた保障を得られる

掛け捨て型は保障重視タイプの保険です。満期返戻金や中途解約での返戻金がない(あったとしても少額)分、保険料が安くても積み立て型と同等、もしくはそれ以上の保障を得ることができます。

掛け捨てタイプのデメリット

支払った保険料は戻ってこない(戻ってきたとしてもかなり少額)

保障分しか保険料として支払っていないので、返戻金は確保されていません。

生命保険の掛け捨て型は、一定期間で保障が切れてしまうものが多い

「保障期間=保険料の払込期間」のものが多いです。

積立保険か掛け捨て型保険か|生命保険を選ぶポイント

積立保険と掛け捨て型保険、どちらのタイプを選ぶのが良いのかを比較するために、まずは生命保険を選ぶためのポイントを押さえておきましょう。

一生涯の保障や安心がほしいなら積み立て型

掛け捨て型と積み立て型保険の大きな違いは、保障が一生涯続くかどうかという点にあります。終身保険は契約日から死ぬまで保障が一生涯続くという特徴を持った保険です。

保険料を安く抑えたいなら掛け捨て型を選ぶ

保険料をできるだけ安く抑えたいという希望があれば、生命保険の掛け捨て型がおすすめです。終身型には貯蓄性があるため保険料に上乗せする形で将来的な積み立てができますが、掛け捨てタイプには余分な積み立て金を支払わない分、保険料が安く抑えられるという利点があります。

ただし、更新ごとにどんどん保険料が高くなっていきますので、早めに加入しないと割高になる可能性があります。

積み立て型生命保険は相続税対策になる

生命保険には死亡保険金がありますが、受取人が誰なのかによって、「相続税」「所得税」「贈与税」のいずれかの課税対象になります。ただ、それぞれに非課税限度額や控除額があるため、一定額を超えた場合にのみ税金がかかります。

ケース 契約者 被保険者 受取人 税金
契約者=被保険者 A A B 相続税
相続税の課税額=(受け取った保険金)-{(生命保険の非課税限度額)+(相続税の基礎控除額)}
受取人が配偶者の場合は1億6千万円の税額軽減特例あり。
契約者=受取人 A B A 所得税
一時所得の課税額={(受け取った保険金)-(支払った保険料総額)-(特別控除50万円)}÷2
すべて違う人 A B C 贈与税
贈与の課税額= (年間贈与額)-(基礎控除110万円)
生前贈与のため年間110万円の基礎控除がある。

さらに、相続税には「3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数)」の基礎控除がありますので、非課税金額となる制度を利用して、相続税を保険金で支払うための対策を行うことができます。

生命保険に加入する必要性を判断するポイント

生命保険に加入する目的は何か?

生命保険に色々な種類・タイプがあるのはなぜか?それは、みんなが同じ目的で生命保険に加入するわけではないですし、求めるものも様々だからです。

まずは何のために生命保険に加入をするのか、どんな保障を必要としているのかを考えましょう。

例えば、万が一、一家の大黒柱である自分が死んでしまった場合、残された家族が生活に困らないようにということであれば、死亡保障が充実したタイプの生命保険が良いでしょう。

または、年金だけでは老後の生活が不安だから・・・ということであれば、老後の資金確保を目的とした貯蓄型の生命保険が良いかもしれません。

加入の目的を明確にすれば、山のようにある保険商品の中でも、どのタイプを選べば良いのかが分かります。

保障を必要とする契約期間はいつまでか?

次に、保障を必要とする期間を考えてみましょう。子供が成人するまで?自分の定年まで?それとも一生?保障を必要とする期間によって、選択する保険の種類も違ってきますし、契約内容や保険料も違ってきます。

必要な保険金や給付金の金額はいくらか?

加入目的と保障を必要とする期間が明確になったなら、そのために必要なお金がいくらくらいなのかを考えてみましょう。 一家の大黒柱が死亡した場合に備える保険なら、残された家族の生活費がどれくらい必要なのか?子供の教育費はいくらかかるのか?

貯蓄額や子供の人数、家は持家なのか賃貸なのか、その他にどんな保険に入っているのか、それぞれの条件によって必要な金額にはかなり幅があります。

老後の資金確保を目的とした場合も同じように、老後の必要となる生活費がいくらなのかだけではなく、支出、収入、貯蓄、その他の保険などによって、生命保険で確保したい資金は違ってくるでしょう。ですから、様々な要素を絡めて検討する必要があります。

保険料の払込期間と払込保険料は適切か?

受け取れる保険金や給付金は多ければ多いほど、保障期間は長ければ長いほど、保障の範囲は広くて充実しているほど安心ですね。ただ、保障内容が充実すれば充実するほど、支払う保険料は高くなっていきます。

表:同一の条件で契約期間を変更した場合の月払い保険料の変化

項目 期間を延ばす 期間を短縮する
保険期間 月払い保険料は上がる 月払い保険料は下がる
保険料払込期間 月払い保険料は下がる 月払い保険料は上がる

しかし、保険料の支払いによって生活を圧迫してしまっては本末転倒。しかも、中途解約で返戻金がある保険であっても、もし保険料の支払いができなくなって保険契約を解約しなければいけなくなった場合には、返戻金はそれまで支払った保険料の総額を下回る可能性もあります。

一概にどっちが良いとは言えませんが、もし月々の保険料を安くしたいのであれば保険料は長く払い続ける方が良いですし、支払う保険料の総額をできるだけ少なくしたいのであれば、払込回数を減らすといった考えが当てはまります。

また、保険料の払込期間にも注意しなければいけません。例えば、定年後も働いていた時と同じだけの保険料を支払わなければいけないとなると、決して楽ではないですよね。ですから、ここまでに見てきた3つのポイントを押さえた上で、保険料の払込期間と保険料に無理のない保険を選ぶ必要があります。

まとめ

「掛け捨て型」と「積み立て型」、それぞれに特徴があって、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分が死んだ時の葬儀にかかる費用なども見越し、一生涯にわたる保障がほしいという場合には「積み立て型」タイプの終身保険が良いでしょう。

とりあえず加入するなら『掛け捨て型』

「掛け捨て型」の定期保険をずっと更新していくという考え方もあるかもしれません。ただ、「掛け捨て型」の場合、何歳になっても更新できるというわけではなく、更新できない年齢に達してしまう可能性もあります。

とりあえず、子供が成人するまでに自分に万が一のことがあった場合に備えて、しっかり保障を確保しておきたいという場合には、「掛け捨て型」の保険が良いかもしれませんね。

「掛け捨て型」であれば、子供の教育費にお金がかかる時期に、保険料の負担を軽くした上で、万が一の保障は確保できますからね。

貯蓄が苦手なタイプなら『積み立て型』

また、今は低金利の影響で「積み立て型」の生命保険に加入しても、解約返戻金や満期返戻金が支払った保険料の総額にぐっと上乗せされて戻ってくるわけではありません。

自分で貯蓄をするのが苦手なタイプの人は、保険料を支払うことで、自動的に貯蓄分が積み立てられていく、「積み立て型」を選ぶのも良いかもしれません。

貯蓄や資産運用は保険とは別にするんだという場合は、必要な保障だけを「掛け捨て型」の保険で確保すれば良いですね。このように、「掛け捨て型」と「積み立て型」、一慨にどちらのタイプの保険が良いとは言えません。

しかし、生命保険を選ぶポイントをちゃんと押さえれば、自分にはどちらのタイプが合っているのかが見えてくるはずです。

※2022年2月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以