三大疾病保険は必要か?|主な特徴と保障内容・メリット・デメリット
2023年3月24日
三大疾病保険とは、日本人がかかりやすい三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)になった際に一時金が支払われる保険のことを指します。この記事では、三大疾病保険の主な特徴と保障内容、加入の必要性を判断するための知識と、保険料の支払い要件についてご紹介します。
三大疾病保険(さんだいしっぺいほけん)とは、日本人がかかりやすい三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)になった際に一時金が支払われる保険のことです。
医療保険や生命保険に三大疾病特約として同様の保障を追加することもできますが、三大疾病保険として単独でも販売されています。
今回は、この三大疾病保険の特徴やメリット・デメリット、三大疾病保険を選ぶポイントなどをお伝えしますので、三大疾病保険選びの参考にしていただければと思います。
三大疾病保険とは
そもそも、三大疾病保険とはどのような保険なのでしょうか?以下で三大疾病保険の特徴について詳しく見ていきましょう。
がん・急性心筋梗塞・脳卒中に対して保険金が支払われる保険
三大疾病とは
- ・がん
- ・心疾患
- ・脳血管疾患
の3つの疾病のことを言い、日本人の死因のトップ1~4となっています。三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳梗塞のいずれかの疾病にかかってしまった場合に保険金が支払われます。
参考:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況 第6表」
死亡や高度障害状態になった時に保険金を受け取れる契約もある
三大疾病保険は、診断を受けた時や所定の状態になった時に一時金を受け取れる契約が大半です。
一方、死亡または高度障害状態になった時に保険金を受け取れる契約もあります。この場合は、生前の一時金と死亡保険金の両方を受け取れるわけではなく、いずれか1回のみとなります。
特定疾病保険という名称で販売されていることもある
保険会社によっては三大疾病保険ではなく、「特定疾病保険」という商品名にもなっていますが、今回の記事でお伝えしている三大疾病保険と同じ内容になります。
終身型には解約返戻金がある
三大疾病保険には定期型と終身型がありますが、多くは終身型です。終身型の三大疾病保険に加入した場合、途中で解約すると解約返戻金を受け取れます。
掛け捨て型の保険に抵抗がある方に最適です。
三大疾病保険で支払われる保険金額
三大疾病保険で支払われる保険金額については、保険商品によってまちまちなので一概にいくら受け取れる、とは言えません。
一時金20~200万円など商品によって金額が大きく変わります。
また、一時金だけではなく死亡・高度障害保険金、抗がん剤治療給付金などが付いた商品もあります。
三大疾病保険には様々なプランがあるので、多くの商品を比較して自分の希望に合ったものを選ぶことが大切です。
三大疾病保険の支払い要件は厳しい
三大疾病保険は、三大疾病にかかったら保険金が下りるとお伝えしました。しかし、三大疾病にかかれば必ず保険金が受け取れるわけではなく、それぞれの保険商品によって細かい要件が設けられており、「所定の状態になった時」に受け取れるものが一般的です。
以下は一例ですが、契約時はその要件をきちんと確認するようにしましょう。
がんの場合の支払い要件
がんの場合は、基本的にがんと診断された際に支払い対象となります。
ただし、種類によって支払い対象外になるものもあるので注意してください。例えば、上皮内がんや皮膚がんなどは対象外になっていることがあります。
これらのがんの心配がある方は、がん保険などがんに対する保障が充実している保険のほうが適しているかもしれません。
がんになった際の入院や手術、通院保障に関しては、三大疾病保険よりがん保険のほうが手厚く保障される契約が多いです。
がんに特化したがん保険と比較すると、この保障では物足りない方もいるでしょう。
急性心筋梗塞の場合の支払い要件
急性心筋梗塞は突然発病する疾病ですが、発症後の入院期間は比較的短いです。発症したらすぐに一時金が出るのではなく、その後医師から運動や労働などの制限を受けた際に対象となります。
多くの三大疾病保険では「60日ルール」というものがあり、これは急性心筋梗塞となっても、その後60日以上入院などで生活に支障をきたさなければ保険金が出ないと言われているほど要件が厳しいのです。
実際、心疾患での平均入院期間は20日程度なので、急性心筋梗塞で60日も生活に支障をきたすことは少ないかもしれません。
脳卒中の場合の支払い要件
脳卒中も突然発症することが多いのですが、こちらも脳卒中により、医師から「60日以上運動失調、麻痺、言語障害などの神経学的な後遺症が持続したと診断を受けた場合」などと要件が設けられていることが多いです。
保険料払込免除特約を付けることができる
三大疾病保険には、「保険料払込免除特約」をオプションとして付けることができます。これは三大疾病によって所定の状態になった際、それ以降の保険料の払込が全て免除されるというものです。
しかし、こうしたオプションを付ければ保険料は当然増えることになります。また、保険会社によっても保険料が免除される条件が異なるため、よく契約内容を読んだうえでオプションを付けるかどうかを検討する必要があります。
《保険料払込免除特約によって保険料が免除になる場合の例》
- ・がんと診断確定された場合
- ・急性心筋梗塞で治療を目的として20日以上入院した場合
- ・脳卒中で治療を目的として所定の手術を受けた場合
《保険料払込免除特約によって保険料が免除にならない症例》
- ・大腸の粘膜内がんなどの上皮内新生物
- ・良性腫瘍
- ・狭心症
三大疾病保険のメリット・デメリット
結局のところ、三大疾病保険はどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下で分かりやすくお伝えします。
三大疾病保険のメリット
がん保険よりも幅広く保障される
お伝えした通り、三大疾病保険では日本人の死因の約半数を占める三大疾患(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)になってしまった場合に保障を受けられます。
同じく特定の病気に備える保険としてがん保険がありますが、名前の通りがん保険はがんになった際しか保障を受けられません。
急性心筋梗塞・脳卒中は保障されないので、保障の対象が広くなっている三大疾病保険のほうで安心でしょう。
積立型の保険が多い
三大疾病保険は掛け捨て型の定期タイプよりも、積立型の終身タイプの商品が多いです。
終身タイプには、死亡・高度障害保険金が付いている場合があり、これは三大疾病以外で亡くなった場合も保障対象となります。
三大疾病保険のデメリット
支払い要件が厳しい
上記で触れていますが、三大疾病保険では、それぞれの疾病に対する支払い要件が非常に厳しいです。「対象の病気になったら保険金がもらえる」と思って加入したものの、実際には要件をクリアしていなくて、保険金が支払われないケースも少なくありません。
特に、一時金の支払い要件をきちんと確認して、あまりにも要件が厳しいようでしたら、わざわざ三大疾病保険に加入せずに他の医療保険などでカバーしたほうがいい場合もあります。
対象外になる疾病も多い
上記と関連していますが、がんにかかった際、がんの種類によっては対象外になることもあります(例えば上皮内がん、皮膚がんなど)。
契約前に対象となるものをよく確認し、特にがんが心配な方はがん保険を検討したほうが安心でしょう。
入院・通院給付金は原則ない
三大疾病保険は一時金が主な保障内容なので、入院・通院給付金が支払われない契約がほとんどです。
これはどういうことかと言うと、例えば、がんと診断されたとしたら診断された時点で一時金は出ますが、その後入院期間が長引いても、手術費がかかっても、それに対する保障はされないのです。
入院・通院給付金を受け取りたい場合は、がん保険や医療保険で備えましょう。
三大疾病保険へ加入する前に考えるべきポイント
三大疾病保険がどういった保険なのか、だいたいお分かりいただけたかと思います。それを踏まえたうえで、次は以下のポイントをもとに三大疾病保険に加入する必要性を考えてみましょう。
三大疾病になるリスクをどれだけ心配しているか
三大疾病はどれも怖い病気ではありますが、特にがんは2人に1人がかかると言われており、自分は健康だと思っている人でも発症する可能性があります。
引用元:「最新がん統計」
※罹患(りかん)とは、その病気にかかることを示します。
一方、心疾患や脳疾患などは、危険因子を持っている方のほうがなりやすいと言われています。
心疾患の場合は、動脈硬化や肥満、高血圧、高血糖などです。
脳疾患も心疾患の場合と似ており、動脈硬化や高血圧、脂質異常症などが挙げられます。
三大疾病保険への加入を検討する際は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中になる心配をどれだけしているか?がポイントになってくるでしょう。
三大疾病にかかってしまった場合の医療費を工面できるか
三大疾病は原則として、簡単な手術後にすぐ退院できるというわけではありません。
検査・入院・手術・通院を含めると治療は長期にわたり、退院後に通院しながらリハビリを行う場合も含めると、程度にもよりますが、完治までに高額な医療費がかかるケースが多いです。
《代表的な疾患の入院日数と総医療費》
病名 | 入院日数(平均) | 医療費(総額) |
胃がん | 15.8日 | 973,747円 |
乳がん | 10.4日 | 784,143円 |
急性心筋梗塞 | 14.2日 | 1,753,917円 |
脳梗塞 | 31.4日 | 1,705,590円 |
参考元:「全日本病院協会|診療アウトカム評価事業」2021年度年間集計・重症度別・急性期グループ
※医療費(総額)の1~3割が自己負担となります。
こうした”高額の医療費がかかる”という面からも、三大疾病保険の必要性を考えてみるべきでしょう。
三大疾病保険とがん保険の比較|三大疾病保険かがん保険を選ぶ基準
「がんのリスクが一番高いのであれば、三大疾病保険ではなくがん保険で十分ではないか?」と思う人もいるかもしれません。結局のところ、がん保険とどちらがいいのでしょうか?この項目で選ぶ基準を解説します。
まずは、三大疾病保険とがん保険の特徴をおさらいしながら比較してみましょう。
三大疾病保険の特徴 | がん保険の特徴 |
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これらを踏まえ、三大疾病保険とがん保険のどちらがいいのかというと、人それぞれです。
はっきりしていなくて申し訳ないのですが、保険は個人が「どのような保障を求めているのか?」「何が心配なのか?」「保険料は月々どれくらい払えるのか?」などの状況によって変わってきます。
三大疾病保険がおすすめの人
以下は、三大疾病保険の加入を考えてみてもいい人の特徴です。
がんだけではなく急性心筋梗塞・脳卒中でも保障を受けたい人
ご説明の通り三大疾病保険では、がん以外に急性心筋梗塞・脳卒中でも保障を受けることができます。
これら3つの病気が心配な方は、三大疾病保険を考えたほうがいいかもしれません。
掛け捨て型の保険はもったいないと思っている人
がん保険は掛け捨て型(がんにならなかったら保険金が返ってこない)の商品が多いですが、三大疾病保険は終身型の商品が多いです。
終身型は中途解約すると解約返戻金を受け取れます。
その分保険料は若干高めになりますが、保障を受けながら同時に貯蓄もしておきたいという方は、三大疾病保険がおすすめです。
がん保険がおすすめの人
以下は、三大疾病保険よりもがん保険への加入を考えてみるべき人の特徴です。
がんになった時に手厚い保障がほしい人
がん保険はがんのみを対象としている保険で、保障内容も医療保険と重複している部分があります。しかし、保障対象をがんに絞っているので保険料が割安です。
また、医療保険は1入院の支払限度日数が60日や120日までとなってる契約が多いのに対し、がん保険は無制限の契約が多いです。
抗がん剤治療給付金やホルモン剤治療給付金、がん緩和ケア給付金などが受け取れる契約もあります。
とにかく手厚く備えておきたいという方は、お守り代わりにがん保険に加入しておくと安心です。
がんのみに備えたい人
がんは罹患率や死亡率が高く、かかる医療費も高額になりがちです。そのため「とにかくがんのみに備えたい」と考えている方も大勢いらっしゃいます。
親族ががんで亡くなった場合や、身近にがんで長期間療養している方がいる場合はなおさら不安でしょう。こうした方は、三大疾病保険よりもがんのみに特化したがん保険がおすすめです。
まとめ
いかがでしょうか?三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中に対して保障されますが、支払い要件が厳しいことが特徴です。
加入をすすめないわけではありませんが、加入するとなれば契約者が保険金の支払い要件をきちんと確認する必要があります。
また、三大疾病保険選びは、個々の状況・希望でおすすめ商品が違ってくるので、ここでは一概にどれがいいとは言えません。
もし、保険選びでお悩みの方がいましたら、一度FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみてください。あなたの希望や状況などを伝えると、それに適した保険を提案してくれるでしょう。
※2022年8月時点の情報です
監修:ファイナンシャルプランニング技能士 垣内結以