始まりから考える生命保険の必要性|必要な人とそうでない人

2023年3月14日

皆さんは生命保険の必要性について考えたことがありますか?「生命保険は入っていて当たり前」といった風潮を感じたことはありませんか?また、その雰囲気に流されて加入してしまった方もいらっしゃるかもしれません。

加入する前には一度、生命保険の必要性を検討することをおすすめします。もしかしたら、必要がないのに加入しているかもしれません。不要な保険に加入していたら、役に立たないどころかムダな支出が増えてしまいます。

今回は生命保険の始まりをおさらいし、そこから生命保険に加入する目的や必要性を検討してみましょう。

1.生命保険の必要性を起源から考える

生命保険の始まりは、誰かに何かあった時のお金を皆で出し合って積み立てておくことです。生命保険の目的を、始まりに基づいて考えてみましょう。

生命保険はまとまったお金を用意するために作られた

生命保険の起源は中世ヨーロッパまでさかのぼります。当時、人々は職業ごとに組合を作り、困ったことがあった時や冠婚葬祭のために皆でお金を出し合って貯めておき、万が一の時に備えていたのです。

生命保険はお金を積み立てる役割がある

生命保険には、お金を皆で「積み立てる」役割があります。現在、販売されている生命保険には積み立てることが目的の生命保険もあります。以下に、簡単に紹介します。

◆養老保険
養老保険は「生死混合保険」と呼ばれるものです。被保険者が死亡した場合は契約時に設定した死亡保険金が、満期まで生存していた場合は生存保険金が支払われるようになっています。死亡時も生存時も保険金が支払われるために、生死混合保険と呼ばれます。

老後の資金を確保するのに適している保険です。

◆学資保険
学資保険は、子供の学費など養育費を用意するための保険です。保険契約時から満期日まで払込みを続けることで満期保険金を受け取れます。保険契約者(親)が死亡した場合は、それ以降の払込みが免除されます。

不測の事態に備えるのが生命保険の役目

生命保険の根本概念は「相互扶助」です。保険契約者のメリットは「少額のお金を納めることで、もしもの時にまとまったお金が得られること」です。例えばあなたが、妻と子供を養っている立場だとします。もし自分が死亡した場合、妻と子供は誰が養う?と考えると不安になってきませんか?生命保険にはそういった不安を取り除く役割があるのです。

現在は、まとまったお金の用意や積み立てるよりも、こちらの目的で加入する人が多いでしょう。

生命保険が必要かどうかは「何が不安なのか?」について考えよう

生命保険に加入する目的が「不安を取り除くこと」だとすると、「自分は何に対して不安を抱えているのか」を明らかにすることが重要になります。つまり生命保険の必要性を検討する際は、保険に加入する目的を明らかにすることが鍵です。

そして目的を明らかにするには「何に不安を抱えているのか?」と自分に問いかけてみましょう。そうすることで、自分にとっての生命保険の位置づけが見えてきます。何のために生命保険に加入するのかをしっかりと理解していれば安心感も増しますね。

2.生命保険の必要性がある人

さてここで、生命保険が必要な人の特徴を4点紹介します。もちろんこの特徴が全てではありませんので参考程度にご活用ください。

お金を残したい相手がいる

生命保険の保険金が支払われるのは、養老保険などを除いて基本的に被保険者が死亡した時です。ですから、加入する際はお金を残したい相手がいるはずです。

両親に残すのか、子供に残すのか、妻に残すのか、いろいろな相手が浮かびますね。自分は誰にお金を残したいのかを一度振り返ってみることをおすすめします。また相手によってどれくらいのお金を残すのかも変わってきますね。

例えば両親であれば、迷惑をかけないために自分の葬儀代を残すことが考えられます。そうすると葬儀代にはいくらかかるのか?といったことを調べる必要があります。このように、お金を残したい人を明らかにするとそれ以降の行動がスムーズです。

老後のお金を用意したいが貯金が苦手

生命保険と言うと死亡保険が一般的にイメージされますが、貯蓄性のあるものはそれを使って老後のお金を用意することもできます。もちろん銀行の預貯金などで自分で貯蓄することも可能です。

ただし、預貯金はいつでもお金を引き出せるために自由度が高く、使ってしまいがち。一方、養老保険のような貯蓄性のある保険であれば、簡単に引き出すことはできないので強制的に貯蓄ができます。貯金が苦手な方には向いていると言えますね。全ての貯蓄を保険にしてしまうと、自由に使えるお金が非常に少なくなってしまうため注意が必要です。

一時的に保障がほしい

例えば、「これから貯金をするので貯まるまでの間、保障がほしい」といった場合にも生命保険を活用できます。生命保険のうちの「定期保険」であれば、10年、20年といったように保険期間を指定することができます。

定期保険は掛け捨て型の保険なので、中途解約をしてもほとんどお金が戻ってきません。中途解約すると保険料がもったいないということもありません。

一方、終身保険は、契約以降は保険料が変動しせず、資金計画がしやすいというメリットがあります。しかし、早期に中途解約すると解約返戻金の額が少ないので、もったいなく感じます。一時的な保障がほしい人ではなく、一生涯の保障がほしい人に向いている商品です。

「一時的に保障がほしい」といった場合は、定期保険を検討しましょう。

とにかく不安だ

先ほど生命保険の役割として「不安を取り除く」というものがあると紹介しました。知人にすすめられたり、会社の上司、保険のセールスレディなどに声をかけられたりして「生命保険に入っていないとだめなのか?」といった疑問が湧いてくる時があります。

特に社会人になりたての方は「若いうちに入った方がいい」という台詞を言われているかもしれません。仕事についていくのが精一杯で「本当にそうなのか?」と疑問を抱えたままの日々を過ごすのはストレスですね。

そういった場合は定期保険など、月に1,500円程度の格安の保険に一時的に加入してみるのもいいかもしれません。1年くらい加入してみて、必要性を感じなければ解約することもできます。月に1,500円程度の支出であれば、生活に大打撃を与えることもないでしょう。

3.生命保険の必要性がない人

反対に生命保険が不要な人の特徴は、以下の4つです。

お金を残す人がいない

生命保険は万が一の事態に備えるもので、誰かにお金を残すために加入します。誰に残すのか浮かんでいないのに生命保険に加入する必要はありません。

必要性の検討に関してはまず、「誰に残すのか」を考えることから入るといいでしょう。誰に残すのかがパッと浮かばないようであれば不要と判断してかまいません。

貯蓄が十分にある

貯蓄が十分にある方は、わざわざ生命保険に加入する必要はないでしょう。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和3年度)」では、普通死亡保険金の平均額は2,027万円でした。

世帯主年齢別に見ると、45~49歳が最も高く平均は2,980万円です。つまり、貯蓄が2,000~3,000万円あれば生命保険に加入する必要性はないと考えることもできます。もちろん必要な保障額は人それぞれなため、単純にこの金額があれば十分とは言い切れません。

そこで、子供の養育費用において最もお金がかかるであろう大学の費用に注目してみましょう。

◆大学生の生活費と学費(年間)

・生活費
日本学生支援機構の「学生生活調査(令和2年度)」では、大学生の生活費の平均は、一人当たり、国立大学で84万円、公立で76.8万円、私立で61.8万円となっています。保健衛生費、娯楽・し好費、食費、住居・光熱費、その他の日常費が生活費の内訳となっています。

また、居住形態(実家暮らし、アパート暮らしなど)に注目して生活費の平均を見ると、自宅通学の場合は38.7万円、アパート暮らしの場合は110.8万円となっています。

・学費
日本学生支援機構「学生生活調査(令和2年度)」では、年間あたりの学費の平均は、国立大学で59.2万円、公立で60.5万円、私立で約131.1万円となっています。授業料、その他学校納付金、修学費、課外活動費、通学費が学費の内訳となっています。

まだ若く独身である

20代で独身であれば、生命保険に加入する必要性は低いでしょう。収入があまり高くない状態で生命保険に加入をしても固定費がかさむだけです。

よほど不安を抱えていない限りは保険料の分を貯蓄にまわす方が懸命です。ケガや病気が心配な方は、生命保険ではなく医療保険を検討しましょう。

必要性を感じない

これは当たり前かもしれませんが、必要性を感じていない場合にはわざわざ加入する必要はありません。「親が言うから」といったような理由で加入するのはおすすめできません。

「なぜ加入するのか」を人に説明できるくらいでないと、毎月の保険料は垂れ流しているようなものです。

4.まとめ

いかがでしたか?生命保険の始まりについては、意外とご存知なかったのではないでしょうか。「相互扶助」の概念のもとで、少しずつお金を出し合うといった仕組みが起源になっているのです。保険会社と1対1で契約をしているように見えて、財産を共有しているというのは驚きですね。

生命保険の必要性を検討する際は、「基本的には必要ない」といった立場で検討することをおすすめします。その方が、目的と手段を混同する確率が少なくなります。保険に加入することはあくまでも手段で、目的ではありません。契約をすることが目的にならないように注意をしましょう。

※2022年8月時点の情報です

監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以